国連

潘基文国連事務総長の訪日(概要と評価)

平成22年8月7日

  • 潘基文(パン・ギムン)国連事務総長は,8月3日から7日まで,外務省賓客として訪日。8月6日,歴代の国連事務総長として初めて広島平和記念式典に出席し,前日の5日には同じく初めて長崎を訪問。2つの被爆地において犠牲者への追悼及び被爆者との対話を行い,核兵器のない世界の実現に向けた力強いメッセージを発出した。
  • 広島・長崎訪問に先立ち,潘事務総長は東京で菅総理大臣,岡田外務大臣との会談等を行い,軍縮・不拡散,北朝鮮,平和構築・PKO,ミレニアム開発目標(MDGs),気候変動等の主要な課題について意見交換。これら諸課題の解決に向けて,日本と国連が連携を一層推進していくことを確認した。
  • その他,潘事務総長は,鳩山前総理,北澤防衛大臣,横路衆議院議長,西岡参議院議長他との会談等を行うとともに,企業経営者,大学,学生,メディアなど国民の幅広い層との対話を通じて,日本と国連が果たすべき役割の重要性を訴えた。

1.主要行事の概要

(1)菅総理大臣への表敬

 核軍縮・不拡散について,潘事務総長より,長崎訪問及び広島平和記念式典への出席で,「核兵器のない世界」の実現に向けて国際社会の機運を高めたいと説明。潘事務総長より,ミレニアム開発目標(MDGs)に関する国連首脳会合(本年9月,ニューヨーク)への菅総理の出席要請,日本のODAや国連に対する支援への謝意表明と支援の継続要請がなされたのに対し,菅総理から,できるだけの協力をしていきたいと述べた。また,潘事務総長より,ハイチPKOへの自衛隊派遣に対する感謝と他のPKOミッションへのヘリコプター派遣に対する期待が表明された。更に,菅総理より,北朝鮮の核と拉致の問題の解決に向けて協力を求め,潘事務総長より,国際社会でもこれらの問題について十分な認識があることが述べられた。

 なお,潘事務総長は,菅総理への表敬後,仙谷官房長官を表敬し,核軍縮・不拡散や地球規模の諸課題への取組等について意見交換を行った。

(2)岡田外務大臣との会談・夕食会

 核軍縮・不拡散について,「核兵器のない世界」の実現を目指して国際社会の気運を一層高めていく上で,日本と国連との協力関係を改めて確認。9月の国連総会の機会に日本が豪州と共に開催する予定の「核軍縮・不拡散に関する外相会合」や,潘事務総長が主催する予定の軍縮会議ハイレベル会合について双方から言及された。また,北朝鮮の問題については,北朝鮮が安保理議長声明を真剣に受け止め,核問題等の解決のために前向きかつ具体的な行動を取る必要があるという認識で一致した。安保理改革については,改革の早期実現が必要との認識で一致。PKO・平和構築について,岡田大臣から日本の取組を説明したのに対し,潘事務総長からは,ハイチPKOへの自衛隊の迅速な派遣をはじめ,日本の貢献とリーダーシップへの謝意が表明された。その他,ミレニアム開発目標(MDGs),気候変動,生物多様性等の諸課題や,アフガニスタン,スリランカ,ミャンマー等の地域情勢について,幅広い意見交換が行われた。

(3)横路衆議院議長及び西岡参議院議長への表敬

 潘事務総長は,横路衆議院議長及び西岡参議院議長をそれぞれ表敬した。両議長は,国連事務総長として初めてとなる潘事務総長の長崎訪問及び広島平和記念式典への出席を歓迎。潘事務総長からは,「核兵器のない世界」に向けた取組を推進したいと述べ,また地球規模の諸課題等についても意見交換が行われた。

(4)長崎訪問

 8月5日,潘事務総長は歴代の国連事務総長として初めて長崎を訪問し,原爆資料館を視察し被爆者との対話を行った。原爆落下中心地での献花に際しての演説では,核兵器が二度と使用されないために,「核兵器のない世界」を築くことへの強い信念が表明された。潘事務総長は,浦上天主堂で記者会見を行い,被爆の実相に触れたことで心が揺り動かされ,核兵器廃絶に向け決意が深まったと述べた。

(5)広島訪問(広島平和記念式典への出席)

 8月6日,潘事務総長は歴代の国連事務総長として始めて広島平和記念式典に出席し,献花と挨拶を行った。挨拶では,「グラウンド・ゼロ(爆心地)からグローバル・ゼロ(大量破壊兵器のない世界)へ」の決意が述べられた。また,平和記念資料館を視察した後,国際会議場で講演を行い,核廃絶の実現に向け,包括的核実験禁止条約(CTBT)の2012年発効を目指すことを表明し,安保理首脳会合の定期的開催などを提案した。広島ではその他,秋葉広島市長との懇談,被爆者団体代表者との対話,高校生との平和交流会等が行われた。

(6)その他

 鳩山前総理,北澤防衛大臣,米倉経団連会長ほかとの会談等が行われた。また,早稲田大学で諸大学学長・副学長との意見交換(アカデミック・インパクト会合)や,「平和と軍縮」をテーマとする大学生との対話を行ったほか,国連と企業経営者の連携を進めるグローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク(GC-JN)主催レセプション・夕食会での企業経営者との意見交換,日本国連協会主催夕食会での国連諸機関親善大使との懇談等を行った。


2.評価

(1)「核兵器のない世界」に向けた機運の高まり

 今回,潘国連事務総長は歴代の国連事務総長として初めて広島平和記念式典に出席し,また長崎を訪問して,核軍縮・不拡散への取組の重要性と進展に向けての決意を内外に表明した。これは,国内外のメディアでも大きく取り上げられ,唯一の戦争被爆国である我が国としてリーダーシップをもって追求する「核兵器のない世界」に向けた機運への後押しを得る機会となった。

(2)地球規模の諸課題の解決に向けての日本と国連の連携の推進

 菅総理大臣,岡田外務大臣他との会談では,核軍縮・不拡散,ミレニアム開発目標(MDGs),気候変動や北朝鮮情勢など主要な課題について意見交換が行われ,地球規模の諸課題の解決に向けて,日本と国連の連携を一層推進していくことが確認された。

(3)国民の幅広い層と国連の対話と協力の促進

 国会議員,企業経営者,大学,学生,メディアなど国民の幅広い層と潘事務総長の対話を通じて,地球規模の諸問題や日本と国連が協力して果たすべき役割についての理解が深まると同時に,日本の様々な主体が協力を一層進めるための機会を提供した。


3.日程

8月3日(火曜日)
岡田外務大臣との会談・夕食会・共同記者会見
  4日(水曜日)
アカデミック・インパクト会合(早稲田大学)
大学生との対話(早稲田大学)
鳩山前総理との懇談
北澤防衛大臣との会談
横路衆議院議長への表敬
西岡参議院議長への表敬
米倉経団連会長他との会談
菅総理への表敬
仙谷官房長官への表敬
千玄室日本国連協会会長主催「国連事務総長を囲む会」
  5日(木曜日)
【長崎訪問】
原爆資料館視察
被爆者との対話
原爆落下中心地での献花
「追悼長崎原爆朝鮮人犠牲者」の碑での追悼
浦上天主堂視察・記者会見
長崎県市主催昼食会

【広島訪問】
広島市主催歓迎夕食会
秋葉広島市長との懇談
  6日(金曜日)
広島平和記念式典出席
平和記念資料館視察
国連事務総長講演会
被爆者団体代表者との対話
記者会見
韓国人原爆犠牲者慰霊碑での追悼
広島県市主催昼食会
高校生との平和交流会

【東京へ移動】
グローバル・コンパクト・ジャパン・ネットワーク(GC-JN)主催レセプション・夕食会
  7日(土曜日)
帰国
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