
G20ソウル・サミット文書
(主要なポイント)
平成22年11月12日
(仮訳・英語原文(PDF)
)
強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み(フレームワーク)
- 本日,「ソウル・アクションプラン」を立ち上げ。特に,各国固有のコミットメント(補完文書(PDF)
)の詳細とともに,以下の5つの政策分野における行動をコミット。
- 金融政策と為替レート政策:我々は,回復と持続可能な成長に貢献する,中央銀行の物価の安定に対するコミットメントの重要性を再確認する。我々は,根底にある経済のファンダメンタルズを反映するため,より市場で決定される為替レートシステムに移行し,為替レートの柔軟性を向上させるとともに,通貨の競争的な切り下げを回避する。準備通貨を持つ国々を含む先進国は,為替レートの過度の変動や無秩序な動きを監視する。これらの行動は一体となって,いくつかの新興国が直面している資本移動の過度な変動のリスクを軽減させる助けとなろう。それにも関わらず,調整の過大な負担に直面している状況で,外貨準備を適切なレベルに保ちながら柔軟な為替レートの更なる過大評価に直面している新興国は,その政策対応に注意深く設計されたマクロ健全性措置もまた含めうる。我々は,安定的でよく機能する国際通貨システムを促進するための努力を再活性化させ,これらの分野でIMFがその作業を深化させることを求める。
- 貿易と開発政策:あらゆる形の保護主義的な貿易行動を導入せず,反対。ドーハ交渉の早期妥結の重要性を認識。
- 財政政策:先進国は,トロント・サミットのコミットメントに沿った,明確で,信頼に足る,意欲的かつ成長に配慮した中期財政健全化計画を策定及び実施。
- 金融改革:銀行の自己資本・流動性の基準を段階的に完全実施。「大きすぎて潰せない」銀行の問題に対処。
- 構造改革:製品市場改革,労働市場・人材開発改革,税制改革,グリーン成長を推進。赤字国はより高い貯蓄率を促進,黒字国は国内の成長源に焦点を当てた改革を追及。新興黒字国は公的医療や年金制度等の社会セーフティ・ネットの強化。
- ソウル・サミット以降の相互評価プロセス(MAP):我々は,対外的な持続可能性を促進するためMAPを強化する。我々は,対外的な持続可能性を促進するための多角的協調を強化し,過度の不均衡を削減し経常収支を持続可能な水準で維持するのに資する,あらゆる政策を追求する。今後財務大臣及び中央銀行総裁により合意される参考となるガイドラインに照らして判定される,継続した大規模な不均衡は,大規模な一次産品生産者を含む,各国・地域の状況を考慮する必要性を認識しつつ, MAPの一部として,その性質や調整の障害となっている原因を評価される。一連の項目で構成される,これらの参考となるガイドラインは,予防や是正に向けた行動を必要とするような大規模な不均衡を適時に判定することを助けるメカニズムとしての役割を果たす。これらのコミットメントの達成に向けた我々の努力を支援するため,我々は,G20フレームワーク作業部会に,IMFとその他の国際機関からの技術的な支援を受けて,これらの参考となるガイドラインを用意するよう求める。その進展は,2011年前半に財務大臣と中央銀行総裁により議論される。あわせて,慶州で,我々の財務大臣と中央銀行総裁は,対外的な持続可能性に向けた進捗と,財政,金融,金融セクター,構造,為替レート,その他の政策の整合性について,MAPの一部として,評価を提供するようIMFに求めた。この観点から,上記の参考となるガイドラインに基づく最初の評価は,フランスの議長の下で然るべき時期に開始され,実施される。
国際金融機関改革
- ダイナミックな新興国・途上国,過小代表国への6%以上のクォータ・シェア移転,クォータ倍増,2013年1月までのクォータ計算式の包括的見直しと2014年1月までの次期クォータ見直し,欧州先進国理事を2つ減らすことなどによる理事会における新興国・途上国の代表性拡大,全理事の選任制への移行,といった国際通貨基金(IMF)改革の合意を歓迎。
- サーベイランス強化を含め,IMFの使命・マンデート改革に取り組む。サーベイランスに関し,公平さ・率直さ・独立性の確保などを求める。
- グローバルな資金セーフティ・ネットを強化するものとして,IMFの予防的融資制度の改革などを歓迎。財務大臣・中銀総裁に対し,システミックなショックに対処するための構造的手法,地域金融取極のIMFとの連携強化や危機予防能力向上のための方策の検討を要請。国際通貨システムの改善に向けた検討に合意。
金融セクター改革
- 銀行の自己資本・流動性の新たな枠組みについて,バーゼル銀行監督委員会(BCBS)による画期的な合意を承認。
- システム上重要な金融機関(SIFIs)がもたらすモラルハザードのリスクを軽減し,「大きすぎて潰せない」問題に対処するために金融安定理事会(FSB)より提案された政策の枠組み,作業プロセス,日程を承認。
- 国境を越えた一貫した国際基準の実施を促進する手段として,IMF及び世界銀行によって共同実施される金融セクター評価プログラム(FSAP)及びFSBのピア・レビューの有用性を認識。
- ヘッジファンド,店頭デリバティブ,信用格付会社について規制・監督の強化に取り組むことに再度コミット。報酬に関するFSB基準を完全実施することの重要性を再確認。
- 単一の質の高い世界的な会計基準の実現が重要であることを改めて強調。
- 今後更に注意が必要な事項:マクロ健全性政策の枠組み、新興市場国・途上国に関連する規制改革上の課題への対処、シャドーバンキングへの規制・監督の強化、商品デリバティブ市場の規制・監督、市場の健全性・効率性の向上、消費者保護の向上。
開かれた市場の維持と貿易投資自由化への支援
- 市場開放の継続及び貿易投資の自由化にコミット。スタンドスティルのコミットメントの2013年末までの延長を再確認し,輸出規制及びWTO非整合的な輸出刺激策を含め,いかなる新たな保護主義的措置も是正することにコミット。
- 2011年は極めて重要な機会の窓であり,最終局面の交渉を完了させる必要あり。ドーハ開発ラウンドを野心的かつバランスのとれた妥結に導くために,横断的な交渉に関与するよう,交渉担当者に指示。そのような結果が達成されたならば,必要な場合,各制度の中で批准を求めることにコミット。
- 低所得国(LICs)の経済成長を強化するため,貿易のための援助(AfT)につき2011年以降も過去3年(2006-08年)の平均水準を少なくとも維持。後発開発途上国(LDC)の産品のための無税無枠の市場アクセスに向け進ちょくを図る。
共有された成長のためのソウル開発合意
- 開発格差の是正と貧困削減は,持続的成長を達成するために不可欠。「開発に関するソウル合意」(附属書I)及び「開発に関する複数年行動計画」(附属書Ⅱ)に合意。
- 「開発に関するソウル合意」は,(1)包括的,持続可能かつ強じんな経済成長を通じた貧困削減の重要性,(2)発展のためには様々な方途があるとの認識に基づいたパートナーシップの推進(G20と低所得国(LICs)の間で,強固で責任あり,説明責任を果たし透明な開発パートナーシップを確保),(3)世界的又は地域的なシステミックな問題の優先,(4)雇用と富の創出における民間部門の重要性,(5)他のプレーヤーの補完,(6)ボトルネックを取り除くための目に見える成果の重要性,の6つの原則に基づく。
- 「複数年行動計画」では,途上国,特に低所得国のボトルネックを解決するための9つの主要な柱として,インフラ,人材開発,貿易,民間投資及び雇用創出,食料安全保障,強じんな成長,金融包摂,国内資本の動員,並びに知識の共有を特定。インフラでは,ハイレベル・パネルの設立に合意し,議長を12月までに発表。来年の仏サミットのため,責任ある農業投資を含む,農業生産性と食料入手可能性の向上等へ向け,食料安保政策を強化する。
- ミレニアム開発目標(MDGs)達成へのコミットメントを再確認し,持続可能な経済・社会・環境開発等の開発原則と各国の作業を整合的なものとする。MDGsへの「複数年行動計画」の実施にコミット。仏サミットで進捗をレビュー。
金融包摂
- 金融アクセス向上の作業促進のため,金融包摂行動計画の策定を含む,金融包摂のためのグローバル・パートナーシップを立ち上げ。
- G20中小企業金融チャレンジの優秀提案を賞賛。
エネルギー
化石燃料補助金
- 非効率な化石燃料補助金の合理化及び段階的廃止のコミットメントを再確認し,仏サミットでの進捗報告を財務・エネルギー大臣に指示。
化石燃料価格の変動
- 市場の透明性向上が重要。石油データ共同イニシアティブ(JODI)を支持し,そのデータベースの改善に向けた報告を2011年4月の財務大臣会合において求める。また,国際エネルギー機関(IEA),石油輸出国機構(OPEC)等に対し,石油現物市場価格等に関する共同報告の作成を求める。
- 証券監督者国際機構(IOSCO)及び専門家会合に対し,2011年4月までに石油金融市場の規制改善及び透明性向上の基本原則の提供,他の化石燃料への作業拡大を要請。
地球海洋環境保護
- 海洋環境保護及び沖合の採掘・開発等についてのベスト・プラクティス共有に向けた地球環境保護(GMEP)イニシアティブの進捗を歓迎。専門家サブグループに対し,仏サミットで検討すべくベスト・プラクティスの共有の作業の継続を求める。
気候変動及びグリーン成長
- 国連気候変動枠組条約(UNFCC)の交渉に専心するとのコミットメントを再表明。コペンハーゲン合意への賛同国は同合意とその実施への支持を再確認。緩和,透明性,資金,技術,適応及び森林保全といった中核的問題を含む,成功裏のかつバランスのとれた結果をCOP16で達成することにコミット。気候変動資金に関するハイレベル諮問グループの作業を歓迎する。
- 生物多様性の損失は世界環境及び経済上の課題。名古屋における生物多様性条約第10回締結国会合(COP10)の成功裏の妥結を歓迎。
- 国主導のグリーンな成長政策を支持し,クリーン・エネルギー技術発展の環境整備のための措置に向けて専門家会合が作業。クリーン・エネルギー技術への投資促進にコミット。クリーン・エネルギー担当大臣会合の下で既存のイニシアティブを支援。
腐敗対策
- 腐敗は経済成長にとって深刻な障害と認識の下,「腐敗対策行動計画」(附属書Ⅲ)を支持。国連腐敗防止条約(UNCAC)の加入又は批准及び実効的実施を含む各分野で模範を示す。取組の進捗を毎年報告するよう作業部会に指示。
ビジネスサミット及び協議
- ソウルG20ビジネスサミットを歓迎し,その継続を期待。
- より広範囲の国際社会との協議が必要。より組織的なアウトリーチ活動へ向け努力。
- 最低2か国のアフリカ諸国を含めた5か国を超えない非G20メンバー国の招待を含め,非G20メンバー国の招待に関する一連の原則につき,広範な合意に達成。
附属書
補完文書