経済

エネルギー憲章に関する条約について

平成19年12月

1.経緯

(1)ソ連の崩壊に伴い、1991年、旧ソ連、東欧を含む欧州諸国、米、加、豪及び日本は、旧ソ連及び東欧諸国におけるエネルギー分野の市場原理に基づく改革の促進、並びに、エネルギー分野における企業活動(貿易及び投資)を全世界的に促進すること等を宣言する「欧州エネルギー憲章」(政治宣言。以下「憲章」という)を作成しました。

(2)1994年12月、憲章の内容を実施するための法的枠組として、「エネルギー憲章に関する条約」(以下「条約」)を作成しました。条約は1998年4月16日に発効し、2007年12月現在、旧ソ連(ロシア・ベラルーシを除く)、東欧及びEU諸国等46ヵ国及び1国際機関が条約を締結しています。日本は、1995年6月に同条約に署名し、2002年7月に締約のための国会承認を得たところを受け、同月23日に受諾書の寄託を行いました(10月21日発効)。

2.条約の概要

 本条約は、主として、エネルギー原料・産品の貿易及び通過の自由化並びにエネルギー分野における投資の自由化・保護等について規定しています。各分野の概要は次の通りです。

(1)通商分野

(イ)貿易

 エネルギー原料・産品の貿易が、基本的にGATT(関税及び貿易に関する一般協定)によって規律されること(すなわち、GATT締約国であるこの条約の締約国間で行われるエネルギー原料・産品の貿易はGATTによって規律され、また、GATT非締約国であるこの条約の締約国が関係する貿易についても、この条約により創設的に最恵国待遇の付与等、GATTの主要な規定が基本的に適用されること)を規定しています。

(ロ)通過

 エネルギー原料・産品の「通過」(3つ以上の地域(国)にまたがるパイプラインによる石油及び天然ガスの輸送並びに送電設備による電力の送電を想定)について、通過の自由の原則に従い、その出発地及び仕向地等による差別または不合理な制限等を行ってはならないことを規定しています。

(2)投資分野

 エネルギー分野における投資の自由化及び保護に関し、一般的な二国間の投資保護協定と類似の内容(締約国が外国投資家の投資財産に対して内国民待遇(NT)又は最恵国待遇(MFN)のうち有利なものを付与すること、一定の要件を満たさない収用の禁止、送金の自由、紛争解決手続等)について規定しています。

(3)その他

(イ)エネルギー・サイクルにおいて生ずる環境上の悪影響を経済的に効率的な方法で最小限にするよう努めることにつき規定しています。なお、条約とは別に、「エネルギー効率及び関係する環境上の側面に関するエネルギー憲章に関する議定書」が条約と同時に作成されています。

(ロ)市場経済移行国は、条約に定める特定の義務の履行を一定期間免除されています。

(ハ)条約の署名国は、条約を締結するまでの間、自国の法令の範囲内で条約の一部を暫定的に適用する義務を負うこととなります。

3.条約の意義

(1)本条約は、旧ソ連及び東欧諸国における市場原理に基づく法整備等を通じて、エネルギー原料・産品の貿易の自由化及びエネルギー分野における投資の自由化・保護を図ることにより、当該諸国から先進諸国へのエネルギーの安定供給の確保並びに当該諸国のエネルギー分野の再建及び経済改革を促進することを目的としています。

(2)日本企業の旧ソ連諸国等における投資環境の一層の改善を図り、また、旧ソ連諸国等自身にとっても、優良な外国投資を誘致する条件を整備する上で、重要な法的基盤を提供するものです。

4.条約作成後の動き

(1)貿易関連部分の改正書

 1998年4月、エネルギー原料・産品の関税率のスタンドスティル(関税率を一定の税率を超えて引き上げないことを約束すること)の義務化及びWTO協定の作成に伴う当該協定の規定の条約への取り込みを内容とする改正書が採択されました(2007年12月時点で未発効)。

(2)通過に関する議定書の作成交渉

 2000年1月より、条約の通過に関する既存の規定を強化するための議定書の交渉が開始されていましたが、関係国(EU-露)間の調整がつかず、加盟国全体での交渉が2003年に中断となりました。現在EU-露間の交渉が継続中です。

(3)投資に関する補足的な条約の作成交渉

 条約の規定に基づき、投資の一層の自由化のための補足的な条約の作成を目指して交渉が行われています。

(4)その他

 2006年7月のG8サンクトペテルブルク・サミットにおいて、G8首脳は、本条約の原則を支持することに合意しました。

5.エネルギー憲章会議

(1)条約の最高意思決定機関。議長は、2007年1月より、河村欧州連合日本政府代表部大使が務めています。副議長は、ヤノフスキー露産業エネルギー省次官及びブルネッティ・スイス経済省対外経済庁経済政策部長です。

(2)事務局はベルギー・ブリュッセルにあり、職員は総勢28名(邦人職員1名)、事務局長はアンドレ・メルニエル(ベルギー)が務めています。事務局のホームページ・アドレスは http://www.encharter.org 他のサイトヘです。


エネルギー憲章に関する条約の締約国
(2007年12月現在)

1. EU(25ヵ国、1国際機関)

  • オーストリア
  • ベルギー
  • キプロス
  • チェコ
  • デンマーク
  • エストニア
  • ドイツ
  • ギリシャ
  • フィンランド
  • フランス
  • ハンガリー
  • アイルランド
  • イタリア
  • ラトビア
  • リトアニア
  • ルクセンブルグ
  • マルタ
  • ポーランド
  • ポルトガル
  • スロバキア
  • スロベニア
  • スペイン
  • スウェーデン
  • オランダ
  • 英国
  • 欧州共同体

2. 中東欧諸国(6ヵ国)

  • アルバニア
  • クロアチア
  • ブルガリア
  • ボスニア・ヘルツェゴビナ
  • マケドニア
  • ルーマニア

3. 旧ソビエト連邦(10ヵ国)

  • アゼルバイジャン
  • アルメニア
  • ウクライナ
  • ウズベキスタン
  • カザフスタン
  • キルギス
  • グルジア
  • タジキスタン
  • トルクメニスタン
  • モルドバ

4. その他(5ヵ国)

  • リヒテンシュタイン
  • モンゴル
  • 日本
  • スイス
  • トルコ

計46ヵ国及び1国際機関

(参考)条約未締結の署名国

  • アイスランド
  • オーストラリア
  • ベラルーシ
  • ノルウェー
  • ロシア

エネルギー憲章に関する条約のオブザーバー国
(2007年12月現在)

1.国

  • アフガニスタン
  • アルジェリア
  • バーレーン
  • 中国
  • カナダ
  • イラン
  • ヨルダン
  • 韓国
  • クウェート
  • モロッコ
  • ナイジェリア
  • オマーン
  • パキスタン
  • カタール
  • サウジアラビア
  • セルビア
  • モンテネグロ
  • チュニジア
  • ア首連
  • 米国
  • ベネズエラ

2.国際機関

  • 東南アジア諸国連合(ASEAN)
  • 欧州復興開発銀行(EBRD)
  • 国際エネルギー機関(IEA)
  • 経済協力開発機構(OECD)
  • 国連欧州経済委員会(UN-ECE)
  • 世界銀行
  • 世界貿易機関(WTO)
  • 独立国家共同体電力会議(CIS Electric Power Council
  • 環黒海経済協力機構(BSEC)
  • バルト海地域エネルギー協力(BASREC)
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