日本の安全保障と国際社会の平和と安定

第2回核兵器の人道的影響に関する会議(概要と評価)

平成26年2月17日

1 全体概要

 2月13~14日,メキシコのナジャリットにおいて,核兵器の人道的影響に関する第2回国際会議が同国政府主催により開催された。本会議は,核兵器の使用がもたらす様々な影響について科学的・技術的見地から議論を行う専門家レベルの会議として開催され,2013年3月にノルウェー政府が主催した第1回会議のフォローアップとの位置付け。146の国,国連及び赤十字国際委員会等国際機関及びNGO等が参加した。我が国からは,野口外務省軍備管理軍縮課長を団長とし,朝長万左男日本赤十字社長崎原爆病院長,藤森俊希日本原水爆被害者団体協議会事務局次長,小栁雅樹氏(長崎・活水高校1年生),土田弥生氏(通訳)他計6名が我が国代表団として出席した。5核兵器国(米・英・仏・中・露)は前回に続き参加しなかった。

2 議論の概要

(1)開会,被爆者等による被爆証言

 冒頭挨拶において,ビヤーリICRC副総裁より,核兵器を禁止し廃絶するために緊急に行動すべき旨述べ,ミード・メキシコ外相より,(1)核兵器は明示的に法的に禁止されていない唯一の大量破壊兵器であり,禁止され,廃絶されるべき,(2)核兵器を拒否し,その使用又は使用の威嚇と存在を非難し,この拒否を人間の安全保障の柱に据えるべき旨述べた。続いて,被爆者等による被爆証言セッションにおいて,山下泰昭氏(メキシコ在住),サーロー節子氏(カナダ在住),田中煕巳日本原水爆被害者団体協議会事務局長,藤森俊希同事務局次長及び小栁雅樹氏が被爆証言を行った。

(2)セッション1~4

 以下の議題の下,核兵器の人道的影響について科学的・技術的観点からパネリストによる発表と質疑応答が行われ,主に,核兵器使用が公衆衛生,人道支援,経済,開発,環境,気候変動,食糧安全保障,交通,情報通信等に及ぼす地球規模の長期的影響に関する議論が交わされた。我が国からは,朝長院長より,セッション3において,広島・長崎の例やケーススタディを用いて,核兵器爆発がもたらす健康,インフラ及び経済への被害・影響について発表を行った。

  • セッション1「オスロからナジャリットへ」
  • セッション2「核兵器が地球規模の公衆衛生にもたらす影響」
  • セッション3「核兵器爆発が国家,地域及び地球規模の経済成長及び持続的な発展に及ぼす影響」
  • セッション4「核爆発の危険及びその他の影響」

(3)一般討論

 非常に多くの国が発言を求め,それぞれ政府の立場を述べた。冒頭,オーストリアより,第3回国際会議を本年後半にウィーンで開催する旨発表し,多くの国によって歓迎された。被爆証言やオスロ及びナジャリット会議での科学的・技術的議論の結果,核兵器は禁止されるべきとの声が多く聞かれた。これに対し,日豪やNATO諸国を中心に現実的な核軍縮措置の実施を重視する国々からは,概ね(1)人道的影響に関する議論を核軍縮の出発点として捉えつつも,(2)引き続きNPT体制を基軸とし,(2)安全保障の現実も踏まえながら核軍縮を進めていくべき等述べた。

(4) 議長総括

 最後に,議長を務めたロブレド・メキシコ外務省次官より,主催国の責任で会議の内容を総括する議長総括(日本語(PDF)PDF英語(PDF)PDF)が発出された。今後の展開にかかる部分を中心に,ポイントは次のとおり。

  • 議長は,第3回核兵器の人道的影響に関する会議を主催するというオーストリアの提案を温かく歓迎する。ナジャリット会議は,5核兵器国及びNPT非締約国による第3回会議への参加を改めて呼びかける。
  • これまで兵器は違法化された後に廃絶されてきており,これが核兵器のない世界を実現するための道。これはNPT及びジュネーブ諸条約共通第1条を含む国際法上の義務とも整合的。
  • 核兵器の人道的影響に関する幅広く包括的な議論によって,法的拘束力のある措置を通じた新たな国際基準または規範に到達するための国と市民社会のコミットメントへとつなげるべき。
  • ナジャリット会議の結果,議長は,この目標に資する外交プロセスを立ち上げる時が到来したとの認識。同プロセスは,(1)特定の期限,(2)最適な議論の場の定義及び(3)明確かつ中身のある枠組みを含むべきであり,これにより核兵器の人道的影響が軍縮の努力における本質となる。今こそ行動の時である。

3 評価

(1)参加国数は前回より増え,一般討論を中心に多くの国・国際機関・市民社会が発言を求め,活発な議論が行われた。我が国は,5名による被爆証言,朝長院長による発信及び一般討論での発言を通じ,議論に積極的かつ建設的に貢献した。一般討論では,核兵器の非人道性に関する正確な認識と安全保障環境に関する冷静な認識を基礎として,現実的かつ実践的な核軍縮措置を積み重ねていく必要があることを述べた上で,核兵器の非人道性についての我が国の考え方を説明した。また,被爆証言に対しては,国籍を問わずに非常に多くの参加者が心を動かされた旨述べるなど賛辞が相次いだ。朝長院長による発信も引き続き効果的であった。広島・長崎における被爆経験が,核軍縮の出発点の一つとして改めて確認されたものと評価できる。

(2)核兵器の人道的影響に関するこれまでの科学的・技術的議論を踏まえ,核廃絶に向けて今後とるべき具体的行動を問う問題提起が目立った。こうした中でオーストリアが,本年後半に第3回会議を主催する旨表明し,メキシコ会議のフォローアップが行われることになったところ,我が国として如何なる対応をとるべきか検討する必要がある。


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