
アジア | 北米 | 中南米 | 欧州(NIS諸国を含む) | 大洋州 | 中東 | アフリカ
日米規制改革及び競争政策イニシアティブ・8年目の報告書(概要)
平成21年7月6日
7月6日、ラクイラ・サミットにて開催される日米首脳会談に向けて公表された「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」8年目の対話に関する両国首脳への報告書(和文(PDF)
/ 英文(PDF)
)の概要は以下のとおり。
【日本側措置】
1.通信
- (1)2009年2月、情報通信審議会に、電気通信市場の環境変化に対応した接続ルールの在り方について諮問。
- (2)2008年11月、NTT東西の次世代ネットワークへの接続に必要なインターフェース条件等のネットワーク情報を含む、NTT東西の接続約款を認可。
2.情報技術
- (1)医療のIT化において技術中立性や相互運用性を確保するため、引き続き最大限努力。
- (2)2009年6月17日に「資金決済に関する法律案」が国会で成立。本法においては、銀行免許がなくても、内閣総理大臣の登録を受けることにより、銀行等以外の者でも為替取引を行うことができるとしている。
- (3)「情報システムに係る政府調達の基本指針」の実施状況についてフォローアップを行い、2009年1月に公表。
- (4)インターネット違法サイトからの音楽・映像のダウンロードについて、私的使用例外を適用しないこと等を定めた著作権法改正法が2009年6月に成立。
- (5)知的財産権保護の促進のため、アジア太平洋地域等において、米国政府と引き続き協力。模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)について、米国政府と引き続き連携。
3.医療機器・医薬品
- (1)次回の薬価制度改革に向け、業界の意見も聴取しつつ議論を継続。
- (2)2008年12月に「医療機器の審査迅速化アクションプログラム」を策定し、医療機器の審査人員の増員(平成25年度までに69名増員)、研修の充実、審査基準の明確化等を規定。
4.金融サービス
ファイアーウォール規制の見直しについては、2008年6月に法律が成立したことを受けて、関係する政令・内閣府令等の改正を行い、2009年1月に公布、6月から施行された。
5.競争政策
- (1)不当な取引制限において主導的役割を果たした事業者に対する課徴金算定率の引上げ、課徴金制度の対象拡大、懲役刑の引上げ等の内容を含む独占禁止法改正法が2009年6月に成立。
- (2)同改正法の附則に基づき、手続上の公正性を確保する観点から,現行の事後審査型審判制度について全面にわたって見直しをするものとし,2009年度中に検討。
6.商法及び司法制度改革
- (1)金融審議会のスタディグループにおいて、市場における資金調達等をめぐる問題や、ガバナンス機構をめぐる問題、投資者による議決権行使等をめぐる問題などについて審議が行われ、報告書がとりまとめられた。
- (2)企業統治研究会において、コーポレート・ガバナンス向上に向けたルールの在り方(社外取締役・監査役の独立性や社外取締役導入等の企業統治体制整備等)について検討が行われ、最終報告書がとりまとめられた。
7.透明性
- (1)審議会等については「審議会等整理合理化に関する基本的計画」(1999年4月閣議決定)等に基づき、会議日時・議事録・委員名等の公開、利害関係者の意見聴取等の取組を行っている。
- (2)2007年度の意見公募手続施行状況調査の結果を公表(行政手続法に基づく意見公募手続のうち93.1%の案件で30日以上の意見公募期間を確保)。
- (3)消費者庁の設置プロセスにおける透明性を確保。今後意見公募手続を実施予定。
- (4)2009年3月に翻訳整備計画を改定(2010年度までの5年間で合計約440本の法令を英訳)。
8.その他の政府慣行
(1)農業関連の政府慣行
- 輸入農産品の残留農薬の監視強化について、2009年7月に合意した文書に沿って対応。
- 米国から日本に輸出される有機農産物に使用される農業資材の評価について、リグニンスルホン酸塩(造粒剤又は固結防止剤として)及び重炭酸カリウムについて使用を許可。有機農産物における使用禁止資材の残留基準の設定について、次期有機JAS規格改正の一議題となり得るとした。
- 国際的に安全性が確認され汎用されている食品添加物46品目及び香料について、2003年以降、食品添加物26品目及び香料15品目の使用を承認。
- ワタアブラムシ及びマメクロアブラムシの検疫上の位置づけを決定するため、米側からの情報提供を参考に、病害虫の分類を国際基準と調和させるための努力を継続。
- 防かび剤のリスク評価について、調査審議方法を改善することを検討。
(2)風力発電プロジェクトに関連する情報提供及び必要に応じ可能な措置を検討。
(3)構造改革特区において成功した規制の特例措置を、可能な限り迅速に全国規模で展開(2009年4月現在、128の特例措置を全国展開)。
(4)領事事項
- 旅券及び新たな在留管理制度のもとで発行される在留カードを所持し、適法に在留する外国人については、原則として再入国の許可を受けることなく1年以内の再入国を可能とする規定を含む出入国管理及び難民認定法の改正法案を2009年3月6日に国会に提出した。
- 法務省入国管理局は、外国人家事使用人の入国に関する告示の要件の統一的かつ弾力的な運用を図るため,2009年3月に関係告示の要件の運用について地方入国管理局あて通知した。
(5)保険契約者を保護するため、平成20年12月に保険契約者保護機構(PPC)制度において、保険会社が破綻した場合における資金援助の財源に係る政府補助を可能とする期間を延長。
9.民営化
- (1)ゆうちょ銀行及びかんぽ生命には、民間の金融機関と同様の免許、情報開示、監督の基準に適合するための措置がとられることを確認。
- (2)ゆうちょ銀行・かんぽ生命と民間金融機関との間の対等な競争条件を確保。主務大臣が業務拡大について決定を下す際には、適正な競争関係とゆうちょ銀行・かんぽ生命の経営状況が考慮されなければならないことを確認。
- (3)価格が20万円超の国際郵便物について原則として申告納税方式を適用する制度を、2009年2月16日から実施していることを確認。
- (4)郵政民営化プロセスの透明性の重要性を認識。
10.流通
現行の輸出申告制度のもと貨物セキュリティを維持しつつ迅速通関について引き続き議論。急送貨物の通関申告に際し任意の税関官署での対応を提案する米国政府の見解に留意。通関業者の事務所は貨物の蔵置場所近くに設置されることが重要と認識。AEO通関業者のための輸出入申告の提出方法を引き続き検討。
【米側措置】
1.ダンピング防止措置
米国政府は、ダンピング防止関連法規則がWTO上の義務に合致するよう確保。また、熱延鋼板紛争で問題になっているダンピング・マージンの計算方法及び米国内法に関し、WTOの勧告及び裁定を履行するために適当な措置について引き続き議会と協力。
2.税関・流通
- (1)米国はマニフェスト船積24時間前提出規則について説明。2009年1月、「10+2」ルールの暫定最終規則を実施。米国政府は、「10+2」ルールがリードタイムの長期化や物流効率の低下、遵守のためのコストの増加をもたらしかねないとの日本国政府の懸念に留意。パブリックコメントの締切以降も外国政府及び産業界との間で対話を継続。完全実施時期について、予定されている2010年1月の延期もあり得る旨、言及。
- (2)米国向けコンテナ貨物100%検査が円滑な国際貿易や経済活動に与え得る影響についての日本国政府の懸念を認めるとともに、港湾運営や物流への影響が最小限になるような現実的な方策を追求することを約束。航空貨物の100% 保安検査についても同様。
3.領事事項
- (1)州によって国際運転免許証の有効期間が短縮されていることに関する日本政府の懸念を理解。道路交通条約(国際運転免許証の有効期間は一年間)と整合的な形での解決策を模索すべく議論を継続するとともに、懸念を州政府に伝達する。また、社会保障番号(SSN)の受給資格がない人には社会保障番号を運転免許の受給条件としないように改善。
- (2)米国国内におけるビザ更新手続きが停止されたことに関する日本政府の懸念を米国は認識。米国は10指の指紋再利用政策の導入等、ビザ更新負担軽減策を導入。手続きの改善のため引き続き議論。
- (3)電子渡航認証システム(ESTA)につき、周知活動を実施。
4.特許制度
日本が要望する先願主義を採用する法案が、現在米国議会で審議中。また、米国は、日本及び先進国と、先願主義の観点から起草された条約草案を含む特許法の調和について引き続き協議。早期公開制度の例外については、日本国政府の懸念を認識し、議論を継続。
5.政府調達
交通標準化法などにおける「バイ・アメリカ」規制に関する日本政府の懸念及び米国の大量輸送プロジェクト市場への参入に関する日本政府の関心に留意。米国政府より、公益免除の請願手続や免除されるための理由について情報提供。
6.輸出関連規制
米国政府は、再輸出規制に関するウェブ上のセミナーの充実化、相談員の東海岸と西海岸への設置、米国輸出者への品目分類に関する情報提供の奨励などの措置を実施。日本国政府が提起したウェブ上で輸出管理品目番号(ECCN)を提供する企業情報の充実化等、日本国政府から提起された課題について引き続き評価・議論。
7.基準・規格
- (1)日本の有機認定手続きの認証が公式に終了したとする書簡を日本政府に提出。
- (2)うんしゅうみかんのカンキツかいよう病に対する検疫措置の緩和に関し、日本国政府から受理した病害虫危険度解析の再評価のための情報を検討中。
- (3)米国国立標準・技術研究所(NIST)は、米国内の取引及び商業におけるメートル法の自主的な採用を促進する。また連邦公正包装及び表示法(FPLA)の改正に向けた議会の行動を米国産業界が支持するように、引き続き努力していく。
8.州別規制の統一化
米国環境保護庁は電気製品のリサイクルに関する規制の調和に関し、規制の統一に貢献し得るNGOを活用、また、州政府の担当者間の情報交換を促進するために会合を開催し、関係者の便宜を図るため、ウェブサイトにより情報公開を実施。
9.域外適用
イラン拡散対抗法案のような新たな法案について、米国は域外適用に関する日本の懸念を共有。
10.競争政策
米国連邦反トラスト当局は、米国消費者の利益のための競争を促進する観点から、連邦反トラスト法の適用の除外及び免除の適切な範囲に関する考え方を示す機会を引き続き模索。
11.司法制度・法律サービス
1つの州が、新たに外国リーガルコンサルタント規則(注)を採用し、これにより、米国で外国リーガルコンサルタント制度を持つ管轄区は合計30となった。
(注) 外国の弁護士資格を有する者に対して、当該州において一定の範囲で弁護士として実務を行うことを認める裁判所規則。
12.海運
- (1)米国政府は毎年1億ドルを超える運航補助を10年間に渡り実施するという新運航補助制度に関し、日本国政府に対し、引き続き補助対象船舶リスト及び同制度の変更につき情報提供することを確保する。
- (2)米国政府と日本国政府は、加州の港湾におけるクリーントラック・プログラムについて懸念を共有。
13.商品市場
米国商品先物取引委員会は日本国経済産業省及び農林水産省と協力及び協働を強化するための枠組み合意に署名。
14.金融
2009年6月17日、米国財務省は金融規制改革案を発表し、全米保険局の設置を提案。米国の州別規制によって日系保険会社が負う問題への対応や保険グループに対するプルデンシャル監督の強化に向け、米国政府が同案で提案した規制措置をとることへの日本政府の期待に留意。
15.電気通信
- (1)ケーブルテレビにおける双方向機能導入に向けた技術方式に関する必要な措置の実施について、引き続き協議。
- (2)2008年1月22日の大統領令に基づき、商用通信衛星の輸出許可等の手続の遅れの最小化、透明性の最大化の努力を継続。
- (3)2009年2月17日、ブロードバンドの展開促進等のための「ブロードバンド技術機会プログラム」の設置など70億ドルを超える予算を含む米国再生・再投資法が成立。
16.情報技術
米国政府はデジタル・ネットワーク技術の進展に伴う著作権侵害に関する共通の問題を日本国政府と共有。米国政府と日本国政府はこの問題について、情報交換を行う。
17.医療機器・医薬品
日米両国政府は、革新的な医薬品の研究開発費を回収するために必要なデータ保護期間を現状より延長するという日本側要望について協議。