中東

基礎データ

令和8年3月13日
レバノン共和国国旗

一般事情

1 面積

10,452平方キロメートル(岐阜県程度)

2 人口

約580万人(2024年推定 世銀)

3 首都

ベイルート

4 民族

アラブ人(95%)、アルメニア人(4%)、その他(1%)(2024年CIA The World Fact book

5 言語

アラビア語(仏語及び英語が通用)

6 宗教

キリスト教(マロン派、ギリシャ正教、ギリシャ・カトリック、ローマ・カトリック、アルメニア正教)、イスラム教(シーア派、スンニ派、ドルーズ派)等18公認宗派

7 略史

年月 略史
16世紀 オスマン・トルコの支配下に入る
1920年 仏の委託統治領となる
1943年 仏より独立
1975年 レバノン内戦始まる
1978年 イスラエルのレバノン侵攻
1989年 ターイフ合意(国民和解憲章)成立
1990年 内戦終結
2000年 イスラエル軍南レバノンから撤退
2005年 シリア軍レバノンから撤退
2006年 ヒズボッラーとイスラエル間の戦闘。国連安保理決議1701号採択。
2020年 外貨建て国債の支払い停止の表明(3月)
ベイルート港での大規模爆発の発生(8月)
2023年 ガザ情勢を受けて、レバノン南部を中心としてヒズボッラーとイスラエル間の攻撃の応酬が開始
2024年 イスラエルによる地上侵攻(10月)及びレバノン全土への攻撃が激化
イスラエル・レバノン間で停戦に合意(11月26日)

政治体制・内政

1 政体

共和制

2 元首

ジョゼフ・アウン大統領(2025年1月9日就任)

3 議会

一院制(128議席 キリスト教徒とイスラム教徒が同数 任期4年)

4 政府

(1)首相名
ナワーフ・サラーム(2025年2月就任)
(2)外務・移民相名
ユーセフ・ラッジィ(2025年2月就任)

5 内政

  • (1)レバノンには18の公認宗派が存在し、各宗派に政治権力配分がなされ、バランスの確保に意が用いられている(大統領:マロン派、首相:スンニ派、国会議長:シーア派)。
    2005年2月にラフィーク・ハリーリ元首相が暗殺されて以降、国内ではイスラム教シーア派のヒズボッラーなど親シリア・イラン派と、故ハリーリ元首相次男のサアド・ハリーリ氏を中心とする親サウジ・イスラム教スンニ派のグループなどの反シリア派が対立してきた。
  • (2)2014年5月、スレイマン大統領の任期が終了したが、後任の人選に関し諸党派間の調整がつかず、約2年半にわたり大統領の不在が続いた後、漸く合意が成立し、2016年10月31日、ミシェル・アウン前自由愛国運動(FPM)党首を大統領に選出。
    2019年10月、増税措置等への反対を契機とする大規模な反政府デモがベイルートなどのレバノン各地で発生。抗議内容は次第に増税反対から現在の政治体制への抗議や汚職の根絶等を要求する内容に変化し、デモ参加者たちは「テクノクラート内閣」の樹立を要求。こうした中、同年10月、ハリーリ首相が辞任を表明。同年12月、アウン大統領はハッサン・ディアブ元教育相に組閣を指示し、2020年1月にディアブ新内閣が成立。ディアブ内閣は、経済危機対応や行財政改革等の課題に直面し、同年3月、ディアブ首相は外貨建て国債の返済延期を表明(事実上の債務不履行)。8月4日にベイルート市内のベイルート港内の倉庫にて大規模爆発が発生。翌10月には、ベイルート港大規模爆発事案の捜査を担当する判事の解任を求めるデモ隊による衝突事案が発生した。
  • (3)2022年には、議会選挙が5月15日に大きな混乱無く予定通り実施されたが、政治勢力間の対立等により議会選挙後の新内閣が成立せず、また、10月末で任期切れとなったミシェル・アウン大統領の後任を選出する議会での協議も妥結に至らず、大統領は不在となっていた。2023年10月8日以降、ハマスの動きに呼応したヒズボッラーが南部の国境係争地に対する砲撃を実施し、イスラエルとの攻撃の応酬が激化。その後2024年11月26日に米仏の仲介によって停戦に合意するまでの間、大統領は選出されず政治空白が生じていた。
  • (4)2025年1月、議会投票を経てジョゼフ・アウン国軍司令官(当時)が第14代大統領に選出された。2月にはナワーフ・サラームICJ所長(当時)を首班とする内閣が発足し、内政安定化に向けた一歩を踏み出した。
  • (5)2025年8月上旬、レバノン政府は、武器の保有を正式な治安機関・軍組織に限定する方針及びレバノン全土で非政府武装勢力の存在を終了させる方針を閣議決定した。同月、国連安保理は、イスラエル・レバノン間の国境を監視し平和維持を担う国連レバノン暫定隊(UNIFIL)の活動任期延長を2026年末までとし、その後1年以内に部隊を縮小、撤収を定める決議案を全会一致で採択した。2026年1月、政府はリタニ川以南における国家による武器独占達成を発表。リタニ川以北の同様の武器独占計画についても、政府は4~8か月をかけて実施するとの方針を了承した。2026年3月、レバノン政府は、ヒズボッラーによるイスラエルの占領に対する抵抗運動を黙認する方向を転換し、同組織の治安・軍事活動を違法と見なし、武装放棄を義務づける閣議決定を行った。

外交

1 全般

 中東和平問題に関しては、レバノンは、民族宗派間の人口バランスを崩すパレスチナ難民のレバノンへの帰化を拒否し、難民の帰還権を強硬に主張する立場をとっている。ヒズボッラーなど対イスラエル抵抗組織の活動は2024年のイスラエルとの衝突以前は許容されてきたが、その後上述の内政の変化により、抵抗組織の保有する武器についてはレバノン国軍による接収が進められている。アラブ連盟の一員であり、アラブ諸国との外交に重点を置く。旧宗主国の仏とも緊密な関係にある。

2 対イスラエル

 1970年代にパレスチナ勢力がレバノンに流入して以降、レバノンは中東和平問題に巻き込まれ、1978年には南レバノンをイスラエルに占領された。2000年5月、イスラエルは南レバノンから撤退したが、レバノンは両国境界上にあるシェバア農地が依然としてイスラエルに占領されたままであるとして引き続きイスラエル軍の撤退を求めており、シェバア農地周辺におけるヒズボッラーの抵抗運動も継続している。
 2006年7月には、ヒズボッラーがイスラエル軍を襲撃し兵士8名を殺害、2名を拉致したことから、イスラエルとヒズボッラー間の戦争が勃発し、双方に多数の死傷者が出るとともに、レバノン国内にも多くの被害が生じた(翌8月、安保理決議1701が採択され停戦が発効)。
 引き続き、シェバア農地を含めたシリア・レバノン間の国境の画定やヒズボッラー等国内武装勢力の武装解除などを内容とする安保理決議1559、1680、1701を始めとする関連安保理諸決議の履行が課題として残されている。
 2006年の大規模軍事紛争以降、ヒズボッラーは表立った対イスラエル国防軍(IDF)軍事活動は控えていたが、2019年9月、ヒズボッラーとIDFとの間で砲撃事案及びIDF無人機撃墜事案が発生。2021年7月末~8月初旬、レバノンからイスラエル北部にロケット攻撃が発生し、イスラエルはレバノン南部への大規模な報復砲撃を実施した。一方、2022年10月にはイスラエルとの間の海洋境界につき合意が発表された。
 2023年10月7日、ガザ地区においてハマスが対イスラエル攻撃を開始すると、翌8日、ヒズボッラーは南部の国境係争地に対する砲撃を実施し、イスラエルとの攻撃の応酬が激化。これ以降、ヒズボッラーはイスラエルとの間で攻撃の応酬を継続した。2024年7月後半以降、情勢は急激に悪化し、9月にはイスラエルがレバノン全土に対する空爆を激化させたのみならず、10月1日、レバノン南部における地上作戦を開始した。その後、米国及びフランスの仲介によって、11月26日、レバノンはイスラエル政府との間で停戦に合意した。停戦合意後も、イスラエルはレバノン南部に駐留しつつ南部やシリア国境にて空爆等攻撃を継続。また、国境警備にあたるUNIFILへの威嚇行為も見られている。
 2026年2月28日、イスラエルがイランに対して先制攻撃を実施し、翌日にイランがハメネイ師の死亡を発表すると、3月2日にはこれに対する報復の位置づけでヒズボッラーがイスラエルに向けロケット弾の発射を開始。イスラエル軍はレバノン全土のヒズボッラー拠点を空爆するとともに、3日には南部への地上作戦を開始した。

3 対シリア

 シリアは歴史的経緯からレバノンを特別の同胞国とみなし、1990年のレバノン内戦終結後も軍部隊を駐留させて親シリア政権を樹立し、実質的にレバノンを支配してきた。しかし、2005年2月にハリーリ元首相が暗殺されると、シリア排斥の政治運動が急速に盛り上がり、米仏を中心とする国際的な圧力もあって、シリア軍は05年4月にレバノンから撤退(レバノン杉革命)。その後、2008年10月にレバノンとシリアは外交関係樹立を宣言する共同声明に調印し、通常の二国間関係に移行した。
 2011年3月以降のシリア情勢に対し、レバノン政権は公式には不干渉の立場をとってきたものの、ヒズボッラーはシリア政権を支援し事実上参戦。また、約200万人以上とも言われるシリア難民受け入れによる社会の不安定化、シリアからの過激派勢力の侵入による治安の悪化、主要産業である観光業収入の減少等による経済状況の悪化など、シリア危機はレバノンに大きな影響を及ぼしてきた。2024年12月にシリアのアサド政権が崩壊した後は、シリア難民の帰還が進んでいる。その数はレバノン政府によると約50万人に上るが、実際の避難民数・帰還民数の正確な把握は難しい。また、対照的にアラウィ派などアサド体制崩壊後に新規にレバノンに避難してきたシリア難民は12万人程度と推測されている。

4 対米

 米は、レバノン内戦中に多国籍軍へ派兵したが、83年にはヒズボッラーによる自爆攻撃で海兵隊員241名が犠牲になる事件が発生したこともあり、その後、米軍は撤退した。
 米は、特に2001年の同時多発テロ事件以降、対イスラエル抵抗運動を継続するヒズボッラーに厳しい目を向けており、同年11月には資産凍結対象テロ組織リストにヒズボッラーを掲載。仏と共に採択に力を注いだ04年の安保理決議1559、2006年7~8月の衝突後に採択された決議1701においても、レバノン国内武装勢力の解散・武装解除を求めている。

5 対仏

旧宗主国である仏とは政治、経済など全般的に緊密な関係にある。仏は、内戦後のレバノン復興を目的としたハイレベルの国際会議をこれまで1992年以降複数回主催し、2020年8月に発生したベイルート大規模爆発に際しては国連と共催で「ベイルート及びレバノン国民に対する支援のための国際会議」(2020年8月及び12月)を開催、また、イスラエルとヒズボッラーの攻撃の応酬による被害について「レバノンの人々と主権を支援するための国際会議」(2024年10月)を主催するなど、イニシアティブを発揮してきた。

国防

1 軍事力(ミリタリーバランス 2025年)

(1)国防費
7億9千万ドル(2025年)
(2)兵力
6万人(陸軍5万6,600人、海軍1,800人、空軍1,600人)

2 国防戦略

 2011年3月以来続くシリア紛争のレバノンへの波及を防ぐため、レバノン・シリア北東部国境地帯の国境防衛に重点を置いてきた。現在は同国境地帯からの密輸対策に取り組んでいる。また、レバノン南部情勢の安定実現のため、レバノン国軍はUNIFILと連携し、各種支援を受けながらレバノン南部でのプレゼンスを維持している。また、治安・経済情勢が悪化し、イスラエルによるレバノン南部への攻撃が散発的に継続する中、国軍はレバノン国家の柱石として、国内の治安維持任務に従事している。これらのため、主に米、英、独、仏、伊などの欧州諸国やカタール、ヨルダン等から軍事支援を受けている。

経済

1 主要産業

金融業、観光業、食品加工業等

2 GDP

20.08億ドル(2023年世銀)

3 GDP成長率

-0.8%(2023年世銀)

4 インフレ率

45.2%(2024年世銀)

5 失業率

11.0%(2023年世銀)

6 貿易

(1)輸出 37.8億ドル(2024年WTO Stats)
主要輸出品:農産品、ダイアモンド、金、鉱物
主要輸出先:UAE、EU、シリア、トルコ、エジプト
(2)輸入 173.09億ドル(2024年WTO Stats)
主要輸入品:精製石油製品、自動車、金、ダイアモンド
主要輸入元:EU、中国、トルコ、米国、UAE

7 為替レート

レバノン・ポンド(LBP)
1ドル=89,500レバノン・ポンド(2026年2月)

8 経済概況

 内戦以前の首都ベイルートは「中東のパリ」と呼ばれ、中東のビジネス・金融センターとして繁栄していたが、内戦によってシステムが崩壊。1990年の内戦終了以後、経済復興が進められ、ベイルートの街並みなども再び整備されてきたが、復興事業の対内債務、高金利政策、電力公社(EDL)の国家予算による赤字補填などが累積し、公的債務は構造的に膨張した。さらに2006年のイスラエル・ヒズボッラー紛争による広範なインフラ被害がこれに追い打ちをかけ、累積債務の解消が長年の政策課題となってきた。
 2012年以降、大幅に増えたシリアからなどの難民の受け入れ率(人口あたり)が世界一である状況に加え、長年の財政赤字、貿易赤字(食料など含む物資の8割を輸入に依存)などに起因する未曾有の経済・財政危機に見舞われ、2020年3月には米ドル建てユーロ債(12億ドル)の償還停止(事実上のデフォルト)を決定、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウン措置による経済活動の停滞、2020年ベイルート港大爆発事案による甚大な人的・物的被害が経済危機にさらに追い討ちをかけた。2022年の金銭的貧困は2012年に比べ3倍以上に増加、同年7月1日の世銀の発表ではレバノンは高中所得国から低中所得国(世界銀行所得分類に基づく)に27年ぶりに転落した。
 また、2023年10月から翌年11月までのイスラエルとヒズボッラーの戦争により、レバノンは甚大な経済的損失及び物理的損害を受けており、世銀はレバノンの戦後の復旧・復興ニーズを約110億米ドルと推定。2025年、アウン大統領とサラーム内閣の下、レバノン政府は国内改革を推進しつつIMFとの協議を継続、戦争からの復興が喫緊の課題となっている。

経済協力

1 主要援助国等(2022年 単位:100万米ドル 出典:OECD)

 ドイツ(333.81)、米国(292.53)、フランス(152.77)、EU(149.73)、UNRWA(108.26)、イタリア(57.78)、カナダ(47.54)

2 日本の援助(2023年度末まで)

(1)有償資金協力
130.22億円
(2)無償資金協力
101.24億円
(3)技術資金協力
20.97億円

二国間関係

1 政治関係

日本からレバノン
年月 政治関係
1954年 在レバノン公使館開設
1959年 在レバノン大使館に昇格
1986年 治安状況の悪化に伴い、館員は、ベイルートから避難し、ダマスカスの仮事務所にて執務。(ベイルートには現地職員を配置。)
1995年2月 大使館員がベイルートに復帰(同年5月本任大使着任)
レバノンから日本
年月 政治関係
1957年 在京レバノン公使館開設
1959年 大使館に昇格

2 経済関係

対レバノン貿易(2025年)(財務省貿易統計)
輸出
103億9,503万円
輸入
4億7,256万円

3 文化関係

 日本で学ぶ学生に対する奨学金事業、専門家派遣などに加え、文化無償資金協力を行なっている。
 2024年には、バトルーン市において出土したフェニキア時代(紀元前約1400年~600年)からオスマン朝時代にわたる一連の建築遺構を保存するため、草の根文化無償資金協力を通じた機材供与案件を実施し、同建築遺構は2025年11月に一般公開された。また、2025年12月にはレバノン大学美術・建築学部の協力の下、日本映画祭を2日間にわたり開催。2026年2月には同大学との共催で、ハサン・カマル・ハルブ国際日本文化研究センター外国人研究員を招き、「日本の近代国家の成立:政治と教育を中心に」と題するオンライン講演会を実施した。

4 在レバノン邦人数

67人(2025年10月現在)

5 在日レバノン人数

185人(2025年6月現在、法務省)

6 要人往来

(1)往(1995年以降)
日本からレバノン
年月 要人名
1995年10月 福田外務政務次官
1997年4月 逢沢一郎外務委員長
森喜朗日・レバノン友好議連会長一行
1999年1月 高村外務大臣
2001年8月 杉浦外務副大臣
2002年6月 有馬政府代表(中東和平担当特使)
2004年8月 田中外務大臣政務官
2009年12月 飯村政府代表(中東和平担当特使)
2010年11月 徳永外務大臣政務官
2014年1月 牧野外務大臣政務官
2015年5月 薗浦外務大臣政務官
2017年1月 薗浦外務副大臣
2017年9月 佐藤正久外務副大臣
2019年12月 鈴木馨祐外務副大臣
2020年3月 義家弘介法務副大臣
2022年8月 山田賢司外務副大臣
2025年12月 大西洋平外務大臣政務官
(2)来(1996年以降)
レバノンから日本
年月 要人名
1996年4月 セニオラ財政担当国務相
1996年5月 ホベイカ電力・水資源相
1996年6月 ハリーリ首相(非公式訪日)
1997年11月 ハリーリ首相(公式実務訪問賓客)
2000年3月 メルアビー・レバノン・日本友好議員連盟会長
2001年2月 ハリーリ首相(非公式訪日)
2001年11月 フレイハーン経済・貿易相
2002年7月 フレイハーン経済・貿易相
2002年10月 ハリーリ首相
ジャーベル・レバノン・日本友好議員連盟会長
2004年8月 アザール国会予算財務委員長
2013年1月 カッバーニー国会議員

7 二国間条約・取極

  • 日本レバノン航空協定(1967年署名)
  • 海運及び航空所得相互免税取極(1969年署名)
  • 日本レバノン技術協力協定(2022年署名)
  • 便益関税対象国への追加(2025年4月1日施行)
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