アジア
香港(Hong Kong)
基礎データ

一般事情
1 面積
1,110平方キロメートル(東京都の約半分)
2 人口
約740万人(2021)
3 民族
中国系(約92%)
4 言語
広東語、英語、中国語(マンダリン)ほか
5 宗教
仏教、道教、プロテスタント、カトリック、イスラム教、ヒンドゥー教、シーク教、ユダヤ教
6 略史
南京条約(1842年)により香港島が、次いで北京条約(1860年)により九竜半島の先端(約9.7平方キロメートル)が英国領土となる。1898年、英国は更に中国との租借条約により235の島を含む新界の99か年にわたる租借を確保。1982年に、中英は香港返還問題の交渉を開始。1984年9月に交渉は妥結し、同年12月19日、中英双方の首相により、1997年7月1日をもって香港の全領域を中国に一括返還する旨の英中共同声明が署名され、1985年5月に発効。1990年4月、中国全国人民代表大会にて「香港特別行政区基本法」が可決、成立。1997年7月1日、中国に返還。
政治体制・内政
1 政体
中華人民共和国香港特別行政区(Hong Kong Special Administrative Region:SAR)
2 元首
習近平中国国家主席
3 議会
立法会(90議席)
香港基本法が定める立法機関。現在の定員は90名で、うち40名は選挙委員会選挙、30名は職能別団体選挙、20名は地域別直接選挙で選出。任期は4年。
4 政府
- 香港特別行政区政府
- トップは、李家超(John Lee)行政長官(2022年7月1日就任)
行政長官は、香港特別行政区の首長であり、香港特別行政区を代表するとされ、中央人民政府と香港特別行政区に対して責任を負う(第43条)。任期は5年、再選は1度まで可能(第46条)。
- 歴代行政長官
- 董建華(Tung Chee-hwa)任期:1997年7月1日~2005年3月12日
- 曾蔭権(Donald Tsang Yam-kuen)任期:2005年6月21日~2012年6月30日
- 梁振英(Leung Chun-ying)任期:2012年7月1日~2017年6月30日
- 林鄭月娥(Carrie Lam)任期:2017年7月1日~2022年6月30日
- 李家超(John Lee)任期:2022年7月1日~現在
5 内政
(1)「一国二制度」と「香港基本法」
1997年7月1日に香港が英国から中国に返還されて以来、いわゆる、「一国二制度」が実施されており、「中華人民共和国香港特別行政区基本法」は、香港特別行政区に「高度な自治」を認め(第2条)、社会主義制度と政策を実行せず、従来の資本主義制度と生活方式を維持し、50年間変えない(第5条)等と定めている。
(2)選挙制度を巡る動き
2014年8月31日、中国全人代常務委員会が香港行政長官選挙制度改革に関する決定を行い、2015年6月17日、同決定の内容を具体化した改革案が香港立法会に提出されたが、翌18日の採決で否決された。
(3)国家安全維持法の制定
2020年5月28日、中国全人代は、香港が国家安全を守るための法律制度と執行メカニズムに関する決定を行い、同年6月30日に全人代常務委員会が香港国家安全維持法を制定、同日香港で発効された。
(4)選挙制度の変更
2021年3月11日、中国全人代は、「愛国愛港者による香港統治」が確保されるようにするためとして、香港の行政長官と立法会の選挙制度変更に関する決定を行い、同30日に全人代常務委員会が香港基本法の規定を改正した。
外交・国防
1 外交
中国中央政府が責任を有する。香港内には中国政府を代表する機関として中央人民政府駐香港特別行政区聯絡弁公室が設置されている(代表:駱惠寧・主任。2020年1月就任)。また、中国外交部の香港事務所(駐香港特別行政区特派員公署)が設置されている(代表:劉光源・特派員。2021年5月就任)。
2 軍事
- 中国中央軍事委員会が責任を有する。
- 陸、海、空三軍からなる香港駐留部隊が駐留。
- 駐留軍トップは、陳道祥・駐香港部隊司令員(少将)(2019年4月就任)
経済(2021年)(注)1米ドル=7.774 香港ドル換算(2021年)(出所:香港政府統計処)
1 主要産業
金融業、不動産業、観光業、貿易業
2 GDP(名目)
2兆8,697億香港ドル(3,691億米ドル)
3 一人当たりGDP
38万7,110香港ドル(49,795米ドル)
4 実質GDP成長率
6.3%
5 物価上昇率(総合消費者物価指数)
1.6%
6 失業率
5.2%
7 総貿易額
- (1)輸入5兆3,077億香港ドル(6,828億米ドル)
- (2)輸出4兆9,606億香港ドル(6,381億米ドル)
8 主要貿易品目(2020年、出所:JETRO)
- (1)輸入:電気機械、装置及び電化製品、電子部品
- (2)輸出:電気機械、装置及び電化製品、電子部品
9 主要貿易相手国及び地域
- (1)輸入 中国(45.8%)、台湾(10.3%)、シンガポール(7.8%)、韓国(6.1%)、日本(5.1%)
- (2)輸出 中国(59.5%)、米国(6.2%)、台湾(2.9%)、インド(2.7%)、日本(2.4%)
10 通貨
香港ドル
11 為替レート
2005年5月から1米ドル=7.75~7.85香港ドルの間で変動を認めている
12 経済概況
- (1)コモンロー(英米法系)の透明な法制度や、簡素で低率の税制(法人税16.5%、個人所得税最高税率15%、キャピタルゲイン・利子非課税)などが香港経済の特徴であり、こうした制度的・社会的インフラを基礎として国際金融及び物流の拠点としての地位を築いている。
- (2)製造業拠点は1990年代前半までに中国本土への移転が進んだ。現在GDPに占める製造業の割合は約7.2%。貿易、金融、不動産、観光、流通などのサービス産業がGDPの90%以上を占める。
- (3)1997年7月の返還直後に発生したアジア金融・経済危機により、1998年はマイナス成長に転落、さらに2003年3月、SARSの発生は香港経済全体に大きな打撃を与えた。しかし、2003年7月の中国大陸からの香港個人旅行の解禁や、2004年1月に施行された「中国本土・香港経済連携緊密化取決め(CEPA)」などによる中国本土との経済関係強化によって、香港経済は急速に回復した。
- (4)2008年9月以降は、リーマンショックによる世界的な景気後退の影響を受け、2008年のGDP成長率は+2.1%と大きく減速したが、2009年以降、大陸経済の回復・成長に伴い、香港経済も連動して好調を維持した。2011年からの欧州及び米国経済の低迷、中国本土経済の減速により、香港経済も成長が減速した。
- (5)新型コロナウイルス感染症の影響を受け、観光・小売り等のサービス業は大きな打撃を受けており、 2020年のGDP、貿易、小売等いずれもマイナス成長となったが、2021年は持ち直し、前年の落ち込みもあって GDP成長率は6.3%と改善した。
- (6)なお、近年の注目すべき動向として「大湾区(グレーターベイエリア)建設」がある。2016年3月に全人代で承認された第13次5ヵ年計画要綱で、香港、マカオと大陸の間の連携を強化しそれぞれの長所を生かして発展を目指す「粤港澳(注)協力プラットフォーム」を構築するとして大湾区建設が中国政府の公式政策として打ち出された。2019年2月18日、中国共産党中央委員会及び国務院は広東省の9つの市(広州市、深セン市、仏山市、東莞市、恵州市、中山市、江門市、珠海市、肇慶市)・香港特別行政区・マカオ特別行政区からなる大湾区の経済、貿易をはじめ社会、民生、文化、教育、環境保護などについて地域一体となって発展させる計画として「粤港澳大湾区発展規画綱要」を発表した。(注)「粤」は広東省、「港」は香港、「澳」はマカオを指す。
日本との関係
1 政治関係
香港は我が国にとって緊密な経済関係及び人的交流を有する極めて重要なパートナーであり、「一国二制度」の下に、自由で開かれた体制が維持され、民主的、安定的に発展していくことが重要。
2 経済関係
(1)日・香港貿易(2021年、出所:香港政府統計処)
ア 貿易額
- 対日輸入 2,708億香港ドル(348億米ドル)
- 対日輸出 1,188億香港ドル(153億米ドル)
イ 主要品目(2020年、出所:香港政府統計処)
- 対日輸入 (ア)電気・電子機器、(イ)通信・音響機器、(ウ)事務機器
- 対日輸出(再輸出) (ア)通信・音響機器、(イ)電気・電子機器、(ウ)その他機器
(2)日本からの直接投資実績(2021年)
3,180億香港ドル(ストックベース)
3 文化関係
華道、茶道、日本舞踊、浴衣着付等の伝統文化の紹介、日本語弁論大会の開催、日本語能力試験の実施、国際交流基金の巡回展及び同基金による日本語弁論大会成績優秀者の本邦招聘、国費留学生の受け入れ、その他民間の商業ベースではJ-POPコンサートや漫画・アニメーション祭の開催等が行われている。また、スポーツ分野でもサッカー、ラグビー、柔道、相撲、合気道、アイスホッケーを中心に各種の交流がある。
また、香港への感謝を示すとともに、香港の人々に対し、日本の魅力をもっと知り、楽しむ機会を提供するため、2016年から毎年10月~11月を中心に、香港において映画、講演、芸術・工芸、スポーツ、セミナー・教育関連、F&B(Food & Beverage)、キャンペーン等の日本関連イベントを集中的に行う「日本秋祭 in 香港 魅力再発見」を開催。
4 在留邦人数
24,097人(2021年10月1日現在、外務省統計資料)
5 在日香港人数
統計なし
6 要人往来(肩書はいずれも当時)
年月 | 要人名 |
---|---|
1994年2月 | 竹下元総理大臣 |
1994年5月 | 海部元総理大臣 |
1996年5月 | 羽田元総理大臣 |
1996年7月 | 長尾法務大臣 |
1996年8月 | 池田外務大臣 |
1997年7月 | 池田外務大臣、海部元総理大臣、羽田元総理大臣、村山元総理大臣 |
1997年9月 | 三塚大蔵大臣 |
1998年1月 | 瓦建設大臣 |
1998年11月 | 斎藤参議院議長 |
1999年5月 | 羽田元総理大臣 |
2000年7月 | 河野外務大臣 |
2002年8月 | 松浪外務大臣政務官 |
2003年8月 | 坂口厚生労働大臣、竹中金融・財政担当大臣 |
2004年11月 | 海部元総理大臣 |
2005年1月 | 谷垣財務大臣 |
2005年3月 | 森元総理大臣 |
2005年4月 | 竹中内閣府特命担当大臣(経済財政政策)・郵政民営化担当 |
2005年12月 | 麻生外務大臣、二階経済産業大臣、中川農林水産大臣(WTO閣僚会議出席) |
2006年5月 | 竹中総務大臣 |
2006年5月 | 北側国土交通大臣 |
2007年1月 | 中曽根元総理大臣 |
2007年6月 | 島田最高裁長官 |
2009年2月 | 橋本外務副大臣 |
2012年3月 | 鹿野農林水産大臣 |
2012年8月 | 郡司農林水産大臣 |
2013年3月 | 森元総理大臣 |
2014年8月 | 林農林水産大臣 |
2015年8月 | 林農林水産大臣 |
2016年8月 | 山本農林水産大臣 |
2017年8月 | 齋藤農林水産大臣 |
2018年3月 | 河野外務大臣 |
2018年8月 | 齋藤農林水産大臣 |
2019年1月 | 山下法務大臣 |
2019年5月 | 石井国土交通大臣 |
2019年8月 | 吉川農林水産大臣 |
年月 | 要人名 |
---|---|
1993年3月 | パッテン総督 |
1993年5月 | カートランド金融長官 |
1993年6月 | マクラウド財政長官 |
1993年7月 | チャウ通商産業長官 |
1994年3月 | ユウ工業署長 |
1994年10月 | ピアース政治顧問 |
1994年12月 | パッテン総督 |
1995年9月 | チャン行政長官 |
1995年11月 | ツァン財政長官 |
1996年11月 | チャン行政長官 |
1996年12月 | パッテン総督 |
1997年5月 | ツァン財政長官 |
1997年10月 | 董建華香港特別行政区行政長官 |
1998年6月 | チャン政務長官 |
1999年2月 | ツァン財政長官 |
2000年10月 | チャン政務長官 |
2001年3月 | 董建華香港特別行政区行政長官 |
2002年11月 | ツァン政務長官 |
2003年8月 | タン財政長官 |
2004年2月 | ツァン政務長官 |
2005年1月 | タン財政長官 |
2008年10月 | 梁振英・香港行政会議召集人 |
2009年2月 | ドナルド・ツァン行政長官 |
2010年11月 | ドナルド・ツァン行政長官 |
2012年5月 | グレゴリー・ソー商務経済発展局長官 |
2012年10月 | ジョン・ツァン財政長官 |
2013年9月 | アンソニー・チェン運輸住宅局長官 |
2015年1月 | グレゴリー・ソー商務発展局長官 |
2015年3月 | ジャスパー・ツァン立法会主席 |
2016年9月 | ウォン・カムシン環境局長官 |
2017年5月 | ポール・チャン財務長官 |
2018年10月 | キャリー・ラム行政長官、テレサ・チェン法務長官、エドワード・ヤウ商務経済発展局長官、ニコラス・ヤン・イノベーション・科学技術局長官 |
2019年4月 | キャリー・ラム行政長官 |
2019年5月 | 劉江華・民政事務局長官 |
2019年8月 | 羅致光・労工福利局長官 |
2019年10月 | キャリー・ラム行政長官 |
7 日港間の協定
- 航空業務に関する協定(1997年6月18日発効)
- 投資の促進及び保護に関する協定(1997年6月18日発効)
- 日・香港刑事共助協定(2009年9月24日発効)
- 日・香港租税協定(2011年8月14日発効)