ドミニカ共和国
ドミニカ共和国(Dominican Republic)
基礎データ
令和6年5月24日


一般事情
1 面積
48,442平方キロメートル(九州に高知県を合わせた広さ)
2 人口
約1,123万人(2022年:世銀)
3 首都
サントドミンゴ
4 民族
混血73%、ヨーロッパ系16%、アフリカ系11%
5 言語
スペイン語
6 宗教
カトリック
7 略史
年月 | 略史 |
---|---|
1492年 | コロンブスによるイスパニョーラ島発見 |
1697年 | 同島の西側が仏領となる(リスウィク平和条約) |
1795年 | 仏西戦争の結果全島が仏領となる |
1804年 | ハイチとして仏から独立 |
1814年 | パリ条約で東側はスペイン領となる |
1822年 | ハイチ軍による占領(~1844年) |
1844年 | ハイチから独立 |
1861~1865年 | スペインに合併 |
1916~1924年 | 米国による軍事占領 |
1930~1961年 | トルヒーリョ将軍による独裁 |
1961~1963年 | クーデターにより軍事評議会 |
1965年 | 政府軍と反政府軍の武力衝突が発生(米国等派兵) |
1996年 | フェルナンデス大統領(PLD)就任 |
2000年 | メヒーア大統領(PRD)就任 |
2004年 | フェルナンデス大統領(PLD)就任(2008年再任) |
2012年 | メディーナ大統領(PLD)就任(2016年再任) |
2020年 | アビナデル大統領(PRM)就任 |
政治体制・内政
1 政体
立憲共和制
2 元首
- ルイス・ロドルフォ・アビナデル・コロナ大統領
- (2020年8月~2024年8月、任期4年)
3 議会
二院制(上院32名、下院190名)、任期4年
4 政府
- (1)首相名 首相職無し
- (2)外相名 ロベルト・アルバレス・ヒル
5 内政
- (1)1492年、コロンブスが、その第1次航海で現在のドミニカ共和国北部に到達し、同地をイスパニョーラ島と命名。新大陸におけるスペインの最初の植民地となった。
- (2)1697年にリスウィク条約により、同島は二分され、西側はフランス領になった。1795年の仏西戦争の結果、全島がフランス領になり、1804年ハイチとして独立。
- (3)1814年、スペイン系ドミニカ人が決起し、島の東部は再びスペインに帰属。1821年にスペインからの独立を宣言。1822年、ハイチは、同島東部がスペインの保護を離れた機に、同島東部を占領。
- (4)1844年、同島東部はドミニカ共和国として独立。ハイチの脅威が続いたことから1861年にスペインの保護を求めてその支配下に戻るが、1865年に再び独立。
- (5)ドミニカ共和国の政局と経済が不安定を極めた中、米国に依存するようになり、その経済支配下に組み込まれた。1905年、米国は、ドミニカ共和国の対外債務支払いを保証するため関税徴収権を確保し、軍事干渉も可能にする協定を結ばせて事実上の保護国とした。1914年に第一次世界大戦が始まると、米国はドイツの影響を懸念してドミニカ共和国に軍事侵攻し、1924年まで軍政下に置いた。
- (6)1930年代からのトルヒージョ独裁体制を経て、1962年末に民主的選挙が実施され、1963年に左派「ドミニカ革命党(PRD)」政権が発足する。しかし、7か月後のクーデターを経て、1966年まで軍主導の臨時政府が政権を担った。この間、左右勢力による対立が内戦に発展し、米国による軍事介入を招いた。
- (7)1966年に軍・旧体制派の支持を得て発足したバラゲール政権は、米国の支持も背景に政権基盤を確立し、トルヒージョ政権崩壊前後の約2年間に加えて、1966年~1978年の3期、1986年~1996年の3期の政権を担った。
- (8)左派PRDは、1978年~1986年、さらにメヒーア大統領の下で2000年~2004年に政権を担ったが、メヒーア大統領では、汚職問題、経済不安定化など厳しい政権運営を強いられた。
- (9)ドミニカ解放党(PLD)のフェルナンデス大統領は、1996年~2000年、2004年~2012年に政権を担った。同大統領は、経済成長、国際化、近代化を成し遂げたと評価される。一方、自由主義経済政策推進により貧富の格差が生じ、治安対策、失業対策や汚職対策に成果を上げることができなかった。
- (10)2012年5月の大統領選挙では、与党PLDのメディーナ候補(元大統領府相)が51.2%の票を集めて当選し、同年8月に就任した。メディーナ政権は、GDP比4%を教育費に充て、識字教育に力を入れ(非識字率5%以下を達成)、農民への低金利貸付や学校、病院の建設など低所得者層を対象とした社会政策を積極的に推進した。
- (11)2015年6月に憲法が改正され、大統領の連続再選が可能となった。2016年5月の大統領選挙では、メディーナ大統領が同国史上最多の得票率61.7%の票を獲得し、再選を果たした。メディーナ政権は、教育予算の対GDP比4%の確保、観光開発、地方経済支援と低所得者向け施策、マクロ経済の安定等の成果をあげたが、治安や汚職等の社会問題があったほか、国民の多くが経済成長を実感できないとして、国民の不満が高まった。また、2020年大統領選挙に向けての、メディーナ大統領の更なる連続再選の問題を巡り、与党の分裂を招いた。
- (12)2020年7月の大統領選挙では、野党・現代革命党(PRM)のアビナデル候補が52.5%の票を得て当選した。アビナデル政権は、2020年8月の政権発足後、新型コロナウイルス感染症対策の強化、医療分野の改善、官民連携を通じた雇用創出、汚職取り締まりを主要課題として掲げている。
- (13)2024年5月、大統領選挙が行われ、アビナデル大統領が再選を果たした。
外交・国防
1 外交基本方針
- (1)対米重視、EUと協調関係維持。アビナデル政権は、第一の貿易相手国であり、200万人のドミニカ人が居住する米国との戦略的関係を強化する方針を表明している。
- (2)カリブ諸国連合(ACS)の原加盟国、中米統合機構(SICA)加盟国(2013年10月正式加盟、カリブ共同体(CARICOM)オブザーバー)。2007年3月に米国と自由貿易協定(DR-CAFTA)が発効。2008年10月にEUとの経済連携協定を批准。2020年9月英国との経済連携協定を批准。2016年~2017年CELAC議長国。2019年~2020年の国連安保理非常任理事国。2022年下半期SICA議長国。2021年~2022年イベロアメリカ・サミット議長国。
- (3)隣国ハイチとの関係は1994年10月以降、相互に緊密化を模索、ドミニカ共和国は2010年1月のハイチ地震災害に際して、積極的に支援を行った。他方、100万人以上といわれるハイチ人の不法移民問題が大きな課題。2013年から政府は「不法移民正常化計画」を実施。2017年まで約26万人が登録。最近は再びハイチからの不法入国及び国境地域の治安が問題視されており、政府は国境監視を強化している。2020年10月、アルバレス外務大臣は国連安保理協議会に出席した際、ハイチの政治的、社会困難に対するドミニカ共和国単独での解決策はないと明言し、国際社会への協力を要請した。
- (4)長年台湾と国交を維持してきたが、2018年4月に中国と外交関係を樹立。2018年11月、メディーナ大統領が中国を訪問し、首脳会談、18の協定及び覚書への署名を実施。アビナデル大統領は、米国との戦略的な同盟関係を重視する姿勢を示し、中国については、投資をドミニカ共和国の戦略的分野(空港、港、通信)以外に限定するとして、一定の距離を置く姿勢を示している。
- (5)昨今のベネズエラ情勢の解決を目指し、2017年9月から2018年2月まで6度にわたりベネズエラ与野党間対話を実施してきたが、合意には至らず。2018年6月、政府は、ベネズエラ大統領選挙プロセスが正当性を欠くとのOAS決議を支持する立場を表明した。2021年1月、政府は、1月5日に設置されたベネズエラ議会の正当性を否認。ベネズエラにおける人道危機、民主主義及び人権問題の悪化に対する懸念を表明した。
2 軍事力
- (1)予算
- 585百万ドル(2020年:ミリタリーバランス2021)
- (2)兵役
- 志願制
- (3)兵力
- 56,050人(ミリタリーバランス2021)
経済(単位 米ドル)
1 主要産業
観光業、農業、鉱業、繊維加工、医療用品製造、サービス業(コールセンター等)
2 名目GDP
113,537百万ドル(2022年:世銀)
3 一人当たりGDP
10,111ドル(2022年:世銀)
4 経済成長率
4.9%(2022年:世銀)
5 物価上昇率
8.8%(2022年:世銀)
6 失業率
5.5%(2022年:世銀)
7 総貿易額
- (1)輸出(FOB)
- 11,644.56百万ドル(2021年:ドミニカ税関総局)
- (2)輸入(FOB)
- 24,485.55百万ドル(2021年:ドミニカ税関総局)
8 主要貿易品目
- (1)輸出
- 鉱物(フェロニッケル、金、銀)、光学機器・精密機器、電気機器(電流遮断機)・部品、医療機器(輸血用器具など)、カカオ、綿Tシャツ
- (2)輸入
- 石油・石油関連品、天然ガス、機械類・電気機器類、自動車、医薬品、鉄鋼、穀物
9 主要貿易相手国
- (1)輸出(フリーゾーン含む)(2021年上位5か国)
- スイス、インド、米国、ハイチ、プエルトリコ
- (2)輸入(フリーゾーン含む)(2021年上位5か国(フリーゾーン含む))
- 米国、中国、メキシコ、ブラジル、スペイン
10 通貨
ドミニカ・ペソ(DOP)
11 為替レート
1米ドル=53.3ペソ(2022年9月平均)
12 外貨準備高
13,034百万ドル(2021年12月:中銀)
13 対外公的債務
34,280.3百万ドル(2021年:中銀)
14 経済概況
- (1)従来、砂糖、コーヒー、カカオ、タバコ等伝統的一次産品の輸出国であったが、1990年以降、自由貿易地域(フリーゾーン)からの繊維等軽工業品の輸出が増加。また、観光業は外国投資の誘致及びインフラ整備の進展により発展。2019年の外国人観光者は約800万人。観光収入は約77億ドル。主要外貨獲得源は、上記に加え、海外に居住するドミニカ共和国人(約200万人)からの海外送金(約104億ドル 2021年:中銀)。
- (2)フェルナンデス政権第1期目(1996年~1999年)では平均7%の高い経済成長を記録。メヒーア政権下での経済の停滞を挟んで、フェルナンデス政権第2期目(2004年~2008年)は、IMFスタンドバイ協定に基づき、税制改革、財政政策(補助金削減、徴税制度改革等)、金融政策(価格安定等)、金融部門強化、電力部門改革に努めた結果、為替レートの安定、インフレ抑制等で実質的な成果を上げ高成長を実現した。フェルナンデス政権第3期目(2008年~2012年)には、2008年9月の世界金融危機により、フリーゾーンからの輸出、海外送金及び観光収入が低下し、2009年の成長率は0.9%まで落ち込んだ。しかし、変動はあるものの経済は回復した。
- (3)メディーナ政権第1期目(2012年~2016年)での実質経済成長率は、主に建設業や観光業などに牽引され、年平均6.4%を達成。建設業では、民間投資として低価格住宅、ホテル、別荘建設、また、公共投資として学校・教室建設、道路整備、地下鉄2号線延長工事がこの成長を押し上げた。政権第2期目(2016年~2020年)では、官民の投資減少、建設業の成長鈍化、ハリケーン被害等により2017年の実質経済成長率は4.6%に留まった。2018年は7.0%、2019年は5.1%となった。堅実な経済成長を実現する一方で公的債務はGDPの約50%に達しており、財政改革が課題。
- (4)アビナデル政権(2020~2024)は、輸出促進及び観光開発を軸とした経済成長を掲げている。2020年は新型コロナウイルス禍で主要産業である観光等が打撃を受け、経済成長率は-6.7%に落ち込んだが、2021年は12.3%を記録。
- (5)2022年は観光、輸出、海外からの送金、海外直接投資等が活発化し、経済成長率は4.9%を達成。10月時点で外貨準備高135億米ドルとなり、GDPの12%超、輸入の約6か月分となり、IMFが推奨する基準を上回った。
経済協力
1 日本の援助実績
- (1)有償資金協力(2021年度までの累計、借款契約ベース) 575.78億円
- (2)無償資金協力(2021年度までの累計、交換公文ベース) 274.77億円
- (3)技術協力実績(2021年度までの累計、JICA経費実績ベース) 371.10億円
2 主要援助国
- (1)フランス(311.45)
- (2)米国(53.95)
- (3)スペイン(8.64)
- (4)日本(8.02)
- (5)ドイツ(7.17)
(2020年、支出総額ベース、単位:百万ドル)
二国間関係
1 政治関係
1934年11月に外交関係樹立。1941年12月に外交関係断絶。1952年6月に外交関係再開。1957年に互いに大使館を設置。2006年7月に日本人移住50周年。
2015年に日・中米交流年。
2 経済関係
対日貿易(2023年:財務省貿易統計)
- (1)貿易額
- 輸出 161.07億円
- 輸入 508.39億円
- (2)主要品目
- 輸出 科学光学機器、電気機器、医薬品、カカオ等
- 輸入 輸送用機器(自動車など)、精密機器(科学光学機器)、一般機械、鉄鋼等
3 文化関係
- 一般文化無償資金協力 19件 計7.65億円
- 草の根文化無償資金協力 6件 計5,028万円 (ともに2022年度までの累計)
4 在留邦人数
736人(2023年10月現在) (参考)日系人約800人
5 在日ドミニカ共和国人数
679人(2022年12月末現在:法務省)
6 要人往来
年月 | 要人名 |
---|---|
1987年 | 倉成正外務大臣 |
1989年 | 田中直紀外務政務次官 |
1990年 | 中山正暉衆議院議員 石井一二外務政務次官(特派大使、バラゲール大統領就任式) |
1996年 | 林義郎衆議院議員(特派大使、フェルナンデス大統領就任式) |
1997年 | 高村正彦外務政務次官 |
2000年8月 | 荒木清寛外務総括政務次官(特派大使、メヒーア大統領就任式) |
2003年12月 | 阿部正俊外務副大臣 |
2004年8月 | 谷津義男衆議院議員(特派大使、フェルナンデス大統領就任式) |
2006年5月 | 大野功統前防衛庁長官(友好議員連盟会長) |
2006年7月 | 尾辻秀久参議院議員(総理特使、移住50周年記念式典) 衆議院中米・カリブ各国政治経済事情調査議員団(団長:東順治議員、移住50周年記念式典) 川内博史衆議院議員(移住50周年記念式典) |
2007年3月 | 田中和徳財務副大臣 |
2008年8月 | 大野功統衆議院議員(特派大使、フェルナンデス大統領就任式) |
2012年8月 | 山根隆治外務副大臣(特派大使、メディーナ大統領就任式) |
2013年1月 | 若林健太外務大臣政務官(移住記念碑落成式) |
2013年9月 | 遠藤利明衆議院議員(友好議員連盟会長) |
2014年8月 | 参議院ODA調査団(団長:中西祐介議員) |
2015年10月 | 土屋品子衆議院外務委員長 |
2016年8月 | 北村誠吾衆議院議員(特派大使、メディーナ大統領就任式) |
2019年11月 | 鈴木馨祐外務副大臣(アジア中南米協力フォーラム(FEALAC)外相会合) |
2021年7月 | 宇都隆史外務副大臣(移住65周年記念式典) |
2023年7月 | 武井俊輔外務副大臣 |
年月 | 要人名 |
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1989年 | モラレス副大統領(大喪の礼) |
1990年 | アルマンサル文相 モラレス副大統領(即位の礼) |
1991年 | バンデルホルスト観光相、トラル中銀総裁 |
1993年 | タベラス観光相 |
1994年 | サン・ベン技術相、エリアス観光相 |
1997年 | ゲレロ農地庁長官 |
1998年 | ボネッティ商工相(大統領特使)、コリャド農地庁長官 |
2000年 | フェルナンデス大統領(公式実務訪問) |
2001年 | エルナンデス農地庁長官 |
2002年11月 | メヒーア大統領(公式実務訪問) |
2005年5月 | アルブルケルケ副大統領(博覧会賓客) |
2005年8月 | アルブルケルケ副大統領(日本・中米首脳会談) |
2006年7月 | フェルナンデス大統領(実務訪問) |
2007年2月 | バレンティン下院議長 |
2009年9月 | カスターニョス中央選挙委員会委員長 |
2010年10月 | メロ高等教育科学技術相 |
2011年10月 | ロドリゲス青年相 |
2012年7月 | ヒメネス農務相 |
2016年11月 | トリビオ農地庁長官 |
2018年6月 | ガルシア観光相 |
2019年1月 | バルカセル青年相 |
2019年3月 | ゲレーロ財務相 |
2019年10月 | ガルシア・デ・バルガス外相夫人(即位の礼) |
2022年9月 | ヌニェス外務省官房長(国葬儀) |
2023年4月 | ペーニャ副大統領 |
7 二国間条約・取極
- 1957年 査証相互免除取極
- 1985年 青年海外協力隊派遣取極
- 2006年 技術協力協定
8 議員交流
- 2000年 日本・ドミニカ共和国友好議員連盟設立