カンボジア王国

カンボジア情勢と日・カンボジア関係

平成28年6月3日

カンボジア情勢

1 歴史

(1)9-13世紀のアンコール王朝期にはインドシナ半島の大半を統治し、アンコール遺跡に代表される大規模な石造建築を誇ったが、14世紀以降にタイ・ベトナム双方からの侵入により国力は衰え、19世紀末にフランス保護領「カンボジア王国」となった。1945年3月に日本軍がフランスの武装解除を行った。

(2)1953年にカンボジア王国(シハヌーク国王)として独立し、1960年代には平和を保っていたが、1970年のクーデター・親米クメール共和国の樹立の後に内戦が始まった。

(3)1975-79年に全土を実効支配した親中クメール・ルージュ政権・民主カンボジア(ポル・ポト首班)時代に、飢餓と処刑により、100万人とも200万人とも言われる国民(当時の人口は5~600万人)が死亡した。

(4)1979年から約10年間、ベトナム及びソ連の支援を受ける「カンプチア人民共和国」(ヘン・サムリン政権)と、中国支援のポル・ポト派と西側支援の二派(シハヌーク派、ソン・サン派)から成る民主カンボジア(三派)連合政府による内戦が継続した。

(5)1990年代に入り、冷戦構造の崩壊もあって和平への機運が高まり、1991年に和平協定が署名され、1992年のUNTAC暫定統治、1993年の総選挙を経て同年に新生カンボジア王国が誕生した(シハヌーク国王が再即位)。

(6)和平達成後、新政権の内部対立により1997年に武力衝突も発生したが、1998年、2003年、2008年、2013年と総選挙が実施され、与党人民党の長期政権が継続している。一方で、2013年の総選挙で、野党が躍進し、貧富の格差や汚職など長期政権の弊害による国民の不満が顕在化した。

2 政治体制

(1)政体:国王を元首とする立憲君主制(シハモニ国王:2004年即位)

(2)立法:二院制

 ア 上院:
  定数61、任期6年 人民党46、サム・ランシー党11、その他4

 イ 国民議会(下院):
  定数123、任期5年 人民党68、救国党55

(3)行政:議院内閣制。首相の下に、閣僚評議会及び28省1庁。
 首相:フン・セン(旧プノンペン政権下(1985年1月)から数え、30年間首相在職)。

(4)司法:三審制。その他軍事裁判所、クメール・ルージュ特別法廷あり。

(5)地方:「首都/州」「市/郡/区」「村/地区」の3層構造。村/地区の議員は公選制。

3 最近の政治情勢

(1)内政

 ア フン・セン首相率いる人民党が安定政権を維持してきたが,2013年7月28日の国民議会選挙で野党救国党が躍進。野党は,再選挙等を求めて国会をボイコットし,断続的にデモを行った。与野党間で協議を継続した結果、2014年7月22日に政治合意達成、8月8日に野党は昨年の議会選挙後初めて国民議会に参加した。2015年に入り,救国党員によるカンボジア・越間の国境問題をめぐる対政府与党批判の活発化により,与野党関係が悪化。10月26日に救国党議員2名に対する暴力事件が発生,10月30日にケム・ソカー国民議会第一副議長が与党人民党の動議により解任された。11月13日,サム・ランシー救国党党首に対する逮捕状が発出され、海外滞在中であった同党首は帰国しない状況が続いている。一方、政府は2016年4月に,内閣改造を行った。

 イ 2013年9月に策定された「四辺形戦略」(第三次)に基づき諸改革を標榜。「良い統治」のための4つの課題:汚職撲滅・司法制度改革・行政改革・治安機構改革、4つの重点開発分野:農業・民間セクター・インフラ整備・人材育成

 ウ 2006年7月にクメール・ルージュ裁判特別法廷が設置。2007年に5名の被疑者が勾留された。2012年2月に最高審が第一事案(ドゥイッ元収容所長)の最終判決(終身刑)を下した。また2011年6月に第二事案(元KR最高幹部4名)の審理が開始し、2014年8月7日、初級審が第二事案第1セグメントに関し、2名の被告に対して終身刑の判決を下した(同2名は上訴。他の2名については、1名は2013年に死亡、もう1名は2012年に痴呆症のため裁判不適合となった後2015年に死亡。)。現在、第二事案第2セグメントに関する初級審の証拠審理が行われている。日本は当初より積極的に関与、これまでに経費の約35%を拠出、上級審判事(2013年で退任)、捜査分析官や広報官(2014年退任)に日本人が就任。

(2)外交

 ア 中国との関係:要人往来(2009年習近平国家副主席、2010年呉邦国全人代委員長、2011年周永康政治局常務委員等、2012年胡錦涛国家主席(国賓)、2012年梁光烈国防部長、2012年賀国強政治局常務委員、2012年シハヌーク前国王の遺体搬送に付き添い戴秉国国務委員が訪問、2013年王毅外相、2014年楊潔チ国務委員、2015年常万全国防部長等。フン・セン首相は毎年1回は訪中。)、投資(累積第一位)、援助(大規模インフラ等の借款が中心)などで近年急速にプレゼンスを増大。

 イ タイとの関係:2008年のプレアビヒア寺院の世界遺産登録を機に、国境問題が顕在化。2011年2月上旬に大規模な武力衝突が発生し、ASEANは停戦、両国へのインドネシア監視員の派遣等を決定(未実施)。他方で、カンボジアはプレアビヒア寺院とその「周辺地域」の帰属を巡り、国際司法裁判所(ICJ)による1962年判決の解釈を求め、2013年11月11日、判決が下された。判決では、係争地全体についての判断は示されなかったが、寺院が建っている岬がカンボジア領であることが確認された。その後、両国間の協議は進んでいないものの、情勢は安定している。

 ウ 米国との関係:2010年10月にクリントン国務長官が訪問。今後関与を深める方向(人権・民主主義の問題,軍事交流など)。貿易面では米国が最大の輸出相手国(縫製品)。2012年11月にはASEAN関連首脳会議出席のためオバマ大統領が訪問。2016年2月,米ASEAN特別首脳会議出席のため,フン・セン首相が米国を公式訪問。

 エ ベトナムとの関係:フン・セン政権母体の人民党とベトナムは伝統的友好関係にある。近年、航空(カンボジア・アンコール航空)、電気通信(Metfone)、銀行、ゴム栽培、農業などでベトナムからの投資増加。2015年に入り、救国党員による二国間の国境問題をめぐる政府批判や抗議活動が活発化したものの、政府間関係は比較的安定している。

 オ ASEAN:2012年、2回目のASEAN議長国を務め、2015年ASEAN共同体構築・加盟国間の開発格差是正等の推進・加速を提唱。議長国「カ」は、南シナ海問題等で中国寄りの立場を取り、7月の関連外相会議また11月の関連首脳会議では南シナ海問題を巡り、比・越はじめ各国と対立。カンボジアは2015年8月の関連外相会議までASEAN対日調整国を務めた。

 カ ロシア:2015年、メドベージェフ首相がカンボジアを公式訪問。

 キ その他:国連PKOに地雷処理部隊や工兵部隊を派遣(現在、南スーダン、レバノン、マリ、中央アフリカに派遣中)。

4 最近の経済情勢

(1)概況:1人あたりGDPは1,140ドル(2015IMF推計値)。過去10年間の平均経済成長率は7%を超える。

(2)貿易:輸出は年間約77億ドル(2014)。米国等向けの縫製品が最大の輸出品。輸入は年間約105億ドル(2014)。織物、石油製品、車両など。

(3)投資:1994年~2014年までの累計認可額トップは中国(リゾート開発, 水力発電)2位は韓国(不動産)。セクター別では観光業が投資額の4割。次いで、工業、サービス、農業等。

(4)財政:国家予算の約3割を外国支援に依存。税収拡大による歳入増加が課題。

(5)産業:農業(GDPの31%)、工業(27%)、サービス業(42%)。

(6)資源・エネルギー:石油・天然ガス及び銅等を探鉱。商業ベースの生産は未実施。電化率は約6割。高額な電気料金(近隣国の約2倍)。

(7)経済協力
 2013年の各国からの援助額は約15億ドル。贈与が約7割、借款が約3割。分野面では社会経済基盤整備(農業・農村、運輸、電力、水)、社会セクター(保健、教育)及びガバナンス分野。

日・カンボジア関係

1 歴史・外交

(1)江戸時代初期には日本人町が形成。アンコールワットに日本人による墨書がある。

(2)1951年カンボジアは,サンフランシスコ平和条約に署名。1953年に外交関係を樹立、1954年にカンボジアは対日賠償請求権を放棄。1955年にシハヌーク国王が国賓として訪日、同年友好条約に署名。

(3)1990年6月日本政府、カンボジア和平に関する東京会議を開催。1992-93年国連カンボジア暫定機構UNTAC(代表:明石康氏)の枠内で日本初のPKO派遣(自 衛隊、文民警察、選挙監視団)を実施。

(4)1975年に閉鎖した大使館を1992年に再開、2002年に現在の建物に移転。

(5)2000年1月 小渕総理が訪問。

(6)2001年6月 秋篠宮同妃両殿下が御訪問。

(7)2002年11月 小泉総理、ASEAN関連首脳会議出席のため訪問。

(8)2010年5月16-20日 シハモニ国王国賓訪日

(9)2012年6月27-29日 皇太子殿下がカンボジアを公式に御訪問。

(10)2012年7月ASEAN関連外相会議、8月日・ASEAN経済大臣会議、11月ASEAN関連首脳会議に出席のため、それぞれ玄葉外相、枝野経産相、野田総理が訪問。

(11)2013年2月故シハヌーク前国王の葬儀出席のため秋篠宮殿下が御訪問。

(12)2013年11月 安倍総理が訪問。

(13)2013年12月 フン・セン首相訪日の際に、両国関係を戦略的パートナーシップに格上げ。

(14)2014年4月 茂木経産相が訪問。

(15)2014年6月 岸田外務大臣が訪問。

(16)2014年8月 太田国交相が訪問。輿石参議院副議長が訪問。

(17)2015年3月 フン・セン首相が訪問(国連防災世界会議出席のため)

(18)2015年7月 フン・セン首相が訪問(日メコン首脳会議出席のため)

(19)2015年6月 チア・シム上院議長葬儀出席のため、塩谷総理特使が訪問。

2 経済・経済協力

(1)貿易:日本からカンボジアへの輸入は2.5億ドル(2014年:車両、機械類、肉)。カンボジアから日本への輸出は7.7億ドル(2014年:衣類及び付属品、靴等、電気機 器及び付属品等)。

(2)投資:対カンボジア直接投資額に占める日本からの投資額の割合は1%以下と低調であったが、中国・ベトナムなどの投資環境の変化により、2010年から製造業の進出が開始された。これまでの商社、建設会社などODA関連企業に加え、電子機器、自動車部品、縫製などの輸出加工企業の進出、また政治・治安の安定を好感し、小売業大手、ホテル、植林、鉱物資源探査などの企業が進出を決定。メガバンクも駐在員事務所を設立した。カンボジア日本人商工会加盟の日系企業は16年3月時点で217会員(正172・準会員45)。

(3)経済協力:1992年以降、日本はトップドナー(支援総額の16%)。戦後復興・人材育成・制度整備の支援からスタートし、現在はインフラ、農業、教育、保健、ガバナンス分野を中心に支援している。

3 文化・交流

(1)遺跡保存修復

 1993年に東京でアンコール遺跡救済国際会議を開催以降、毎年開催されるICC(アンコール遺跡保存開発国際調整委員会)の共同議長を仏と共に務めている。2013年12月にアンコールに関する第3回政府間会議がカンボジアのシアムリアップにおいて開催され(第1回は1993年東京、第2回は2003年パリ)、今後10年のアンコール遺跡保存開発に関する方向性が議論された。「アンコール宣言」および「勧告」という2つの文書が採択された。1994年よりJSA(日本政府アンコール遺跡救済チーム)を通じ保存修復活動中。また、アンコール・ワット西参道の修復のための機材を支援しており、2016年より工事が行われる。

(2)人的交流

 ア 在カンボジア在留邦人数は2,522人(うちプノンペン在住者1,899人(2016年2月(在留届ベース)))。近年は年約20%の増加。また、2015年は19万401人の日本人が来訪。
 イ 在日カンボジア人数は6,111人(2015年12月入管統計)。

(3)文化交流

 毎年2月下旬に、当国最大の日本紹介イベント「日カンボジア絆フェスティバル」を開催。2016年2月のフェスティバルにおいては、延べ約1万8千人の観客を動員し、日本の伝統・現代文化、音楽、ダンス、食文化、スポーツ等を紹介。

(4)留学生1992年以降日本が受け入れたカンボジア人国費留学生は1,000名以上に上っている。

参考

〈対カンボジア経済協力実績〉
(億円)
年度 円借款 無償資金協力 技術協力 合計
2008年度 35.13 53.11 39.78 128.02
2009年度 71.76 106.61 44.46 222.89
2010年度 0 107.52 38.94 146.46
2011年度 114.30 65.22 42.67 230.33
2012年度 0 66.55 37.1 103.65
2013年度 88.52 74.58 39.4 202.50
2014年度 368.09 88.27 39.45 495.81

(注)金額は、円借款及び無償資金協力は原則として交換公文ベース、技術協力はJICA経費実績ベース。

〈2016年度実施中の主な対カンボジア経済協力案件〉
重点分野1:経済基盤の強化
案件名 スキーム 金額(億円)
国道1号線改修計画(4期・都心区間) 無償 15.85
国道5号線改修計画(バッタンバン-シソポン間) 有償 88.5
国道5号線改修計画(南区間:プレッククダム・スレアマアム間(第1期)) 有償 16.99
国道5号線改修計画(南区間:プレッククダム・スレアマアム間(第2期)) 有償 172.98
国道5号線改修事業(中央区間:スレアマアム・バッタンバン間,シソポン・ポイペト間 有償 192.08
チョルイ・チョンバー橋改修計画 無償 33.43
シハヌークビル港多目的ターミナル整備計画 有償 71.76
トンレサップ西部流域灌漑施設改修計画 有償 42.69
プノンペン南西部灌漑・排水施設改修・改良計画 有償 56.06
重点分野2:社会開発の促進
案件名 スキーム 金額(億円)
シェムリアップ上水道拡張整備計画 有償 71.76
コンポンチャム及びバッタンバン上水道拡張計画 無償 33.55
第三次プノンペン市洪水防御・排水改善計画 無償 37
スバイリエン州病院改善計画 無償 10.77
国立母子保健センター拡張計画 無償 11.93
第二次地雷除去活動強化計画 無償 8.98
重点分野3:ガバナンスの強化
案件名 スキーム 金額(億円)
民法・民事訴訟法普及プロジェクト 技プロ 5.5
ジェンダー主流化プロジェクトフェーズ2 技プロ 5.3
租税総局能力強化プロジェクトフェーズ2 技プロ 2.8

〈日本の対カンボジア投資額〉

(出典:カンボジア開発評議会(CDC)、QIP認可ベース。SEZへの投資を含む。)

2015年:  57百万ドル(病院、自動車部品、コネクタ等)

2014年: 48百万ドル(建具、かつら、縫製、のし袋)

2013年: 92百万ドル(自動車部品、医薬品、縫製、時計部品等)

2012年: 278百万ドル(ショッピングモール等)

2011年: 133百万ドル(自動車部品、電子機器、縫製、ワイヤーハーネス等)

〈対カンボジア投資総額に占める日本の順位〉

(出典:カンボジア開発評議会(CDC)、QIP認可ベース。)

2015年:(6位) (1位:中国 2位:英国)

2014年:(5位) (1位:中国 2位:香港)

2013年:(9位) (1位:中国 2位:ベトナム)

2012年:(13位) (1位:中国 2位:韓国)

2011年:(9位) (1位:英国 2位:中国)

〈カンボジア貿易額:輸出〉〈カンボジア貿易額:輸入〉
(出典:IMF[Direction of Trade Statistics]

2015年:11,891百万ドル   18,946 百万ドル

2014年:10,787百万ドル   17,527百万ドル

2013年: 9,243百万ドル    9,217百万ドル

2012年: 7,838百万ドル    7,062百万ドル

2011年: 6,702百万ドル    6,141百万ドル

主要輸出相手国:米国、英国、ドイツ、日本、カナダ

主要輸入相手国:タイ、中国、ベトナム、香港、シンガポール

(注)日本はカンボジアの輸出の7%、輸入の2%を占めている。輸出相手国としては、第4位(2015年)、輸入相手国としては第10位(2015年)。(出典:IMF[Direction of Trade Statistics])


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