ボリビア多民族国

基礎データ

令和7年4月23日
ボリビア多民族国国旗

一般事情

1 面積

110万平方キロメートル(日本の約3倍)

2 人口

1,224万人(2023年、世銀)

3 首都

ラパス(憲法上の首都はスクレ)

4 民族

先住民41%、非先住民59%

5 言語

スペイン語及びケチュア語、アイマラ語を中心に先住民言語36言語

6 宗教

国民の大多数(95%以上)はカトリック教徒

7 略史

年月 略史
1825年 スペインより独立
1964年~1982年 軍事政権
1982年~1985年 シーレス・スアソ大統領(民政移管)
1985年~1989年 パス・エステンソロ大統領
1989年~1993年 パス・サモラ大統領
1993年~1997年 サンチェス・デ・ロサダ大統領
1997年~2001年8月 バンセル大統領
2001年~2002年 キロガ大統領
2002年8月~2003年10月 サンチェス・デ・ロサダ大統領
2003年10月~2005年6月 メサ大統領
2005年6月~2006年1月 ロドリゲス大統領
2006年1月~2019年11月 モラレス大統領
2019年11月~ アニェス暫定大統領
2020年11月~ アルセ大統領

政治体制・内政

1 政体

立憲共和制

2 元首

ルイス・アルベルト・アルセ・カタコラ大統領(H.E. Luis Alberto Arce Catacora

3 議会

二院制(上院36名、下院130名)

4 政府

(1)副大統領
デビッド・チョケワンカH.E. Mr. David Choquehuanca Céspedes
(2)首相
なし
(3)外相
セリンダ・ソサ・ルンダ(H.E. Ms. Celinda Sosa Lunda

5 内政

 ボリビアは、1982年に民政移管を達成した後、民主化・市場経済化に向けた改革を推進してきたが、市場経済化に伴う貧困や貧富の格差問題の悪化を背景として、先住民を中心とする反政府運動が頻発化した。

 2005年12月、大統領選を含む総選挙が前倒し実施され、左派のモラレス社会主義運動(MAS)党候補が当選し、2006年1月に就任。ボリビア史上初の先住民出身大統領となった。モラレス大統領は、貧富格差の是正、先住民の権利拡大を掲げ、新憲法制定の実現を目指すとともに、米国主導の麻薬撲滅政策や急速な経済自由化に強く反対し、天然資源による収益のボリビア国民への一層の還元を主張。2006年5月には、炭化水素資源(天然ガスが中心)の「国有化」に係わる最高政令を発出した(実際には、株式の過半数取得を通じ、生産・輸送・精製・販売・価格決定に関する国家管理を強化する内容)。

 2009年2月、同年1月の国民投票の結果を受け、先住民の権利拡大、地方分権推進、農地改革・土地所有制限、天然資源の国家による所有等を定めた新憲法が発布された。新憲法発効に伴い、2009年3月、国名を「ボリビア共和国」から「ボリビア多民族国」に変更した。

 2010年1月、モラレス大統領の第二期新政権(任期5年)が発足し、2015年1月には、モラレス大統領第三期(現行憲法下では第二期)政権が発足した。2016年2月、モラレス大統領の再々選を可能とするための憲法改正の是非を問う国民投票が実施され、僅差で否決された。2017年9月、MAS党は憲法裁判所に対し、大統領、副大統領、国会議員、県知事等の再選禁止に係る憲法及び選挙法の条項は米州人権条約に違反するとして違憲であると申立て、同年11月、憲法裁判所は違憲申立てを認める判決を下し、大統領職ほかの無期限再選が可能となった。

 2019年10月20日に実施された大統領選挙では、最高選挙裁判所により、モラレス大統領の当選が発表されたが、開票手続きにおける不正の疑いを契機として、国内各地で抗議活動が激化した。同年11月10日、同大統領及びガルシア・リネラ副大統領は辞任を表明し、同12日、右派のアニェス暫定大統領が就任し、13日に暫定政権が発足した。

 2020年10月18日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う数度の延期の後、やり直しの大統領選挙が行われた結果、モラレス政権で経済・財務大臣を長らく務めたMAS党のアルセ候補の当選が確定し、11月8日、大統領に就任(任期は5年)。1年ぶりに左派政権に回帰した。アルセ政権は、新型コロナウイルス感染症対策や経済活性化に注力し、特にエネルギー、リチウム及びバイオディーゼルプラント建設を始めとする輸入代替産業の強化を目指すとしている。

外交・国防

1 外交基本方針

 近隣諸国及び米国をはじめとする先進諸国との関係強化が従来ボリビア外交の基本であったが、モラレス政権の下、対米関係、地域統合等に関し路線変更(FTAAへの消極的対応、ベネズエラやキューバへの接近)が行われたほか、新たなパートナー(イラン、中国、ロシア等)との関係を強化している。

 対米関係では、2008年9月に駐ボリビア米国大使を国外追放し、これに伴う米国のボリビアに対するアンデス貿易促進麻薬根絶法(ATPDEA)適用停止決定により、二国間では緊張関係が続いている。2011年11月、両国は国交正常化に向けた枠組協定に署名し、2013年1月には、米国政府が新駐ボリビア大使へのアグレマン付与を申請していることが明らかになったが、アグレマンは付与されず、逆に5月1日にはボリビア政府は「尊厳を国有化する」として米国国際開発庁(USAID)の追放を発表。米国政府は、5月23日に米国国務省麻薬対策局(NAS)のボリビア国内の事務所の閉鎖を発表した。

 チリとの間では、1879年のチリとの太平洋戦争に起因する「海への出口」問題を巡って外交関係は存在しない(領事関係のみ)。

 ボリビアは、アンデス共同体(CAN)加盟国であるものの、2012年12月に開催されたメルコスール首脳会合において、メルコスールへの正式加盟を目的とする加入議定書に署名し、2021年現在、ブラジルの国会承認を待っている状況である。

 懸案であった「コカ葉の咀嚼」の承認を求めて、2011年12月、麻薬単一条約から一度脱退し、関連部分に留保を付した上で再加入を申請。期限である2013年1月10日までに15か国のみが異議申し立てを行い、留保付き再加入は承認され、ボリビア外交の大きな目標のひとつが達成された。

 2014年1月、ボリビア政府は、G77+中国の議長国に就任し、同年6月にサンタクルス県において首脳会合を開催し、「サンタクルス宣言」が採択された。2015年10月、気候変動及び生命防衛に関する世界人民会議、2017年6月、移民問題に関する世界人民会議を主催(コチャバンバ県開催)。

 2018年4月、南米諸国連合(UNASUR)の議長国に就任。2019年、CELAC議長国に就任。2019年11月、モラレス大統領の辞任・亡命により発足した右派のアニェス暫定政権は、ベネズエラとの外交関係断絶、ボリバル代替同盟(ALBA)からの脱退を発表し、また、UNASURからの脱退宣言、米国及びチリとの関係を改善することを発表したが、2020年10月に実施された大統領選挙では左派が勝利し、11月に発足したアルセ政権は、政権発足直後に、ベネズエラとの国交回復、ALBA・UNASUR脱退取り消しを表明し、モラレス元政権下の外交方針へ回帰している。

2 軍事力

(1)予算
約4億8,100万ドル(ミリタリーバランス2023)
(2)兵役
徴兵制
(3)兵力
34,100人

(ミリタリーバランス2024)

経済(単位 米ドル)

1 主要産業

天然ガス、鉱業(亜鉛、銀、鉛、錫)、農業(大豆、砂糖、トウモロコシ)

2 GDP(名目)

451億米ドル(2023年、世銀)

3 一人当たりGDP

3,686米ドル(2023年、世銀)

4 GDP成長率

3.1%(2023年、世銀)

5 物価上昇率

9.97%(2024年12月、国家統計局)

6 失業率

3.0%(2023年、世銀)

7 総貿易額

(1)輸出
109.11億米ドル(2023年、国家統計局)
(2)輸入
114.96億米ドル(2023年、国家統計局)

8 主要貿易品目(2024年国家統計局)

(1)輸出
天然ガス、亜鉛、金(地金)、大豆、銀
(2)輸入
自動車・自動車部品、燃料・潤滑油、工業用品

9 主要貿易相手国(2024年国家統計局)

(1)輸出
ブラジル、インド、中国、アルゼンチン、コロンビア、米国
(2)輸入
中国、ブラジル、アルゼンチン、チリ、米国

10 通貨

ボリビアーノス

11 為替レート

1米ドル=6.86ボリビアーノス(2025年2月)

12 経済概況

 ボリビアは、農業(大豆、砂糖等)、天然資源(金、亜鉛、鉛、銀、天然ガス等)を中心とする一次産品への依存度が総輸出の約8割を占め、国際価格の影響を受けやすい経済構造。2011年以降は、固定為替相場制を採用しており、1米ドル=6.86ボリビアーノスのレートが維持されている。

 1980年代からの経済危機により、1999年以降も貧富の格差や失業問題等が深刻化した。財政難の打開のため、天然ガス輸出を推進し、2005年5月、政府は天然ガス関係外資企業に対しより高率の税を課す、新炭化水素法を採択。これにより歳入は大幅に増大し、財政収支が黒字に転換した。さらに2000年代初頭から2014年まで国際資源価格の高騰により、安定した経済成長、外貨準備高増大等のマクロ経済面での健全化が達成された。しかし、2014年後半以降天然ガス(輸出額の40%以上を占める)の国際価格急落と生産量の低下により、資源収益の減収や公共支出の増加による財政赤字が問題化した。

 これを受け、政府は、借款増加による多額の公共投資の維持、国内産業の多角化、外国投資の積極的誘致等の政策を進めた。2020年10月のアルセ政権樹立後もモラレス元政権の経済モデルは引き継がれているが、鉱物資源の輸出金額低下により、モラレス元政権時のような歳入額とはなっていない。

 リチウム開発に関して、2021年と2024年にこれまで2回の国際公募を実施。2024年12月、ボリビア政府はドイツ、フランス、オーストラリア、アルゼンチンの企業とリチウム工業化と生産技術の応用に関する調査実施に向けた協定に署名。一方で、いずれも中期・長期的なプロジェクトであり、短期的に財源を確保するには対外債務と対内債務に頼らざるを得ない状況が続いている。

 天然ガスによる外貨収入の減少により、国際準備高が減少し続けており、2024年末時点で19億7千万米ドル、そのうち95%は金での保有となっているほか、対外債務・対内債務も膨らみ続けている。また、燃料不足の常態化や米ドル不足による輸入製品の価格高騰により、補助金政策によって抑制されていたインフレ率も上昇し始め、2024年のCPI(消費者物価指数)は9.97%に上った。アルセ政権はさらなる公共投資の実施に向け、輸入代替強化(バイオディーゼルプラント、製鉄所建設等)及びリチウム開発に注力している。

 その他、2024年8月にボリビアは南米南部共同市場(メルコスール)に正式加盟したほか、同年10月にはBRICS「パートナー国」への加盟を発表している。

13 対外債務

134.3億米ドル(2024年5月 ボリビア中央銀行)

経済協力

1 日本の援助実績(2022年度迄の累計)(政府開発援助(ODA)国別データブック2023)

  • (1)有償資金協力 1,260.06億円(E/Nベース)
  • (2)無償資金協力 990.33億円(E/Nベース)
  • (3)技術協力実績 777.89億円(JICA実績ベース)

2 二国間主要援助国(2021年)(DAC集計)

  • (1)フランス(151,200,000万米ドル)
  • (2)スペイン(43,410,000万米ドル)
  • (3)ドイツ(39,790,000万米ドル)
  • (4)スウェーデン(31,840,000万米ドル)
  • (5)スイス(25,250,000万米ドル)

二国間関係

1 政治関係

 1914年4月13日、通商条約の締結により外交関係樹立。1942年、ボリビアが第2次世界大戦に参戦し、外交関係が途絶、1952年12月20日外交関係再開。

 日本人移住者・日系人の活躍、日本政府の積極的な経済技術協力の実施等により良好な友好協力関係にある。2014年は外交関係樹立100周年にあたり、石原外務大臣政務官(当時)出席の下、記念式典が実施された他、多くの記念文化事業を実施。また、2019年には日本人ボリビア移住120周年を迎え、眞子内親王殿下がボリビアを訪問し、記念式典等に御臨席。2024年には、外交関係樹立110周年及び日本人ボリビア移住125周年を迎え、両国において関連行事が開催された。

2 経済関係

(1)対日貿易
(ア)対日貿易額(2024年、日本財務省貿易統計)
輸出 130億円
輸入 448億円
(イ)主要品目
輸出 自動車・自動車部品、機械等
輸入 亜鉛、鉛、錫等
(2)日本からの直接投資
なし(2023年、ボリビア中央銀行)

3 文化関係

 ラパス市及びサンタクルス市を中心に日本文化紹介事業を開催している。文化無償・草の根文化無償を数年に1件程度実施。毎年2名程度の研究留学生を日本に送り出している。

4 在留邦人数・日系人

  • 在留邦人数 2,623人(2024年10月)(外務省「在留邦人数調査統計」)
  • 日系人 約1万3千人(推定)

5 要人往来

(1)往(1993年以降)
年月 要人名
1993年 林屋永吉元駐ボリビア大使(特派大使)
1995年 清子内親王殿下
1997年 松永信雄政府代表(特派大使)
1999年 清子内親王殿下(移住100周年記念式典)
山下徳夫衆議院議員(移住100周年記念式典)
2001年 江田五月衆議院議員(麻薬サミット)
佐々木知子参議院議員(麻薬サミット)
2002年 今村雅弘外務大臣政務官
自見庄三郎衆議院議員(特派大使)
2004年 稲嶺恵一沖縄県知事
西銘順志郎参議院議員
(オキナワ移住地入植50周年祭)
2006年 有馬龍夫政府代表(特派大使)
2007年 西村康稔衆議院議員
大塚拓衆議院議員(日本・ボリビア友好議員連盟)
2009年 常陸宮同妃両殿下(移住110周年記念式典)
2010年 吉良州司外務大臣政務官(特派大使)
高橋千秋経済産業大臣政務官
内藤正光総務副大臣
2011年 田嶋要経済産業大臣政務官
2013年 西村康稔内閣府副大臣
2014年 石原宏高外務大臣政務官(外交関係樹立100周年記念式典)
高良沖縄県副知事(オキナワ移住地入植60周年記念式典)
2015年 西村康稔内閣府副大臣(特派大使)
宇都隆史外務大臣政務官
2017年 武井外務大臣政務官
2018年 佐藤外務副大臣
鈴木スポーツ庁長官
2019年 眞子内親王殿下(移住120周年記念式典)
2023年 秋本外務大臣政務官
(2)来(1990年以降)
年月 要人名
1990年 オシオ・サンヒネス副大統領
パス・サモラ大統領(即位の礼)
フォルトゥン無任所相
ガルシア企画調整相
1991年 ガルシア企画調整相
バルダ上院議長
パス・サモラ大統領(公式実務訪問)
イトゥウルデ外相
ドリア・メディーナ企画調整相
ブランコ蔵相
1994年 アラニバル外相(外務省賓客)
1995年 コシオ蔵相
レヴォージョ資本化政策担当相
アラニバル外相(リオ・グループトロイカ外相会合)
ビジャロボス経済開発相(アンデス開発公社セミナー)
1996年 サンチェス・デ・ロサダ大統領(実務訪問賓客)
アラニバル外相(外務省賓客)
1998年 ナヤル内相、ミリャーレス蔵相
1999年 ムリーリョ外相(外務省賓客)
2005年 シーレス外相(外務省賓客)
メサ大統領(IDB沖縄年次総会)
2006年 チョケワンカ外相(JETRO招聘(三ヵ国展出席))
2007年 モラレス大統領(実務訪問賓客)、キンタナ大統領府相
2008年 エチャス鉱業・冶金相(JOGMEC招待)
2010年 モラレス大統領(公式実務訪問賓客)、アルセ経済・財務相
2012年 アルセ経済・財務相、カロ開発企画相(IMF・世銀東京総会)
2013年 チョケワンカ外相、アチャコジョ農村開発・土地相(キヌア展)
サモーラ環境・水資源相(水銀に関する水俣条約外交会議)
2015年 ガルシア・リネラ副大統領
2016年 アルラルデ外務次官
2017年 モンターニョ・スポーツ相

6 二国間条約・取極

  • 1956年 移住協定
  • 1977年 青年海外協力隊派遣取極
  • 1978年 技術協力協定
  • 2019年 外交・公用査証免除措置
  • 2023年 税関相互支援協定
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