4. 日本の国際協力の重点事項

  日本は当面、国際協力の実施にあたり、以下の重点事項への取組を重視していく方針です。
(1)環境・気候変動への取組
(2)開発途上国の経済成長と日本の経済的繁栄の実現
(3)民主化定着・市場経済化支援
(4)平和の構築・テロとの闘い
(5)人間の安全保障の確立
(海外経済協力会議(注3)における審議等を踏まえて外務省が策定した「平成19年度国際協力重点方針・地域別重点課題(注4)」が定める優先課題としての重点事項)

(1) 環境・気候変動への取組
  地球温暖化問題は、人類が直面する一刻の猶予も許されない課題です。地球温暖化の主な原因である温室効果ガスの排出に最も責任のない後発開発途上国の住民が、地球温暖化による気候変動に対して最もぜい弱である点を考えると、大量排出国が率先して取り組むことが求められます。日本は気候変動対策の国際的な枠組みづくりに積極的に貢献するとともに、その実効性ある枠組みへのすべての主要排出国の参画を得ることと、日本の得意分野である省エネルギーなどの技術をいかして、環境保全と経済発展を両立させることとを重視しており、そのために政府開発援助を戦略的に活用していく方針です。また、温室効果ガスの排出量削減や森林保全、温暖化の影響を受けやすい地域の適応対策、クリーンなエネルギーの利用促進などに対する支援を行っていく方針です。

→ 第3節のこちらも参照してください

(2) 開発途上国の経済成長と日本の経済的繁栄の実現
  政府開発援助を活用し、開発途上国の経済成長へ貢献することを通じて、日本の経済的繁栄を実現するとの観点も重要です。日本は資源や食料の多くを海外からの輸入に依存しているので、それらの安定的な供給を可能とする国際環境の維持と日本の製品の輸出や企業の進出を更に促進する国際経済体制が重要です。近年は、中国、インドなど経済成長の著しい新興諸国が台頭するなど、経済面での新たな構造変化が顕著であり、このような中、日本経済の繁栄の基盤を強固にするために政府開発援助を活用することを重視しています。日本の民間企業が開発途上国において展開する資源・エネルギー開発事業を、政府開発援助を活用して支援することも重要です。また、日本は、既にメキシコ、マレーシア、チリ、タイ、フィリピン、インドネシア(注5)等と経済連携協定を署名または締結し、ベトナム、インド等とも交渉を行っています。これらの国との経済連携を進めるため、人材育成や中小企業支援などの分野で、日本の政府開発援助を活用した協力が期待されています。

→ 第2節のこちらも参照してください

(3) 民主化定着・市場経済化支援
  日本の現在の豊かさの背景には、自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済などの「普遍的価値」を培ってきたことがあります。日本は、民主化や市場経済化を進める国々と対話を強化するとともに、各国の発展段階に応じ、基礎生活分野、インフラ整備、民主化定着・市場経済化支援、法制度整備等の支援を引き続き推進していく方針です。

→ 第2章第2節のこちらも参照してください

  2006年11月、麻生太郎外務大臣(当時)は政策スピーチ「自由と繁栄の弧をつくる─拡がる日本外交の地平─(注6)」においてこうした方針を明らかにしました。

(4) 平和の構築・テロとの闘い
  紛争やテロは、個人の生命に対する直接の脅威です。大量の難民・避難民を発生させる武力紛争は、「人間の安全保障」に対する重大な脅威であるとともに、長年の開発努力を瞬時に失わせ、膨大な経済的損失をもたらします。テロは国境を越えて起こり、開発途上国のみならず、先進国を含めた国際社会全体に直接影響を及ぼす地球的規模の問題です。日本は人道危機対応への支援やテロ対処能力向上支援のほか、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR)、小型武器回収、地雷対策、ガバナンス改善等、紛争後の平和の定着や国づくりに資する事業へ取り組み、平和の構築やテロとの闘いに貢献していく方針です。

第II部「テロ・海賊」および「平和の構築」も参照してください

(5) 人間の安全保障の確立
  生まれた国や地域がどこであろうとも、人間はすべて、健康で尊厳があり充実した人生を生きる資格があります。そのためには、様々な脅威に直面する開発途上国の人々を保護するのみならず、それらの人々が脅威に自ら対処することができるよう十分な水準までその能力を高めることが必要です。日本は、このような考えに基づき、国際場裡において、「人間の安全保障」への取組を開発援助の重要な柱とすることに主導的な役割を果たし、また国連に「人間の安全保障基金」を設置しました。日本は、開発途上国の地域の市民社会の強化等を通じて、「人間の安全保障」の確保に取り組む方針です。

→ 第2章第3節のこちらも参照してください


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