外交青書

わが外交の近況

 

1991年版(第35号)

 

外務省

1991年版外交青書の刊行に当たって

 

 90年8月のイラクによるクウェイト侵略に始まった湾岸危機は、国連を中心とした国際社会の一致団結した行動により終結を見ました。また、89年に東欧諸国で始まった民主化の動きは多くの国に及び、今やソ連においても共産主義支配の崩壊という歴史的な変革が起こるに至っております。戦後の国際社会を規定してきた冷戦構造は終わりを迎えましたが、他方、新しい国際秩序はまだ明確な姿を現わしてはおりません。また、国家間や民族間の紛争や対立を始め、貧困、抑圧、地球環境の悪化など、国際社会は依然として不透明な課題を抱えております。私達は、国際協調の下にこれらの課題を克服し、新しい国際秩序を築き上げていかなければなりません。

 このような中で、日本はこれからの国際秩序の根本にかかわるいずれの問題に関しても大きな影響を与える存在となるに至っております。それだけに、日本が自らよって立つ理念を国際社会に明らかにしつつ、普遍的な理想実現するために積極的に行動していくことが重要となっております。

 内政と外交の一体化が進んでいる今日、このように日本が国際社会において国力にふさわしい責任と役割を果たしていくためには、国民の皆様のご支援が以前にも増して重要となっております。この外交青書が国際情勢の推移と日本の外交活動に対する皆様のご理解を深めるお役に立てば、幸甚であります。

1991年12月

外務大臣 渡辺 美智雄

 

 

本 書 の 構 成

 本書は、国際情勢の推移及び日本が行ってきた外交活動の概要について、90年8月から91年7月までの1年間を中心にとりまとめたものである(一部の重要事項についてはその後の動きを含む)。本書は全5章から成り、さらに、資料、付表、年表等を収録している。

 第1章では、国際社会の変化の基調を分析し、転換期にある日本外交の課題について説明している。第2章では、湾岸危機及び危機後の諸問題に対する日本の対応について記述している。第3章では、国際社会が直面している様々な課題とこれらに対する日本の取組について、事項別に説明している。第4章では、世界の各地域ごとに、その地域における情勢の推移と日本の外交活動について記述している。第5章では、政府の外交活動を支える体制について説明している。

 

目    次

 

第1章 変化する国際情勢と日本の外交

第1節 変化の基調

第2節 日本の外交の課題

第2章 湾岸危機と日本の外交

第1節 湾岸危機の発生と収束

第2節 湾岸危機への日本の対応

第3節 湾岸危機後の諸問題への対応

第4節 人質問題

第3章 国際社会における日本の役割

第1節 世界の平和と安定の確保

第2節 世界の繁栄の確保

第3節 人類共通の課題への対応

第4節 国際社会と日本

第4章 各地域の情勢と日本との関係

第1節 アジア・太平洋

第2節 北米

第3節 欧州

第4節 ソ連

第5節 中南米

第6節 中近東

第7節 アフリカ

第5章 外交体制

 

I  資料

II  付表

III 年表

IV 外務省機構図