(1)本計画の内容
ベトナム南部のカマウ省の最貧困地域であるウミンハ地区の林業、農業等に携わる住民の所得向上を図るため、基礎的生活水準確保のためのインフラ整備(生活道路約32km整備、一次医療施設5箇所改修及び医療機材供与、初等学校1校建設及び4校増設等)を行うための資金を供与する。
なお、本計画への支援は、平成18年度より導入し、コミュニティの総合的な能力開発支援を目的とするコミュニティ開発支援無償資金協力案件として実施するものであり、現地仕様に基づく設計及び施工段階における現地業者・資機材の積極的活用を通じ、効率的な援助の実施を目指すものである。
(2)本計画の必要性
貧困地域のひとつメコンデルタ地域の最南端にあるカマウ省ウミンハ地区では、雨期の冠水により生活資源である林産物の成長が阻害される上、乾期に発生する森林火災により森林が焼失することがあり、農民の生活基盤は極めて不安定である。また、道路、教育・医療施設の整備が不十分であることから、同地区の貧困率は、ベトナム全体の貧困率を大幅に上回っている。
更に、同地区では2002年3月に大規模な森林火災が発生し、6,000ha以上の森林消失の他、泥炭土壌の乾燥、農地などへの被害が生じ、地区経済に大きな打撃を与え、た。ベトナム政府は2002年7月に同地区の森林火災跡地復旧事業を開始したが、再造林技術の難易度の高さやコミュニティの貧困状態等により円滑な復旧事業の推進が妨げられていた。
かかる状況下、我が国はベトナム政府から要請のあった技術協力プロジェクト「森林火災跡地復旧計画」を2004年2月から3年間実施したが、同地区の農民の経済的な制約から、技術の普及は未だ一部にとどまっている。
以上のことから、ベトナム政府は森林火災跡地復旧事業とウミンハ地区の貧困削減を推進するため、技術協力で確立された再造林技術の更なる普及と基礎的社会インフラの整備につき、我が国政府に対して無償資金協力を要請してきたものである。
(3)本計画の効果
本計画の実施により、森林公社に対する植林地の造成とそれに必要な機材供与を通じ、同公社の経営基盤が安定化するとともに、同公社による小規模農家の植林地改良、農業の運営改善指導により貧困農民の所得向上が促進される。また、森林火災予防及び対策機器導入により農民の生活資源である森林火災発生件数が減少する。
更に、基礎生活インフラ整備を行うことにより同地区の貧困削減促進が期待される。
(参考) ベトナム社会主義共和国は、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国であり、国土面積約33.2万平方キロメートル、人口は約8,411万人、一人当たりGDPは約715米ドルである。