我が国政府は、バングラデシュ人民共和国政府に対し、「第二次ダッカ市雨水排水施設整備計画」、「モウルビバザール気象レーダー設置計画」及び「人材育成奨学計画」の実施に資することを目的として、総額22億1,300万円を限度額とする無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が6月12日(火曜日)(現地時間、同日)、同国の首都ダッカにおいて、我が方井上正幸駐バングラデシュ大使と先方アミヌル・イスラム・ブイヤン財務省経済関係担当次官(Mr. Aminul Islam Bhuiyan、Secretary、Economic Relations Division、Ministry of Finance)との間で行われた。
(1)「第二次ダッカ市雨水排水施設整備計画」
(The Project for the Improvement of the Storm Water Drainage System in Dhaka City (PhaseⅡ))
9億1,900万円
平成19年度 1億2,500万円
平成20年度 7億9,400万円
(2)「モウルビバザール気象レーダー設置計画」
(The Project for the Establishment of the Meteorological Radar System at Moulvibazar)
10億円
(3)「人材育成奨学計画」
(The project for Human Resource Development Scholarship)
2億9,400万円
平成19年度 3,700万円
平成20年度 1億3,400万円
平成21年度 7,500万円
平成22年度 4,800万円
(各案件の概要)
1.「第二次ダッカ市雨水排水施設整備計画」の概要は次のとおりである。
(1)本計画の内容
・バングラデシュのダッカ市上下水道公社がカラヤンプールポンプ場の増設と汚泥浚渫用機材(汚泥吸引車、高圧洗浄車、汚泥運搬車等)の整備を実施するための資金を供与する。
(2)本計画の必要性
・バングラデシュの首都ダッカ市は3つの大河川(ガンジス川、ブラマプトラ川及びメグナ川)によって形成されたデルタ地帯の海抜9m以下の平坦な低地であるため、ダッカ市内は周辺河川の洪水氾濫と豪雨による浸水の被害を頻繁に受けている。
・ダッカ市の近年の急速な都市化と人口増加(平均3.6%増/年)等を踏まえると、今後も浸水被害は増大する可能性が高く、首都ダッカ市の首都機能・経済活動への影響、保健・衛生面の改善から、雨水排水対策が重要となっている。
・このような状況の下、バングラデシュ政府は、ダッカ市内の雨水等を市外に排水するカラヤンプールポンプ場の増設とポンプ場の調整池につながる排水路に堆積した汚泥を浚渫するための機材の整備のために必要な資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
(3)本計画の効果
・本計画の実施により、ポンプ場における排水能力が向上し、ダッカ市内の湛水時間の減少、湛水水位の低下等による浸水被害の軽減が期待されるとともに、ダッカ市内における水因性疾病の蔓延防止や経済活動への被害軽減に対する貢献が期待される。
2.「モウルビバザール気象レーダー設置計画」の概要は次のとおりである。
(1)本計画の内容
・バングラデシュ政府のバングラデシュ気象局が、北東部のモウルビバザールに新たな気象レーダーを整備
(施設:気象レーダー塔(高さ約50m)、機材:気象レーダーデーター表示システム、気象データ衛星通信システム等)すると共に、既設(ダッカ及びラングプール)の気象レーダーシステムの改良(データ処理装置の改良)等を実施するための資金を供与する。
(2)本計画の必要性
・バングラデシュでは、雨季の豪雨等による洪水や急激な出水(鉄砲水)による被害により、過去15年間で死者・行方不明者2,722人、負傷者約240万人、被災者約7,892万人に上っており、バングラデシュにおける自然災害の中で最も大きな経済的損失を発生している。また、バングラデシュ北部・中部においては、竜巻を伴う暴風雨による災害も深刻であり、過去8年間で死者・行方不明者956人、沈没船舶数34隻に上っている。
・既設の気象レーダー観測網では、洪水や急速な出水(鉄砲水)の主な原因となるインド側メグナ河上流域及びメガラヤ山脈域の雨量データが観測区域外になっている。また、バングラデシュの北部・中部を観測範囲とする既設の気象レーダーでは、暴風雨の発生状況等を観測することができない上、雨雲を観測することはできるものの雨量データを精度良く解析・処理できる機能を有していない。このため、バングラデシュ全土の洪水予報、急速な出水(鉄砲水)の予警報、暴風雨の予警報が適切に発令できない状態にある。
・このような状況の中、バングラデシュ政府は、バングラデシュ国内に重大な被害をもたらす洪水の予報精度の向上、急速な出水(鉄砲水)の適切な時期の予警報発表、暴風雨警報の迅速な発表を実現するため、バングラデシュ北東部のモウルビバザールに新たな気象レーダーを設置すると共に、既存の気象レーダー観測に雨量解析機能を追加するための資金につき、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
(3)本計画の効果
・本計画の実施により、バングラデシュ国内における洪水被害のハイリスク地域に居住する約8,200万人(全人口の約67%)のために、適切な洪水・暴風雨の予警報が発令される効果が見込まれている。
3.「人材育成奨学計画」の概要は次のとおりである。
(1)本計画の内容
・バングラデシュの将来を担う若手行政官等20名を対象に、日本の大学院における学位取得を前提とした留学に対して経費を支援するための資金を供与する。
(2)本計画の必要性
・バングラデシュは、経済自由化の推進、民間活力の有効利用等を経済政策の柱として、民間活性化のための支援、外国投資促進のための環境整備、国営企業の民営化促進等の施策を行っている。しかしながら、人材不足により大きな進展は見られておらず、将来のバングラデシュ経済活性化の中核を担う人材育成が急務となっているほか、識字率・就学率等の教育指標も他の開発途上国と比較して低く、男女間、地域間においても大きな格差が存在しており、教育分野における問題も顕在化している。
・このような状況の下、バングラデシュ政府は、人材育成における留学制度の果たす重要な役割に鑑み、「人材育成奨学計画」を策定し、我が国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
(3)本計画の効果
・本計画の実施により育成される人材が、将来、各分野のリーダーとして、バングラデシュの抱える諸問題の解決に貢献するとともに、今後の日・バングラデシュ両国間の友好関係の架け橋となることが期待される。
(参考)
バングラデシュ人民共和国は、面積約14.4万平方キロメートル、人口約1億4,000万人(平成17年)、人口一人当たりのGNI(国民総所得)約470ドル(平成18年)である。
※財務省や保健・家族福祉省等を中心に若手・中堅行政官等が、公共政策、経済、医療政策、環境政策分野に関して留学。
※実際の来日は次年度(例えば、第1期生は平成13年度に選考され、実際の来日は平成14年度)。