報道発表

中国の「酸性雨及び黄砂モニタリング・ネットワーク整備計画」に対する無償資金協力について

平成18年12月20日
  1. 我が国政府は、中華人民共和国政府に対し、「酸性雨及び黄砂モニタリング・ネットワーク整備計画」(The project for the Establishment of the Monitoring Network for Acid Deposition, Dust and Sandstorm)の実施に資することを目的として、総額7億9,300万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、12月20日(水曜日)、北京において、我が方宮本雄二駐中国大使と先方易小準商務部副部長(Yi Xiaozhun, Vice Minister, Ministry of Commerce)との間で行われた。
  2. (1)酸性雨
     中国の各都市は経済発展に伴い、大気汚染物質の発生量が増加し、汚染の範囲も拡大している。石炭燃焼から発生する二酸化硫黄や、工場あるいは自動車から放出される窒素酸化物などは、環境に深刻な影響を与える大気汚染問題を引き起こすとともに酸性雨の原因ともなっているが、このような大気汚染物質は地形・気象条件により国境を越えた環境問題となっている。東アジアの酸性雨問題に対しては、日本が中心となって「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)」を設立し、各国は共通の手法により降雨の分析と大気汚染物質の観測を行い、データを共有することとしているが、中国における観測体制は不十分である。

    (2)黄砂
     また、近年の農業開発や水資源の多用により内陸部の砂漠化が進行し、黄砂(砂塵)嵐の発生も増加し被害も拡大している。中国国内で発生した黄砂は地形・気象条件により中国国内のみならず、韓国及び日本にも達している。こうした黄砂問題に対処するため、中国、モンゴル、韓国と日本の4か国及び国連環境計画等国際機関が協力し、アジア開発銀行(ADB)と地球環境ファシリティ(GEF)の資金により、「北東アジアにおける黄砂の防止と抑制」に関する技術支援プロジェクトが実施されている。この一環としてマスタープランが作成され、4か国はこれに沿って黄砂モニタリングを実施し、データを共有していくことが合意されているが、中国においては現在のところ日本との共同研究レベルの活動が中心であり、有効な黄砂の予報モデルを開発する上でのデータが不足している。

  3. このような状況の下、国境を越えた環境課題である酸性雨及び黄砂問題に関し、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク及びADB-GEF黄砂対策マスタープランに基づくネットワークの活動の推進に寄与できるよう、中国国内のモニタリング水準を向上させることを目的として、中国政府は「酸性雨及び黄砂モニタリング・ネットワーク整備計画」を策定し、酸性雨及び黄砂を観測するために必要となる機材の整備のための資金につき我が国政府に無償資金協力を要請してきたものである。これを受け、我が国政府としては対中国経済協力の重点分野である環境分野への支援にも合致することを踏まえ、実施を決定することとしたものである。
  4. 本件については、12月9日(土曜日)にセブ(フィリピン)で行われた日中外相会談において、麻生太郎外務大臣より実施する旨言及し、李肇星中国外交部長より、本件を含め日本の環境面での協力を評価する旨発言があった。
  5. なお、この計画の実施により、中国国内の酸性雨観測体制が強化され、観測データの精度が向上することにより、大気汚染対策のための規制等の措置につながるとともに、東アジア酸性雨モニタリングネットワークの活動に寄与することが期待される。黄砂に関しては、中国国内の発生源地域からの広範囲な地域にわたって連続的な観測データが得られ、黄砂の動きをリアルタイムで捉えられることにより、予報モデルの開発が促進され、黄砂対策の進展につながり、ADB-GEF黄砂対策マスタープランに基づくネットワークの活動に寄与することが期待される。
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