(1)酸性雨
中国の各都市は経済発展に伴い、大気汚染物質の発生量が増加し、汚染の範囲も拡大している。石炭燃焼から発生する二酸化硫黄や、工場あるいは自動車から放出される窒素酸化物などは、環境に深刻な影響を与える大気汚染問題を引き起こすとともに酸性雨の原因ともなっているが、このような大気汚染物質は地形・気象条件により国境を越えた環境問題となっている。東アジアの酸性雨問題に対しては、日本が中心となって「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)」を設立し、各国は共通の手法により降雨の分析と大気汚染物質の観測を行い、データを共有することとしているが、中国における観測体制は不十分である。
(2)黄砂
また、近年の農業開発や水資源の多用により内陸部の砂漠化が進行し、黄砂(砂塵)嵐の発生も増加し被害も拡大している。中国国内で発生した黄砂は地形・気象条件により中国国内のみならず、韓国及び日本にも達している。こうした黄砂問題に対処するため、中国、モンゴル、韓国と日本の4か国及び国連環境計画等国際機関が協力し、アジア開発銀行(ADB)と地球環境ファシリティ(GEF)の資金により、「北東アジアにおける黄砂の防止と抑制」に関する技術支援プロジェクトが実施されている。この一環としてマスタープランが作成され、4か国はこれに沿って黄砂モニタリングを実施し、データを共有していくことが合意されているが、中国においては現在のところ日本との共同研究レベルの活動が中心であり、有効な黄砂の予報モデルを開発する上でのデータが不足している。