
カンボジアの「カンダルスタン灌漑施設改修計画」ほか5件に対する無償資金協力について
平成17年6月10日
- わが国政府は、カンボジア王国政府に対し、「カンダルスタン灌漑施設改修計画」、「主要幹線道路橋梁改修計画」、「人材育成奨学計画」、「コンポンチャム州村落飲料水供給計画」及び「国道1号線改修計画」の実施に資することを目的として総額42億6千7百万円を限度とする額の無償資金協力を行うこととし、このための書簡の交換が、6月10日(金曜日)、プノンペンにおいて、わが方
外務大臣と先方ハオ・ナムホン副首相兼外務国際協力大臣(H. E. Mr. HOR Namhong, Deputy Prime Minister and Minister of Foreign Affairs and International Cooperation)との間で行われた。
(1)「カンダルスタン灌漑施設改修計画」
(the Project for the Rehabilitation of the Kandal Stung Irrigation System)
供与限度額(国庫債務負担行為) 17億4,000万円
(平成17年度 5億1,100万円)
(平成18年度 9億7,400万円)
(平成19年度 2億5,500万円)
(2)「主要幹線道路橋梁改修計画」
(the Project for the Rehabilitation of Bridges along the Main Trunk Roads)
供与限度額(国庫債務負担行為) 8億4,400万円
(平成17年度 2億2,800万円)
(平成18年度 6億100万円)
(平成19年度 1,500万円)
(3)「人材育成奨学計画」(平成17年度選考・18年度来日学生分)
(the Project for Human Resoure Development Scholarship)
供与限度額(国庫債務負担行為) 3億4,800万円
(平成17年度 3,700万円)
(平成18年度 1億6,000万円)
(平成19年度 9,200万円)
(平成20年度 5,900万円)
(4)「人材育成奨学計画」(平成15年度以前選考学生分)
供与限度額 1億1,500万円
(5)「コンポンチャム州村落飲料水供給計画」
(the Project for Rural Drinking Water Supply in Kampong Cham Province)
供与限度額 4億3,400万円
(6)「国道1号線改修計画」
(the Project for the Improvement of the National Road No.1)
供与限度額 7億8,600万円
- (1)「カンダルスタン灌漑施設改修計画」
カンボジアにおいては農業が主要産業であり、稲作がその中心であるが、全国の水田のうち灌漑施設が整備されているのは約18%に過ぎず、これらの施設も損傷・老朽化や構造上の欠陥により所定の機能を果たしていないのが現状である。このため、同国は自然条件に恵まれているにも拘わらず農業生産性が低く、農村部における貧困の原因の一つとなっている。
このような状況を受けてカンボジア政府は、首都プノンペン近郊のカンダール州カンダルスタン地区において、灌漑施設の改修を通じて農業生産性の向上を図る計画を策定し、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。
この計画の実施により、1,950ヘクタールの農地への灌漑用水の安定的供給が確保されて、在来種の米の収穫量増加および早稲の雨期二期作が可能となることから、1万3,400人(2,800戸)の農業人口が直接裨益するとともに、これら農民の間で水利組合の設立、灌漑施設の維持・管理等への参加意欲が高まって、当該農村部の経済社会開発が促進されることが期待される。
(2)「主要幹線道路橋梁改修計画」
カンボジアの幹線国道は首都プノンペンを中心として放射状に展開しているが、1970~1980年代の内戦時に維持管理が行われず、また、洪水被害や爆撃・地雷によって大規模な損壊を被った。1993年以降、日本を始めとするドナー国や国際金融機関の協力により復旧が進められているが、近代的な規格への改修を終えているのは約60%に過ぎない。
国道2号線上の第二タクマウ橋およびプレックホウ橋、並びに国道3号線上のスラコウ橋は、老朽化により走行性が悪化している上、狭幅員で交通容量が小さいため、交通のボトルネックとなっている。こうした状況を受けてカンボジア政府は、これら3橋の架け替え工事の計画を策定し、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきた。
この計画の実施により、主要幹線道路上の3橋の走行性が改善され、通行可能車両が10tから20tへと交通容量が増加することから、貨物輸送の効率化および交通渋滞の緩和が期待される。なお、3橋のうちスラコウ橋では通水容量の不足により雨期に不通に陥っていたが、こうした事態が解消される。
(3)「人材育成奨学計画」
カンボジアでは、約20年間に亘る内戦で多くの人材を喪失し、戦後の復興・開発の中核を担う行政機関等において有望な人材の確保が困難となっていることから、同国の市場経済化、近代化等への対応が必ずしも十分に行えない状況にある。
このような状況の下、カンボジア政府は人材育成において留学制度が果たす重要な役割に鑑み、「人材育成奨学計画」を策定し、その実施に必要な資金につきわが国政府に対し無償資金協力を要請してきた。この計画はカンボジアの将来を担う若手行政官等68名(新規選考25名、継続43名)を対象に、日本の大学院における学位取得を前提とした留学の機会を提供するものである。
この計画の実施により育成される人材が、将来、各分野のリーダーとしてカンボジアが抱える諸課題の解決に貢献するとともに、今後の日・カンボジア両国間の友好協力の架け橋となることが期待される。
(4)「コンポンチャム州村落飲料水供給計画」
カンボジアでは、過去の内戦の影響もあって、農村部における給水施設の整備が特に立ち後れており、住民は伝統的に雨水、河川水、浅井戸、溜池等に飲料水を依存している。これらの水源は大腸菌などに汚染されているため水因性疾患の発症率が高く、また、乾期には水不足が深刻化している。
このような状況を受けて、カンボジア政府より南部・中部の4州における地下水開発について無償資金協力要請があったことから、これらのうち安全な給水の人口比率が18%と最低であるコンポンチャム州を選定の上、115村380箇所の深井戸給水施設の建設、調査試験用機材の調達および給水施設の運営・維持管理に係る技術指導について協力を行うこととしたものである。なお、今回の第1期協力における対象サイトは、このうち173箇所となる。
この計画の実施により、対象115村落の10万8,400人の住民に対して、安全な水の供給率が9.5%から82%へと大幅に改善されることから、村落住民の生活環境が改善されて、水因性疾患の発症率が減少するとともに、女性および子供の水汲み労働時間が短縮されることが期待される。
(5)「国道1号線改修計画」
国道1号線は、プノンペンとベトナム国境バベットを結ぶカンボジアの最重要道路の一つであるとともに、ベトナムの商都ホーチミンへと接続し、メコン地域開発の観点から重要な第二東西回廊を形成する国際幹線道路でもある。しかし、同道路のプノンペン~ネアックルン区間(約56km)はメコン河に平行して横たわる氾濫原に位置することから、損傷が著しく、現在平均時速30km程度の走行しかできない状況にある。
このような状況の下、カンボジア政府より同区間の改修(道路舗装修復、道路高の嵩上げ、道路幅員の拡幅、橋梁建設、カルバート建設、道路排水施設整備等)について、わが国政府に対し無償資金協力を要請してきたものである。今回はわが国の第1期協力として、このうち仮設橋2橋の架け替えを対象として協力を行うこととしたものである。
今回の協力の実施により、主要幹線道路上の2橋の走行性が改善され、通行可能車両が15tから20tへと交通容量が増加することによって、貨物輸送の効率化および交通渋滞の緩和が実現する。さらに、こうした幹線道路の機能の向上を通じて、物的・人的交流が促進されて、経済・社会活動の発展に資することが期待される。
(参考)
カンボジア王国は、東南アジアに位置し、人口1,450万人、国民1人あたりのGNI(国民 総所得)は321ドルである。