平成18年8月
7月31日(月曜日)、ダッカにおいて、ダッカ大学日本研究センターの主催・当省協力の下、日SAARCシンポジウムが開催されたところ、概要以下のとおり。
なお、本シンポジウムは、日本政府の全額拠出による日・SAARC特別基金が支援した。
本シンポジウムは、昨年11月の第13回SAARC首脳会議において日本のオブザーバー参加が認められたことを機に、日本とSAARCとの協力のあり方を探ることを目的とした。本会合の結論として、防災、地域的インフラの整備、若者など人的交流、キャパシティー・ビルディング等につき、日SAARC間の協力を具体化していく旨勧告がまとめられ、所期の目的は達成された(勧告別添)。
同時に、8月1~2日に行われたSAARC外相会議の直前に実施することで、プレスカバレッジを確保し、日本のSAARCに対する協力をアピールすることを狙った。この点についても、バングラデシュ国内各紙に大きく報じられたことにより、SAARC外相会合参加のためダッカ滞在中の各国要人にも周知され、その目的は達成された。
本シンポジウムでは、議長を広瀬専修大学教授、ラーマン・ダッカ大学教授が務め、発表者としてSAARC諸国の有識者、日本からはアジア経済研究所、ADRC(アジア防災センター)、当省(清水南西アジア課長)及びADB、JBIC等の国際機関が参加した。開会式にはSAARC外相会議議長であるカーン・バングラデシュ外相が出席した他、在バングラデシュ大福田臨時代理大使より小泉総理の祝詞を紹介した。
シンポジウムはセッション I、セッション II、サマリーセッションの3部構成で進められ、セッション IではSAARC間協力の課題、セッション IIでは日本とSAARC間の協力の課題、サマリーセッションではSAARCに対する政策提言がテーマとなって、出席者によるプレゼンテーション及び意見交換が行われた。
(1)日本のSAARCに対する協力について
1)防災
防災については、ADRC(アジア防災センター)から、(1)SAARC各国の防災体制に関する調査、(2)防災システムの構築に関する専門家会合の開催、(3)セミナー、技術者に対する研修及び講義、(4)地域の防災戦略の構築、(5)SAARC防災センターの強化、の5つの内容を柱とする具体的な提言がなされた。これを受けて、各参加者より、防災協力は地域が直面する共通の課題であり、早期に日SAARC特別基金協力を具体化すべき旨の意見が出され、会合の4つの勧告の1つとしてまとめられた。
2)地域的なインフラ整備
ADBからは、拡大メコン地域(GMS)の例に見られるような、運輸やエネルギー・電力供給等のインフラ整備を図ることが重要であるが、SAARC地域では、政治的対立もあり、エネルギー・電力分野の協力が停滞している、一方、SAARC協力活性化の機運を受け、ADBとしても、地域運輸網の開発調査やSAARC開発基金設立に向けた技術協力を実施している旨説明。
アジア経済研究所から、インフラ整備を通じて日本が輸送コストの低減に協力すれば、SAARCの統合がより深まる一方で、SAARC諸国内における経済格差を助長させないためにも、都市部開発だけでなく農村開発も並行して行われるべきであること、またJBICから、SAARC諸国の政治的問題を乗り越えて地域間にわたるインフラ開発を行うことが重要であり、その際には、ハードだけではなくそれを適切に運用、維持管理するソフト面に対する支援も重要であるという指摘がなされた。
3)キャパシティー・ビルディング、人的交流
各国の参加者から、SAFTA(南アジア自由貿易協定)の発展を踏まえた貿易円滑化(税関手続の共通化・簡素化など)、エネルギー効率・省エネ・クリーンエネルギー等の分野における日本の知見や技術を活用したキャパシティー・ビルディングの要請がなされた。また若者、メディア関係者等の人的交流、SAARC大学への協力、文化交流等を重点分野として押す意見もあった。
(2)その他、全体的な議論
出席者からは、日本の協力には政治的な思惑がないことから、SAARCは今後の日本の協力に大きな期待を寄せており、また、日本の協力がSAARCの活動を活性化させる触媒の役割を果たすとして、日本の取組を評価するコメントが多く出された。他方、日本と同時にオブザーバー参加が認められた中国に関して、日中が競争的にSAARCに関与することは、SAARC内の協力を難しくするおそれがあるため、日中間の協力もSAARCにとり重要であるという指摘もあった。