平成20年9月9日
於:国連大学ウ・タント・ホール
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アフリカ・デー・シンポジウムにおいて基調講演を行う伊藤外務副大臣
キーノート・スピーカーとしてシンポジウムに参加した小池衆議院議員(右)、伊藤外務副大臣(中央)、石田農水副大臣(左)
各国大使の皆様、
ご列席の皆様、
本日は、アフリカ・デー・シンポジウムにご招待いただき大変光栄です。本年のテーマ「アフリカにおける食料事情:危機から好機へ;アフリカのための新しい展望」は、今日のアフリカにおける喫緊の課題であり、今回のシンポジウムは大変時宜にかなったものです。
食料価格高騰は、特に貧困層の生活を直撃しています。例えば、エチオピアにおいては、1年前に比べて主食であるテフの価格が2倍になっており、ウガンダではマトケ(調理用バナナ)の値段が2倍になっています。食料価格高騰は貧困層のカロリー摂取量を減少させ、それ自体が人道上の危機となります。また、貧困層のカロリー摂取量を減少させています。ブルキナファソ、コートジボワールといった国々では食料価格の高騰が暴力的デモ、政情不安に繋がっています。先月モーリタニアで発生したクーデターも食料価格高騰問題と政府の不十分な対応に一因があると言われています。このような事態が続けば、90年代の混乱を抜け出し、平和の定着がようやく進んできたアフリカの前向きな動きが後戻りすることにもなりかねません。
8つのミレニアム開発目標(MDGs)のうちの1つは極度の貧困と飢餓の撲滅でありました。国際社会は「2015年までに飢餓に苦しむ人口の割合と1日1ドル未満の収入で生活する人口の割合を半減する」ことを約束しました。しかしながら、サハラ以南のアフリカは今なお深刻な困難に直面しています。食料価格高騰の悪影響を受け、約2億人が飢餓に苦しんでいると言われており、栄養不足人口の比率も、依然として高いままに留まっています。2015年までのMDGs達成に向けた中間年にあたる本年、まさに、我々のMDGs達成に向けた意思が問われていると言えるでしょう。
我が国はこの状況を真剣にとらえています。我が国は、貧困削減のため農業分野における協力を重視するとともに、地球的規模の課題としての食料価格高騰問題に積極的に取り組んでいます。そのため、まずは食料不足に直面している開発途上国に対して短期的な取組として遅滞なく必要な国々に食糧援助を行っています。加えて、食料価格高騰が構造的な原因によりもたらされることから、農業生産性の向上に向けた努力(オーナーシップ)を中長期的に支援する取組も進めています。
我が国は、本年1月以降、約11億ドルに上る食糧援助や農業分野の支援を実施あるいは約束するとともに、最近主催した二つの会議で本件を重要議題の一つとして取り上げてきました。
そのうちの一つが、本年5月、アフリカ51ヵ国の参加を得て横浜で開催された第四回アフリカ開発会議(TICAD IV)です。この会議において、福田総理は、アフリカ諸国におけるコメ生産量の10年間での倍増を呼びかけました。我が国は、様々な国や国際機関と協力して、灌漑システムの整備、品種改良、農業分野の能力構築に協力していきたいと考えています。我が国は、関係国、関係機関と協力して、包括的アフリカ農業開発プログラムの実施の支援に取り組みます。
また、7月のG8北海道洞爺湖サミットでは、G8首脳達は「世界の食料安全保障に関するG8首脳声明」を発出し、食料安全保障の問題に取り組む強いコミットメントを示しました。この声明では、食糧難に苦しむ人々への緊急支援を継続するとともに、農業分野の援助・投資の増加などの中長期的施策をとることを約束しています。また、輸出規制の撤廃や、食料作物を原料としない第二世代のバイオ燃料の開発、商業化を加速化することを呼びかけました。
食料価格高騰に対応するためには、国際社会全体が包括的かつ一貫した対応を進めていくことが重要です。多くの国際機関が食料価格高騰の多様な側面に対処しており、最高の結果を出すために更に調整を進めることが重要です。この関係で、農産品の貿易については慎重な考慮が必要であり、農業の多面的な機能は見逃されるべきではありません。これについては包括的に取り組むことが必要です。
食料価格高騰は、アフリカに大きな課題をもたらしました。しかし最後に、食料価格の高騰が大きな機会をもたらす可能性もある点を指摘したいと思います。アフリカでは、人口の約7割が農業に従事しています。もしアフリカが農業生産性を向上し、生産物への価値を高め、市場での販売につなげることができれば、危機を好機に変えることもできるはずです。アフリカ側でも更なるオーナーシップを持って農業生産性の向上、生産量の拡大に取り組んでいただきたいと思います。我が国も、そのようなアフリカの努力を様々な支援策を通じて支援していきたいと考えます。
ご清聴ありがとうございました。