演説

国連の場における演説

第60回国連総会第5委員会における
議題128「分担率」に関する小澤俊朗大使ステートメント
(仮訳)

平成17年10月17日

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議長、
 はじめに、貴議長およびその他のビューロー・メンバーに対し、ご就任への心からのお祝いを申し上げます。またセッシ分担金委員会委員長に対し、同委員会の報告書を提出して下さったことへの謝意を表します。

議長、
 国連への第2の財政貢献国であり、また国連の財政負担の2割近くを一国で負担する国として、わが国は、分担率の問題を非常に重視しています。分担率の算出方式に関する明年の交渉が、2000年以来6年ぶりの交渉であることを、我々は強く認識しています。我が代表団はこの交渉に、積極的に参加して参ります。

議長、
 先月、まちむら のぶたか外務大臣は、総会の一般討論での演説で、特にこの分担率という重要な問題に言及しました。町村外務大臣は、より衡平かつ公正な分担率の構造に関して合意を達成するために、包括的な見直しが必要であると述べ、また、来るべき交渉において、わが国は、分担率において国連加盟国の地位と責任が適切に考慮されることが確保されるよう最大限の努力を行っていく考えであると述べました。

議長、
 わが国は現在、2003年に算定された14.7パーセントという国民総所得シェアに基づき、19.468%という非常に大きな分担率を担っています。この分担率により、わが国は、安全保障理事会の常任理事国である5カ国のうち4カ国の負担の合計を遙かに超える負担を課されています。わが国政府が莫大な累積財政赤字を抱えているという事実にも拘わらず、また、厳しい財政状況ゆえに、近年、歳出削減を続けているという事実にも拘わらず、わが国は分担金を誠実かつ条件をつけることなく支払い続けています。

議長、
 わが国国内では、国連に対する失望感や不満を声にする人々が増えています。そうした人々は、例えば、国連は日本の貢献を正当に評価していない、国連の負担分担方式は公正でない、あるいは、日本が誠実に支援してきたにも拘わらず国連は日本の声に適切な配慮を払っていない、と主張しています。我々は、こうした声は筋の通った懸念を反映したものであり、また国連が現在抱えている問題点に密接に関連していると考えています。

議長、
 我々の問題意識をより良く知って頂くため、貴議長および当委員会の各国代表団に対し、改めて2つの端的な問いかけをさせて頂きます。第1の質問は、「加盟国の分担率と計算上のGNIシェアとの間に5パーセントもの乖離をもたらすような、現在の算定方式は、支払能力の原則を正確に反映しているのか。」というものです。第2の質問は、「公正という基準に照らして見て、安全保障理事会の常任理事国である5カ国のうち4カ国が一緒になっても、そのような地位を与えられていない、ただ一つの加盟国よりも少ない財政負担しか引き受けないような現状を続けることは、許容されるのか。」というものです。

議長、
 申し上げるまでもなく、わが国政府は、自らの支払能力と国連における地位に相応しい財政的責任を負う用意があります。しかしながら、この2つの質問について明確で納得できる答えをわが国の納税者に与えることができなければ、わが国国民の国連へのコミットメントが揺らぐおそれがあることを我々は恐れている、ということを指摘しておくべきでしょう。わが国は、そのような事態が国連全体の利益に資するものでないことを十分に理解しており、そうした事態を避けるためにあらゆる努力を行う考えです。しかしながら、わが国政府は、その他の民主的な政府と同様に、国民に対して適切な形で説明責任を果たす義務を負っているということを申し上げ、そのことを本委員会のメンバーに理解して頂かねばなりません。

議長、
 わが代表団は、他の加盟国の代表団とともに、各加盟国の支払い能力がより良く反映される制度を求めて参ります。我々は、特別な地位を持つ加盟国がそれに相応しい特別の責任を負わねばならないことを反映した負担分担の制度を求めて参る考えです。わが代表団は、支払い能力の考えと支払い責任の考えを我々の分担率の構造に採り入れることは、国連の財政的な基盤の正当性と健全性を高めることとなり、従って国連全体の利益に合致すると信じます。わが代表団は、今後の交渉の過程において、我々の具体的な提案を提出する考えです。

議長、
 発言を締め括るに先立ち、分担金委員会の報告書について簡単に言及させて頂きます。わが代表団は、同報告書の作成に要した作業について、セッシ委員長およびその他の委員諸氏に対して心より謝意を表明致します。わが代表団は、セッシ委員長及び他の代表団との意見交換に参加するとともに、同報告書に関するわが国の考えを申し述べて参りたいと考えています。また、国連憲章第19条の適用免除の問題その他の、分担金滞納問題への対応に関する議論にも、積極的に参加して参ります。

議長、
 わが代表団は、分担率に関する議論に建設的に参加して参ります。申し上げるまでもなく、他の加盟国が表明する考えにも良く耳を傾けて参ります。同時に、わが代表団としても、他の加盟国に対し、わが国が申し上げていることを注意深く検討し、建設的な形で好意的に応えて下さるよう要請したいと考えます。

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