談話・コメント

外務報道官談話

国連の「イラク・石油・食糧交換計画」不正疑惑に関する独立調査委員会の最終報告書の提出について

平成17年9月8日

  1. 国連の「イラク・石油・食糧交換計画」不正疑惑に関する独立調査委員会(いわゆる「ヴォルカー委員会」)は、7日(ニューヨーク時間)提出した最終報告書の中で、同計画に関連した一部の国連事務局職員による不正・腐敗や国連の管理体制の不備などを包括的に指摘した。今回の事態は、国連に対する国際社会の信頼を大きく揺るがせたものであり、この半世紀に亘り国連を様々な形で支援してきた我が国としても深く憂慮している。国連は今回の報告書を重く受け止め、マネージメント等の改革を進めることにより、信頼の回復に努める必要があると考える。
  2. わが国は、国連が管理体制の抜本的な改革を緊急に必要としているとの独立調査委員会の認識を共有する。国連が、今回の報告書において指摘された教訓をも踏まえ、クリーンで透明性の高い組織に変革できるよう、わが国としても国連の活動に対し一層の注意を払うとともに、国連改革の議論に引き続き積極的に貢献していきたいと考える。

(参考)

  1. 石油・食糧交換計画(OFFP: Oil For Food Program
     イラク・石油・食糧交換計画は、1995年4月14日の安保理決議986に基づき、イラク国民の窮 状に鑑み、イラクが食糧・医薬品等の人道物資購入が可能となるよう同国の石油輸出を限定的に認めたもの。石油代金収入は、国連制裁監視委員会(いわゆる661委員会)により管理され、イラクによる人道物資の購入財源、イラク北部での国連人道活動経費、国連賠償基本経費、国連特別委員会(UNSCOM)や国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)の活動経費その他のイラク関連国連活動経費として支出されていた。
  2. 不正疑惑独立調査委員会(IIC: The Independent Inquiry Committee
     2004年4月21日、国連安保理決議1538によりアナン事務総長の下に創設。ポール・ヴォルカー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長が委員長を、マーク・ピースOECDマネー・ロンダリング問題専門家(スイス)、リチャード・ゴールドストーン元旧ユーゴ・ルワンダ刑事裁判所検察官(南ア)の3人が委員を務め、22ヶ国出身の65名の調査員から構成される。
  3. 不正とされる事例
     本年8月に公表された第3次中間報告書で不正が指摘された関係者は、以下の通り。

    (1)セヴァン元事務次長(OIP: Office of the Iraq Programme担当):イラク政府により同次長に割り当てられた石油をアフリカ中東石油会社(AMEP)に売却することによって、同計画から不当な個人的利益を得ていた容疑。

    (2)アレクサンダー・ヤコブレフ国連事務局調達官:1996年、同計画の石油検査会社入札に当たって、入札情報と引き替えに一企業から贈賄を得ようと働きかけていた容疑。米司法当局により既に逮捕されている。

  4. IICの改善勧告(骨子)

    (1)安保理は、国連が重要分野への関与を決定する際に、各計画の目的及び基準を明確に示すべし。また、計画の執行は事務局及び適切な機関に、報告義務を明確にした上で委任すべし。

    (2)(国連事務総長の行政管理職責を軽減させるため)「首席執行責任者(COO: ChiefOperating Officer)」を設置すべし。

    (3)強力な「独立監査委員会」を設置すべし。

    (4)二機関以上にまたがる計画においては、効果的な調整を当初より確保すべし。

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