
カシヤノフ露首相の訪日
結果概要
平成15年12月16日
カシヤノフ・ロシア首相は、12月15日から17日までの日程で我が国を訪問し、15日川口外務大臣と、16日小泉総理、中川経産大臣他と会談したところ、概要は以下のとおり。16日の小泉総理との会談後に、カシヤノフ首相の訪日に関する共同声明、日露貿易投資促進機構の設立に関する覚書及び水産物の密漁・密輸出対策の強化に関する共同新聞発表の3文書が発表された。
1.総論
本年1月以来、「日露行動計画」が幅広い分野において予想以上の成果をあげて着実に実施されており日露関係が進展していること、様々な分野で両国の交流が進み国民間の親近感が高まっていることについて、日露双方の認識が一致していることが確認された。
2.国際情勢
(1)イラク問題
カシヤノフ首相より、イラクにおいて二人の日本人外交官が亡くなられたことに関しロシア政府を代表して心よりお悔やみを申し上げる旨述べた上で、フセイン元大統領が拘束されたことはイラク情勢の新たな展開につながる、イラク国家が自ら犯罪者を裁き、イラク国民が自らの運命を決定することとなる旨述べた。
これに対して、小泉総理より、今般、我が国は復興支援・人道支援の促進を目的として我が国自衛隊の派遣を決定した、自衛隊派遣は復興支援が目的であり武力行使には参加しない、イラク人によるイラク人のための政府を早期に立ち上げるために国際社会が一致団結し、国連のできるだけ多くの国が参加してイラク復興に取り組むことが望ましい、ロシアからもイラク復興への協力を期待する、この点、プーチン大統領へ宜しくお伝え願いたい旨述べた。
(2)北朝鮮
カシヤノフ首相より、六者会合をめぐり、日露両国が積極的に協力を行っていることに満足している、六者会合は、日露双方が望むスピードでは進んでいないが、この会合の進展が核なき朝鮮半島の達成に繋がることを強く期待する旨述べた。
これに対して小泉総理より、六者会合を通じて、朝鮮半島の平和と安全のためロシアと協力していきたい旨述べた。
3.政治日程
(1)日露賢人会議
小泉総理より、先般、日露賢人会議の設立につきプーチン大統領と合意した、日本側座長は森前総理に務めてもらうことが決まっている、ロシア側座長はルシュコフ・モスクワ市長であると承知している、日露関係の将来につき少人数で意見交換を行ってもらい、プーチン大統領がいずれ訪日する際の準備にも活用したい旨述べた。
(2)川口外務大臣の訪露
15日の会談で川口大臣より、来年前半訪露し、イワノフ外務大臣との間で平和条約締結問題についてじっくり話し合いたい旨述べた。
これを受けて16日の会談で、カシヤノフ首相より小泉総理に対し、貿易経済日露政府間委員会が、フリステンコ副首相と川口外務大臣との間で着実に開催されており、引き続き経済問題について活発な協議が行われることを期待している、川口大臣の来年前半の訪露を期待する、その際には平和条約問題につきじっくり議論することとなる旨述べた。
4.平和条約締結問題
- (1) 小泉総理より、日露関係の飛躍的発展のためには平和条約の締結が是非とも必要であり、四島の帰属の問題を解決して可能な限り早期に平和条約を締結しなければならない、そのためにも、「日露行動計画」の着実な実施を通じて幅広い分野において両国関係を発展させていく中で、日露双方の環境を整えることが重要である旨述べた。
これに対してカシヤノフ首相より、平和条約締結の問題につき、ロシアとしては「日露行動計画」に定められたロシアとしての立場を堅持する、また、ロシアとして平和条約交渉の加速化に応じる用意がある、「日露行動計画」に書かれた方法に沿って日露双方にとり受け入れ可能な解決を見つけたい旨述べた。
- (2) 15日の会談では、川口大臣より、平和条約が日露間に締結されていないことが日本のビジネスマンに心理的に暗い影を落としており、平和条約締結交渉を一層加速化する必要がある、これまでに達成された諸合意に基づき、四島の帰属の問題を解決して平和条約を早期に締結することが重要である旨述べるとともに、この関連で、自由訪問のための4ヶ所の新たな通過点の開設及び訪問対象者の拡大、及び四島住民支援の露側手続の早期完了につき露側尽力を求めた。
5.経済分野の協力
(1)太平洋パイプライン
- (イ) 小泉総理より、太平洋パイプライン・プロジェクトが日露双方にとって利益となるようにしなければならない、本プロジェクトは東シベリアの開発に資するものであり、ナホトカ、太平洋岸につながるパイプラインの重要性を強調したい旨述べた。
これに対し、カシヤノフ首相より、東シベリアの石油の生産は現在ゼロであるが、「2020年までのエネルギー戦略」では東シベリア・極東地域の開発の必要性が指摘されている、また、同戦略の中では太平洋に至るパイプラインにも言及があり、このプロジェクトが東シベリアの開発につながることを期待している、パイプラインができれば、東シベリア地域の価値は著しく高まる、その実現のためには、可採埋蔵量の正確な把握が必要である旨述べた。
- (ロ) 15日の会談で、川口大臣より、同プロジェクトの意義を強調したの対し、カシヤノフ首相より、東シベリア・極東地域には、莫大な資源がありその開発が重要であるが、ロシア国内の需要は十分ではなく、日本を含む近隣諸国との協力が必要である旨述べた。
- (ハ) なお、共同声明には、「双方は、東シベリア及び極東のエネルギー資源の開発及び輸送に関する協力の進展、特にロシア連邦の太平洋沿岸へ通じる石油パイプラインの建設が、ロシア連邦の東シベリア及び極東地域の発展、それらの地域の燃料エネルギー資源の効果的利用及びアジア太平洋地域全体のエネルギー安定の観点から重要なものであるとの共通の理解を確認した。」との記述が盛り込まれ、太平洋沿岸という地名が明記されると共に、日露両政府の共通の認識として太平洋パイプラインの意義が言及された。
(2)貿易投資促進機構
小泉総理より、日露間の貿易投資は拡大傾向にあり、本機構の設立は時宜を得たものである、中小企業を含めた取り引きの拡大を期待する旨述べた。
これに対し、カシヤノフ首相より、日露間の貿易は増加傾向にあり、本年の貿易高は50億ドルを超え、約35%の伸びを示した、しかし、日露の経済関係は依然低い水準にあり、日露間の潜在力は十分には発揮されていない、この潜在力を活かす上で、本機構の活動に期待している旨述べた。
(3)水産物の密漁・密輸出問題
小泉総理より、ロシア船によるカニ、ウニの密輸が後を絶たない、天然資源の保存の観点から協力が必要である、また、本件協力は両国の友好関係発展のためにも重要である、共同新聞発表の発出を歓迎する旨述べた。
これに対し、カシヤノフ首相より、密漁・密輸出分野ではこれまでも協力の成果があがっている、今次共同新聞発表の発出により、両国の政治的意思が表明されたことを歓迎する、今後関係当局の連絡の緊密化による前進が重要であり、このことを関係省庁に指示することとしたい旨述べた。
(4)京都議定書
- (イ) 15日の会談で、川口大臣より、ロシアが京都議定書発効の鍵を握っている、同議定書の早期締結はロシアの国益に適う旨述べ、ロシアの早期批准を要請した。
- (ロ) 16日の会談で、小泉総理より、京都議定書の早期発効が重要である旨述べた。
(5)ITER
小泉総理より、20日の閣僚級会合では、ITERの我が国六ヶ所村への誘致に対して支持をお願いしたい旨述べた。また、15日の会談で川口大臣よりも同旨を述べた。
これに対し、カシヤノフ首相より、ロシアとしてもITERを重要と考えており、今次訪日の同行者にルミャンツェフ原子力エネルギー大臣を加えた、今回聞いた内容については帰国後プーチン大統領に報告したい旨述べた。
(6)ロシアのWTO加盟
- (イ) 15日の会談で、カシヤノフ首相より、ロシアのWTO加盟に関し、日本の政治的支持に感謝する、いくつかの未解決の点が残っているが、引き続き協力していきたい、日本側の協力をお願いしたい旨述べた。
これに対して、川口大臣より、市場開放へのロシアの前向きな対応が重要である、緊密に協力したい旨述べた。
- (ロ) 16日の会談でも、カシヤノフ首相より、ロシアのWTO加盟に関する我が国の支持に感謝する、残された諸問題を早期に解決したい旨述べた。
(7)非核化協力
- (イ) 15日の会談で、カシヤノフ首相より、G8グローバル・パートナーシップの下、日露の非核化協力が進んでいるが、今般ヴィクター III 級原潜の解体作業が始まったことを歓迎、日本の決定を高く評価する、日本は、一旦政治的決定を行えば作業の前進が早い、今後ともこのような協力が進められることを期待したい旨述べた。
これに対して、川口大臣より、非核化協力は、我が国自身の問題としても重要、同事業の円滑かつ着実な実施のために、事業サイトへのアクセス手続の簡素化が必要である旨述べた。
- (ロ) 16日の会談でも、カシヤノフ首相より、本分野における日本の協力に対する謝意が表されると共に、協力の継続への期待が表明された。
(8)「ロシア企業経営者養成計画」に対する協力
小泉総理より、先般貴首相より「ロシア企業経営者養成計画」に対する我が国の協力の継続に関する書簡を頂いたが、日本としては日本センターを通じた協力を継続する用意がある旨述べた。
6.その他の会談
- (1) この他、カシヤノフ首相は、河野衆議院議長と会談し、更に奥田経団連会長との朝食会、安西日露経済委員会委員長及びエネルギー企業関係者との会談、高垣ロシア東欧貿易会主催昼食会を行った。
- (2) カシヤノフ首相より小泉総理に対して、我が国企業関係者との会談を通じて日本のビジネス界のロシアに対する関心が高まっていることを実感できた旨印象を述べた。