平成24年4月10日(英語版)
日英両国の首相として,我々は,民主主義,法の支配,人権及び市場経済という共有する価値に基づき,世界の繁栄と安全保障を促進することにコミットしている。また,我々は21世紀の世界的課題に取り組む責任を共有している。我々は,日英間に存在している先導する戦略的パートナーシップの特別な重要性を再確認する。日英両国は,アジア及び欧州それぞれにおいて,相手国の最も重要なパートナーである。
我々は,2011年3月11日の東日本大震災及び津波並びにそれに続いた原子力事故の発生後に日本の人々が見せた回復力を賞賛する。そのような苦難に直面して日本の人々が見せた強さは,両国首相に対し,復興を通じ日本が再生し,これまでと同様に,世界の繁栄と安全保障に力強く貢献し続けるだろうという確信を与えた。日本は,悲劇的な出来事からの復旧に際して英国の人々,企業及び政府が差し伸べた支援と連帯に感謝する。英国は,日本が大規模自然災害に関するハイレベル国際会議を,7月に被災地の東北で開催することを評価する。
両国の人々の間の絆の重要性を認識し,我々は,JETプログラムとユース・モビリティー・スキームが二国間関係に価値ある貢献を果たしてきていることを再確認する。我々は,ブリティッシュ・カウンシルが実施する新しい制度を始め,日本と英国の大学間で研究の協力,人材の移動及びスキルを強化する制度を通じ,双方向に往来する学生の数を増やすため協力する。我々は,広範な分野の傑出した人々により構成される重要な年次フォーラムである日英21世紀委員会に対する我々の支持を新たにする。
我々は,ロンドンにおけるオリンピック及びパラリンピックが,大きな成功を収め,日英間の絆を一層深化させるまたとない機会となることを望む。オリンピックを主催することは,スポーツの希望と夢を実現するための機会となり,英国は,東京による2020年オリンピック及びパラリンピックの誘致がうまくいくことを祈念する。
経済的・社会的繁栄が,平和と安全保障の促進に資するとの認識に基づき,世界経済は,回復の前向きな兆候を示しているが,大きな下振れリスクは残っている。石油価格の更なる高騰の可能性は,世界各国政府の懸念である。我々は,G8,G20,IMF及びWTOを含む,世界経済の既存の枠組みにおける協力を強化するとのコミットメントを改めて表明する。
我々は,強固で持続可能かつ均衡ある成長という我々の目標の達成に向けた重要なコミットメントを定めた,成長と雇用のためのG20カンヌ・アクションプランを引き続き実施することを歓迎する。我々はまた,ロスカボス・アクションプランを作成するために協働していく。日英両政府は,財政の持続可能性の確保,成長の確保及び金融規制の改革に必要な措置を踏んでいくことにコミットする。
我々は,欧州のファイアーウォールの強化に向けた最近の決定を含め,ユーロ圏諸国による,欧州の金融安定化に関する進展を歓迎する。日英両国は,IMFの資金基盤強化の問題に関し,我々の国際的パートナーと共に緊密に協力していく。我々は,追加的な資金は,適切なコンディショナリティに基づき,国際社会全体のために使用されるべきとの見解を共有する。
ドーハ開発アジェンダ交渉(DDA)の膠着にもかかわらず,我々は,2011年12月に行われた第8回閣僚会合の結果にのっとり,貿易自由化達成のための新たなアプローチをにらみつつ,DDAの最も進展している要素に関する多国間貿易交渉の妥結に引き続きコミットする。これらは,WTOの枠組みに整合的な形で,望む国々がより野心的な独自の交渉を進めることができる有志連合を含み得る。我々はまた,G20カンヌ・サミットにおいてなされた,保護主義抑止に向けたコミットメントを再確認する。
両国は,長期にわたり成功した経済的パートナーシップを有してきた。日英間の更なる貿易・投資が,両国の経済を刺激し,両国の人々に雇用を提供し,イノベーションを進め,競争力を強める。そのため,両国間で経済成長が見込める全ての潜在的分野を維持し,探し出し,発展させることが肝要である。我々は,双方向にビジネスの流れを後押しする,肯定的なビジネス環境を提供することにコミットする。
我々は,貿易・投資の拡大により日EU双方に裨益する日・EU経済連携協定(EPA)の本年の日・EU定期首脳協議での交渉開始及び早期妥結に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は,関税,非関税措置,サービス,投資,知的財産権,競争及び政府・公共調達を含む,双方の全ての共有された関心事項を取り扱う真に包括的な協定を達成することが重要であるとの見解を共有する。英国は,総理のリーダーシップの下で進められている規制・制度改革に取り組む日本の努力を歓迎する。日本は,首相主導による日EU・EPAの交渉開始に対する英国の力強い支持を評価する。
資源が減少する一方,エネルギーの需要が増加している世界において,安定し,安全で,受容可能な価格のかつ炭素排出量の少ないエネルギーの供給は,経済成長及び破滅的な地球の気候変動の回避のために不可欠である。G8,IEA,IEF及びIRENAといった国際的フォーラムにおける我々の協力は,世界的なエネルギー安全保障及び気候変動問題を取り扱う中で有意義な役割を果たし続ける。我々は,年次の日英エネルギー対話で,クリーン・エネルギーやエネルギー安全保障等のエネルギー問題の議論を継続する。我々は,産業革命前との比較で世界の気温の上昇を平均2度以下の水準に維持するため,温室効果ガスの世界規模での排出を削減するという長期的目標を達成するための緊急の行動をとることにコミットしている。我々は,国連気候変動枠組条約第17回締約国会議の成果を,特に,強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会の設立を歓迎し,また,全締約国に適用される,公平かつ実効的な法的拘束力のある国際枠組みを構築するとの最終目標に向け協働していく決意である。
日英両国は,50年以上に亘り,民生用原子力に関する協力で成功を収めてきた。東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け,我々は,2012年4月10日に東京において開催された原子力協力に関するハイレベル・シンポジウムを心から歓迎する。また,我々は本年12月の原子力安全に関する福島閣僚会議の成功へ向け協力していく。本声明の附属文書は,両国間の民生用原子力協力の重要性を強調し,原子力安全及び規制の強化並びに廃炉,除染,使用済燃料の管理における経験及び専門知識の共有において緊密に協力する意図を再確認している。
効果的な開発協力に関する新たなグローバル・パートナーシップが設立されることに従い,日英両国は,永続的な開発の成果を達成するため,開発途上国,新興経済国,民間セクター,市民社会組織等と協力を継続する。我々は,2011年6月に東京で行われたミレニアム開発目標(MDGs)フォローアップ会合の成果を考慮し,MDGの達成に向けて,及びその先も見据えて進展を加速することの重要性を認識している。我々は,2013年の第5回アフリカ開発会議(TICAD V)及び英国によるG8議長へ向け,緊密に協働する。
日英両国は,科学技術イノベーションの分野における世界的先駆者である。我々は,基礎研究,新技術の開発及び経済的競争力の向上について協働する。我々は,地球規模課題への対処に向けた科学の貢献,及び第一級の科学教育を提供することの重要性を認識しつつ,2011年11月の日英科学技術協力合同委員会において決定されたとおり,気候変動,持続可能なエネルギー技術及びライフサイエンスの分野における共同研究を促進すべく一層努力する。
我々は,サイバー空間の利用の増大が世界の繁栄にもたらす莫大な利益,並びに情報の自由な流れ及び世界の安全保障を守ることの重要性を認識している。我々は,国家,民間セクター及び市民社会が,これらの利益を守るために協働する必要性を強調する。我々は,サイバー空間に関係する問題についての二国間の協議を強化し,2011年11月のサイバー空間に関するロンドン会議の結論を前進させるために,国際的に協力する。
安定した安全保障環境が社会的・経済的繁栄に資するとの見解を共有しつつ,東アジアは,ますます重要性を増し,その安定は我々の繁栄と安全保障に不可欠である。我々は,東アジアの不安定性及び不確実性の問題について協力し,対処する。
特に,我々は,北朝鮮が新たな指導部の下で,関連する国連安保理決議及び2005年の六者会合共同声明に従い,全ての核兵器及び既存の核計画,並びに弾道ミサイル計画を放棄しなければならないことを強調する。この文脈において,我々は,関連する国連安保理決議の違反となる北朝鮮によるミサイル発射の発表に対して,深い懸念を共有し,北朝鮮による自制を強く求める。また,我々は,北朝鮮が拉致問題を含む国際社会の人道上の懸念に取り組まなければならないことを改めて強調する。
中国の発展を機会と認識し,我々は,この地域及び国際社会において責任を有する,建設的なパートナーしての中国と共に取り組むことの重要性を強調する。
ミャンマーにおける最近の進展,特に4月1日の議会補欠選挙を歓迎しつつ,我々は,その政府に対し,民主化及び国民和解へ向けた努力を更に強化するよう奨励し,また,国際社会に対し,そうした努力を支持するよう求める。
アフガニスタンにおいて進行中のプログラム及びソマリア沖における海賊対処作戦は,世界の安全保障の強化に向けた日英の協力が有効であることを示している。日本は,2月23日のソマリアに関するロンドン会議を歓迎し,両国は,同会議の結果を支持するため協働する。英国は,2012年7月のアフガニスタンに関する東京閣僚級会合をホストする日本のイニシアティブを歓迎する。同会議は,国際社会及びアフガニスタンが,同国の持続可能な経済開発及びガバナンスの改善に対する互いの長期的コミットメントを示すための重要な機会となる。日英両国は,スーダン及び南スーダン両国の人々が安定し繁栄した未来を築けるよう,両国が立場を異にする未解決の分野を平和裡に解決するという目的を共有する。
我々は,中東及び北アフリカ地域の安定及び繁栄につながり得る,同地域における民主主義へ向けた歴史的な動きを高く評価する。我々は,より開かれた社会の構築及び社会経済上の問題の緩和に資する,同地域において進行中の改革のための努力を支援する。我々はまた,ドーヴィル・パートナーシップを通じ効果的援助を確保するとのコミットメントを再確認する。
我々は,何千人もの無辜の市民を死に至らしめたシリアの政権の残虐な行動を最も強い言葉で非難し,人道状況の悪化につき強い懸念を表明する。我々は,国連及びアラブ連盟の共同特使であるコフィ・アナン氏の,政治的解決を図ろうとする努力を支持する。我々は,シリア政府に対し,あらゆる形態の暴力を速やかに停止し,国連及び人道支援機関の自由かつ妨害されないアクセスを認めるよう求める。
中東地域の歴史的移行を背景に,イスラエル及び将来の独立したパレスチナ国家が平和裡に共存する中東和平を実現することは,従来以上に喫緊の課題である。この関係で,我々は,現在の直接交渉の停滞を深く懸念し,双方に対し,入植活動を含むあらゆる挑発的行動を控えるよう要求し,直接交渉の速やかな再開を強く希望する。
我々は,イランの核計画及び関連する国連安全保障理事会及びIAEA決議の度重なる不遵守を深く懸念し,それゆえ,イランに対し,それらを遅滞なく遵守するよう求める。我々は,イランとの対話が真の前進をもたらすことを希望する一方,イランが態度を変えるよう効果的な圧力を加えるため,国際社会と協働を続ける。
我々は,核兵器不拡散条約(NPT)及び関連する多国間の努力に基づく国際的な軍縮・不拡散体制を強化するコミットメントを改めて表明する。我々は,2015年のNPT運用検討会議に向け,2010年の同会議の成果を前進させるために協力している。また,我々は,本年の武器貿易条約に関する国連会議において効果的な条約を起草するための協力を再確認する。
我々は,国連安全保障理事会の改革の緊急性を共有する。英国は,日本の安保理常任理事国入りを支持し,日本は,英国の継続的な支持に感謝する。我々は,改革のための更なる協力を確認する。
我々はまた,国連海洋法条約,航行の自由や安全及び紛争の平和的解決を含む,普遍的に合意された国際法の原則に対するコミットメントが,海洋問題の分野において両国及び国際社会の利益となることを確認する。
日英両国間の安全保障及び防衛分野における協力及び関与の拡大を反映し,我々は,以下を決定した。
日英両首相が示したイニシアティブに基づき,日英両国は,世界の繁栄及び安全保障を促進するための共同の努力により上記の課題に取り組むため,関係大臣間及び政府高官間の既存の対話を深化させる。