1. 日程・出席者等
11月5日、ラオス(ビエンチャン)にて、アジア欧州会合第9回首脳会合(ASEM9)が開幕し、野田総理大臣が参加した。本会合からバングラデシュ、ノルウェー、スイスをASEMの新たな参加国として迎え、合計49か国・2機関の首脳等が一堂に会したASEM9の初日では、経済財政問題について意見交換が行われた。また、11月6日は、地球規模の課題、社会・文化協力、地域情勢等について議論された。
2. 議論の内容
- (1)第1セッション:「経済財政問題」
- (ア)野田総理から、欧州債務危機を最大のリスク要因とする世界経済の現状認識を示した上で、我が国がホストしたIMF世銀東京総会、我が国もいち早く貢献を表明したIMFの資金基盤強化、アジア地域の金融セーフティ・ネット強化において我が国が示したリーダーシップについて言及し、我が国として、財政健全化と経済成長を車の両輪として同時に進め、持続的成長を実現することで、両地域の発展に貢献する決意を示した。また、地域経済統合の強化に関しては、我が国として、幅広い国々と戦略的かつ多角的に高いレベルの経済連携を進める考えを表明した。さらに、リオ+20で発表した「緑の未来」イニシアティブ等に基づき、世界のグリーン経済移行に貢献する考えを示した。
- (イ)世界経済に関し、多くの欧州諸国が欧州債務危機からの回復に向けて引き続き解決すべき問題があることを認めつつも、欧州が変革・イノベーションの源泉として果たしてきた役割などを指摘しつつ、その潜在的な成長の可能性を主張した。その上で、成長センターであるアジア諸国との協力や相互依存の強化を通じて世界経済の回復に向けた活力が生じるとしてASEMの役割に期待するとの発言があった。概して、財政と経済成長のバランスなどの現状の問題点を冷静に分析し、将来に向けアジアと欧州がどのように協力できるかとの観点から取り組む必要性が共有された。
- (ウ)貿易の面では、アジア域内及びアジア諸国と欧州との間の地域連携により域内の投資と貿易の拡大を図ることの重要性に言及する国が多かった。また、ASEAN諸国を中心に、地域の連結性の強化が貿易自由化にとって重要であるとの指摘もあった。概して、それぞれの参加国が先進国、新興国、途上国といったその国の現実に応じ、両地域の貿易の活性化に貢献すべきというトーンの発言が多かった。いくつかの国はWTOドーハ・ラウンドを活性化させる必要性を指摘した。
- (エ)また、成長と地球環境の両立という観点から、グリーン経済への速やかな移行が必要であるとの意見が、先進国を中心に多く見られた。その他、経済成長には、雇用創出、貧困の撲滅、男女の機会均等といった社会的側面からの対応が重要である点を指摘する国もあった。
- (2)第2セッション:「地球規模の課題」
- (ア)二日目の午前中は「地球規模の課題」について議論を行い、その後引き続いて、第三セッション「社会・文化協力」が開催された。なお、この2つのセッションにおいては、当初から、野田総理の登録発言は予定されていなかった。
- (イ)地球規模の課題のセッションにおいては、気候変動、軍縮・不拡散、エネルギー安全保障、食料安全保障、水資源管理、防災、テロ対策及び海賊対策について議論がなされた。
- (ウ)このうち、最も言及が多かったのは、気候変動であった。次いで、水資源管理及び食糧安全保障についての発言が見られた。その他、防災、海賊問題及び麻薬対策の問題についても言及があった。
- (エ)全体的な方向性として、グローバル化に伴う諸問題への対処にあたっては、国際的な協調行動が不可欠であり、そのための様々な多国間プロセスがあるが、ASEMにおける対話を通じて参加国の信頼と共通認識を醸成することによって、そのような国際的枠組みでの合意が容易になることへの期待が共有された。
- (3)第3セッション:「社会・文化協力」
- (ア)社会・文化協力は、ASEM創設以来、政治、経済と並ぶ三本柱の1つであり、ASEMの特徴の1つである。こうしたASEMの特徴を踏まえ、社会・文化協力がASEM9の議題となっていることを歓迎する趣旨の発言が多く出た。
- (イ)言及が多かったのは、教育であり、その関連で、留学などを通じて、人と人との交流を促進することが相互理解の促進にもつながるという指摘もあった。
- (ウ)社会面での協力については、雇用や社会政策に関する参加国間の対話を通じて人材育成や能力開発における協力の強化が進んでおり、これが経済成長や雇用創出につながっているとして、こうした活動をより積極的に開催すべきとの指摘があった。
- (4)第4セッション・ワーキングランチ:「地域情勢」
- (5)第5セッション:「ASEMの将来の方向性」
- (ア)このセッションでは、以下のラインで野田総理からアジア側冒頭発言を行った。
- (ⅰ)ASEMがアジアと欧州を結ぶ唯一のフォーラムであるとした上で、アジアと欧州が関心を有する課題について議論し、認識を共有することは、両地域のみならず国際社会の平和と安定にとっても重要。
- (ⅱ)ASEMの意義として、政治・安全保障、経済、社会・文化協力の3点から説明した。それを受け、ASEMの将来について、基本的価値を共有する場として期待。すなわち、アジアと欧州がその文化的社会的多様性を認識しつつ、基本的価値は普遍的なものであり、これら価値観を共有することは可能であるという見方を表明。また、拡大するASEMの運営に関し、効率性を重視するあまり過度に機構化すべきではなく、現在の対話のフォーラムとしての特徴を維持しつつ、効率性の向上に向けた議論に日本も積極的に貢献していくとの意思を表明した。
- (イ)議論においては、ASEMがあらゆる問題を取り上げることのできる対話のフォーラムとしての特性に鑑み、その潜在的な可能性は高いという意見が多く出された。拡大については、ASEMは開かれたフォーラムであり、ASEMに貢献する意思と能力を有する国には開放的であるべしということで意見の一致があった。同時にASEMの将来の方向性については、効率性については改善の余地があるとして、議長サポートグループの活用に加えていかなる方策があり得るかを次回の首脳会議までに検討することで一致した。
- (ウ)なお、このセッションにおいて、来年のASEM外相会合は、11月14、15日にインドのニューデリーで開催されることが表明された。
- (1)「ASEM9議長声明」(骨子)(仮訳・英文(PDF)
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- (2)「平和と開発のためのパートナーシップの強化に関するビエンチャン宣言」(骨子)(仮訳・英文(PDF)
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3. 発出文書
以上の議論を踏まえて、以下の成果文書が発出された。
4. 二国間会談等
野田総理は、ビエンチャン滞在中、トンシン・ラオス首相、フン・セン・カンボジア首相、トゥスク・ポーランド首相、アキノ比大統領、トーニング=シュミット・デンマーク首相と二国間会談を行ったほか、日・EU首脳会談も行った。このほか、インラック・タイ首相、ズン・ベトナム首相と懇談を行い、二国間関係や国際情勢につき意見交換を行った。