福田総理大臣

福田総理の中国訪問(概要と評価)

平成19年12月30日

1.訪問日程概要(12月27日~30日)

日付 概要
28日 温家宝総理との会談・署名式・共同記者会見・昼食会、講演(北京大学)、
呉邦国全人代委員長との会談、胡錦濤国家主席との会談及び夕食会
29日 民間友好団体朝食会、温総理とのキャッチボール、小学校視察(以上北京)
天津市書記主催昼食会、天津濱海新区視察、山東省書記主催夕食会
30日 曲阜(孔子廟)視察、中国中央電視台インタビュー

2.概要と評価

1)首脳間の信頼関係を強化する上で有意義な訪問(胡主席の桜の咲く頃の訪日で一致)。

2)日中協力のアジア、国際社会における重要性、責任につき一定の認識を共有(創造的パートナー)。

3)幅広い分野での「戦略的互恵関係」の具体化につき合意。

4)北京大学での講演、CCTVインタビューを通じ、中国全土の国民、若者達に直接語りかけ。

5)孔子の故郷を訪れ、思想面での日中間のつながりを想起させる機会とした。

(1)「戦略的互恵関係」の具体化

 温総理との会談等で、主に以下について議論。環境・エネルギー、青少年交流、安全保障分野での交流、科学技術協力等多くの分野での「戦略的互恵関係」の具体化に途。

(イ)互恵協力の強化

1)気候変動/環境・エネルギー 気候変動について福田総理より、子孫及び国際社会に対する責務、全ての主要経済国が責任ある形で参加する実効的な枠組み構築が必要と強調し、積極的協力で一致。また、福田総理より、資料を用いて中国は環境改善の余地が大きいことを指摘し、中国各地で日本の技術を紹介する「省エネ・環境協力センター」の設置、3年間で1万人の研修実施等を表明。

2)知的財産権 福田総理より知財面での協力強化、地方での日本企業と中国側関係機関の連携等を要請。

3)農業 福田総理より対中コメ輸出について引き続いての配慮を要請。

(ロ)交流・相互理解の促進

1)安全保障分野における交流 福田総理より来年の日本側艦艇派遣を表明。また、人民解放軍と自衛隊の青年幹部の相互訪問、民間関係者との交流につき一致。

2)青少年交流・知的交流等 4年間毎年4千人の青少年交流、知的交流強化で一致。福田総理より中国国民団体観光の査証緩和措置を表明。

3)その他、福田総理より羽田-北京南苑チャーター便の開設について協力を要請。また、国会の承認を得て、青島総領事館を開設したい旨表明。

(ハ)地域・国際社会における協力

1)北朝鮮 核放棄に向けた連携で一致。福田総理より拉致問題を含む日朝関係について説明し、温総理より日朝双方が対話を通じ関係を改善することへの支持を表明。

2)反テロ 双方はブットー・パキスタン元首相殺害に関しテロ行為を非難。

3)国連安保理改革 福田総理より中国のより積極的な態度を要請。温総理より、日本の国連における地位と役割を重視している旨発言。

(ニ)東シナ海資源開発問題

 双方は、これまでの協議を通じて相互理解が一層深まり、具体的解決策についても積極的な進展が得られたことを確認。同時に双方はこの問題を早期に決着させるという断固たる決意を共有し、今後も協議を継続し、一刻も早い解決を目指すことで一致。

(ホ)歴史・台湾

 温総理より歴史と台湾問題は日中関係の政治的基礎である旨述べ、台湾情勢について懸念を表明。福田総理より振り返るようなことがつらいような歴史であればこそ直視すべき、将来に誤りをなきよう期すことが私の仕事、平和国家としての歩みへの中国国民の理解を求める、また、我が国の台湾に関する立場は、日中共同声明にあるとおり、平和的解決を望む、一方的な現状変更の試みは支持できず、台湾の公民投票を巡って両岸に緊張が高まるようなことは望んでおらず、また、これが一方的な現状変更につながっていくのであれば、支持できない旨表明。

【合意に至った共同文書】

(2)相互信頼構築/中国国民の対日理解・対日感情の改善

(イ)日中関係に対する福田総理の考え方を中国首脳のみならず、地方指導者や北京大学におけるスピーチ(中国国内で全国生中継)、CCTVのインタビュー(人気番組で放映予定)等を通じて幅広い中国国民に対して、創造的パートナーとしての日中両国の将来と、そのためになすべきことにつき直接語りかけた。

(ロ)温家宝総理とは、歓迎式典・会談・署名式・共同記者会見・民間友好団体朝食会・キャッチボールをあわせ計5時間半、胡錦濤主席とも会談・異例の夕食会をあわせ計2時間ともに過ごし、親密に話し合い、個人的信頼関係が大きく強化された。

(ハ)孔子の故郷である曲阜を訪問することで、日中間の長きにわたるつながりを想起させ、中国国民に日本に対する親しみを感じさせることができた。

【北京大学におけるスピーチ(骨子】

1)両国が今ほどアジアや世界の安定と発展に貢献できる力を持ったことはない。アジア及び世界の良き未来を築き上げていく「創造的パートナー」たるべし。

2)日中平和友好条約締結30周年を迎える2008年を日中関係の飛躍元年に。

3)日中両国は責任とチャンスに直面。世界が日中両国に注目し、期待している。

4)戦略的互恵関係の3つの柱。(i)「互恵協力」(環境・省エネ、知財保護等)、(ii)「国際貢献」(気候変動、北朝鮮、国連改革、アフリカ等)、(iii)「相互理解・相互信頼」(青少年、知的交流、安全保障分野における交流強化。)

5)今後も平坦な道ばかりではないが、感情的な言論に流されることなく、世界の潮流や大義に沿って日中関係を方向付け、未来を創造していくという姿勢が大切。

6)日中は単に利益のみで結びついている存在ではなく、長い交流の歴史を持つ隣国。人権、法治、民主主義といった普遍的価値の追求とともに、両国に深く埋め込まれた共通の基盤・価値に思いを致すことも重要。

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