安倍総理大臣

日米首脳会談の概要

平成19年4月27日

 安倍総理は、4月26日及び27日に総理として初めて訪米し、27日にはキャンプ・デービッドにおいてブッシュ大統領との日米首脳会談(会談約1時間30分(冒頭約45分は一対一の会談)及びワーキングランチ(約1時間))を行った。両首脳は、前日の晩餐会と合わせて計約6時間を共に過ごすこととなった。
 (日本側は、下村官房副長官、小池総理補佐官、加藤駐米大使他、米側は、ライス国務長官、ゲーツ国防長官、ボルテン大統領首席補佐官、ハドレー国家安全保障担当大統領補佐官、シーファー駐日米大使他が同席。)
 両首脳は一対一の会談において「ジョージ」「晋三」と呼び合うことで合意するなど個人的な関係を深めた。

1.同盟の強化と個人の信頼関係

(1)総理より記者会見の冒頭で述べたとおり、今時訪米の最大の成果は、ブッシュ大統領との間で「かけがえのない日米同盟」を確認し、この同盟を強化することに合意したことである。両首脳は、日米同盟に立脚して東アジアの諸課題に対処すること、幅広い分野における協力を強化することで一致した。

(2)日米安保については、両首脳は、日米同盟に基づく抑止力の重要性につきあらためて認識を共有するとともに、在日米軍再編の推進及び弾道ミサイル防衛(BMD)協力の深化をあらためて確認した。安倍総理から、在日米軍再編に関して、昨年5月の合意の着実な実施が重要であり、普天間飛行場の移設・返還についても合意通りに実施する旨述べた。

(3)経済面での協力については、新興経済諸国の台頭が世界経済にもたらす影響を念頭におきつつ、エネルギー、知的財産権、安全かつ円滑な貿易等のグローバルな広がりをもつ経済課題での協力を強化することで一致した。また、4月24日に甘利経産大臣から発表のあった日米原子力エネルギー共同行動計画に基づく協力の方針が確認された。

(4)文化交流については、日米関係の礎が両国民の交流と相互理解にあるとの観点から両国間の知的交流を強化するための日米文化・教育交流会議(CULCON)の改革に合意した。

(5)一対一の会談の内容は基本的に対外的に明らかにしないことで合意されているが、共同記者会見における安倍総理自身の発言によれば、お互いの政治信条を語る中で、安倍総理より、安倍内閣の使命として、戦後レジームからの脱却を目指しており、その一環として、日本を巡る安全保障環境が大きく変化する中、時代に適合した安全保障の法的基盤を再構築するための有識者懇談会を今次訪米前に立ち上げたことについて説明した。また、経済についても、日本の成長が米国はもちろん、世界全体の成長にとっても重要との観点から、構造改革を断行する決意を伝達した。大統領からは、こうした総理の姿勢に力強い支持の表明があった。

2.アジア情勢

(1)北朝鮮については、六者会合を通じて北朝鮮の核兵器・核計画の完全な放棄を実現すべく努力することで一致した。仮に北朝鮮が正しい選択をしない場合には、圧力を強めることで一致した。拉致問題に関しては、ブッシュ大統領から、昨年の横田早紀江さんとお会いしたときに受けた強い印象は今でも残っており、日本国政府に対する変わらぬ支持を確約したいとの発言があった。そして、日米で事態の進展のために連携していくことで一致した。
 また、安倍総理から米国によるテロ支援国家指定解除の問題を取り上げたのに対し、先方は、この問題については指定解除のプロセスを開始することに合意されただけであり、これから長い道のりになるとした上で、拉致問題についても考慮に入れるとの立場の表明があった。ブッシュ大統領は、さらに記者会見において、このプロセスが拉致被害者に対する同大統領の強い感情を弱める(obscure)ものであってはならないと述べた。

(2)中国については、安倍総理より、一対一の会談において先般の温家宝総理訪日の成果を説明し、また、中国が国際社会でより建設的な役割を果たすことを日米が歓迎することで一致した旨、全体会合において紹介があった。

(3)日米豪の協力を強化することで一致した。また、安倍総理より、アジア太平洋地域における主要民主主義国が対話と協力を深め、地域における繁栄と民主化という基本的方向性を支えることが重要であるとの観点から、日米両国に加え、インド、豪州といった国々との間で対話を行うことは有益である旨述べた。これに対し、ブッシュ大統領より、こうした総理のアイディアに対し前向きな反応があり、今後事務レベルで調整していくこととなった。

3.気候変動

 気候変動問題については、大きな進展があり、温室効果ガス濃度の安定化に向けてその具体的方途を日米が共に検討し、そのための対話を強化することに合意し、共同声明を発出した。また、安倍総理より、中国・インドを含むすべての主要排出国が参加する実効性のある国際的枠組みの構築が重要であり、温家宝総理にも伝えた旨述べた。

4.中東情勢

(1)イラク及びテロとの闘いについては、安倍総理よりイラクの安定と復興に向けた米国の努力を理解、支持する旨述べ、イラク特措法の2年延長改正法案について説明したところ、ブッシュ大統領から謝意が表明された。テロとの戦いの文脈では、アフガニスタン及びパキスタン支援を強化することでも一致した。

(2)中東情勢については、安倍総理より、中東の安定は我が国の死活的な利益であり、この観点から、明28日からサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カタール及びエジプトを訪問し、これらアラブ諸国との関係強化を通じて、地域の安定化に努めたい、これらの諸国との間で、エネルギー重視の外交を超えた次元で、幅広く重層的な関係を築いていきたいと考えている旨説明した。

(3)イランの核問題については、国際社会が一致してイランへの圧力を高めながら、本件を平和的に解決するための道筋を探すことで一致した。

(4)中東和平について、安倍総理より、和平プロセス再開に向けた米国の取組を支持するとともに、我が国の取組として「平和と繁栄の回廊」構想について言及した。日米で、アッバース・パレスチナ自治政府大統領を目に見える形で支援することで一致した。

5.国連安保理改革

 安倍総理より、我が国の常任理事国入りに対する米国の支持に感謝の意を伝えつつ、国連安保理改革の必要性について提起した。両首脳は、日米間で引き続き安保理改革について協力していくことで一致した。

6.慰安婦問題

 慰安婦問題については、安倍総理からの説明に対し、ブッシュ大統領より安倍総理の発言は非常に率直かつ誠意があり、その発言を評価するとの発言があった。

このページのトップへ戻る
前のページへ戻る | 目次へ戻る