平成18年12月9日
9日、フィリピンを公式訪問中の安倍総理大臣は、マラカニアン宮殿において、9時25分(日本時間10時25分)頃より約1時間10分にわたり、アロヨ大統領との間で首脳会談を行ったところ、概要以下のとおり(日本側から、下村官房副長官、世耕総理補佐官、山崎駐フィリピン大使他が、フィリピン側から、エルミタ官房長官、テベス財務長官、ファビラ貿易産業長官、シアゾン在京大使他が同席。)。
アロヨ大統領より、本日の首脳会談は、国交正常化50周年である日フィリピン友好年のハイライトである旨述べ、総理よりも、今回の会談は国交正常化50周年である本年の締めくくりであり、新たな半世紀に向けて各分野の交流と協力を包括的に推進していくことを謳う共同声明を会談後発表できるのは喜ばしい旨述べた。また、総理より、今般のルソン島南部の台風災害による犠牲者へのお見舞いの意を伝え、既に実施している緊急援助物資提供に加え、100万ドルを上限とする追加的な緊急無償資金協力を行うこととしたい旨述べた。
(1)政策対話の促進等
総理より、自由、民主主義等の基本的価値や安全保障面での利害を共有するフィリピンとの間で政治・安全保障の対話を強化したい旨述べた。これに対し、アロヨ大統領よりも、そのような対話を進めることは重要である旨、またそうした協力を一層進めていくためにも、日本の防衛庁の防衛省への昇格を歓迎する旨述べた。
(2)経済関係
総理より、9月に署名された日比経済連携協定(EPA)について、フィリピンにおける迅速な手続への期待を表明したのに対し、アロヨ大統領より、同協定については、批准のため上院に提出している旨説明があった。また、両首脳は、今般、両国が租税条約改正議定書の署名に至ったことを歓迎した。
(3)ミンダナオ支援
アロヨ大統領より、ミンダナオ和平の現状について説明があった。これに対し、総理より、ミンダナオ和平は、地域の安定と発展に極めて重要であることを指摘しつつ、我が国が派遣した復興・開発の専門家が10月より現地で活動を開始していること、元紛争地域における草の根・人間の安全保障無償資金協力として既に12件の実施を決定したこと等を紹介した。これに対し、アロヨ大統領よりは、我が国の積極的な貢献への感謝の意が示された。
(4)経済協力
アロヨ大統領より、日本はフィリピンへの最大のODA供与国であり、非常に感謝している。第27次円借款の話もスタートしたことを喜んでいる。フィリピンは平和、民主主義の国であり、人権問題も重視している。ODAとの関連で、「政治的殺害」を問題視する向きもあることは承知している。こうした問題については、法の支配の下、適切に対処していく旨述べた。
これに対し、総理より、第27次円借款供与については、先般我が国政府ミッションを派遣しており、鋭意検討を進めたい旨述べるとともに、フィリピンの人権状況についての日本国内の強い関心を伝達した。
(5)エネルギー安全保障
総理より、JBICとアジア開発銀行の協調融資によりフィリピンの電力セクター改革を支援することが決定されたこと等その他の協力についても説明し、これに対し、アロヨ大統領より、日本からの種々の支援に感謝する旨発言があった。
東アジア地域協力については、総理より、開放性・透明性・包含性と普遍的価値の強化を基本とすべきとの考えを述べた上で、この機会をとらえ、セブで表明を予定していた東アジア地域協力のための具体的取組をいくつか説明したいとして、次の7点を述べた。
これらの総理の説明に対し、アロヨ大統領よりは、重要な支援策の表明に深く感謝する旨述べた。
(1)アジア・ゲートウェイ構想
(2)青少年交流拡大(今後5年間毎年6,000人程度の青少年を日本の招く350億円規模の交流計画)
(3)日ASEAN経済連携の促進に対する支援(総額5,200万ドルを新規拠出)
(4)鳥インフルエンザ対策(6,700万ドルの追加拠出)
(5)防災協力
(6)メコン地域支援(今後3年間の「日本・メコン地域パートナーシップ・プログラム」への協力)
(7)平和構築分野の人材育成構想
総理より、北朝鮮にすべての核兵器及び既存の核計画の放棄に向けて前向きな対応を促すためには、安保理決議第1718号の履行が重要であることを指摘した。さらに、総理より、拉致問題は、国民の生命にかかる重大な問題であり、国際的な連携を通じて早急に解決したいと述べ、国連の「北朝鮮人権状況」決議に対するフィリピンの理解と支持を求めた。
これに対し、アロヨ大統領より、北朝鮮の問題については、日本の立場を支持している。拉致の問題については、人権の明白な侵害である旨述べた。