平成20年10月19日
10月18日(土曜日)~19日(日曜日)、アブダビ(アラブ首長国連邦(UAE))において、拡大中東・北アフリカ構想(BMENA)「未来のためのフォーラム」第5回閣僚級会合が開催されたところ、概要と評価は以下のとおり。
日付 | 内容 |
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10月18日(土曜日) | 裏千家によるお茶会(中曽根大臣出席) ワーキング・ディナー(中曽根大臣出席) |
10月19日(日曜日) | 閣僚級会合(橋本副大臣出席) 共同記者会見(橋本副大臣出席) |
我が国(G8議長国)およびUAE(BMENA側議長国)が共同議長を務め、G8、中東・北アフリカ諸国、国際機関、NGO等、約45の国と機関が参加。
(1)ワーキング・ディナーにおいては、中東を巡る情勢や金融危機への対応等について、閣僚のみで議論が行われた。冒頭、UAEに引き続き共同議長として中曽根大臣から発言を行い、我が国は中東諸国による改革努力を重視しており、中東の安定のために、そのような改革努力を支援していく旨、また、世界経済は、未曽有の金融危機と実体経済の減速への対応で極めて重要な時期を迎えており、この危機を深刻化させぬよう、他の諸国とも協調しつつ、日本としてできるかぎりの対応をしていく旨表明した。その後の議論においては、現在、世界経済が直面している食糧・エネルギー危機や金融危機を更に深刻化させぬよう、各国が協調して取り組む重要性が相次いで指摘された。
(2)閣僚級会合においては、「政治改革」と「持続可能な発展」の2本の柱の下、表現の自由および民主的改革の促進、女性のエンパワーメント、教育改革、失業問題と職業訓練、政府と市民社会を含む民間との協力、環境、食糧危機等について活発な議論が行われた。
議論では、第1回閣僚級会合以降の、政府と市民社会とのパートナーシップによる中東・北アフリカ地域における民主化・改革努力の進展に対し、多くの参加者から歓迎の意が示された。他方で、改革は外部からの押しつけではなく、地域の自主性や文化の多様性を尊重した内生的なものであるべきとの指摘も引き続きなされた。会議終了後、議長サマリーが発表された。
我が国からは橋本副大臣が共同議長を務め、開会および閉会のスピーチでは、改革のためには経済や社会の基盤の整備が不可欠であることや、地域の自主性と多様性を尊重しつつ人を育てることの重要性を強調した。
(3)次回「未来のためのフォーラム」は、G8議長国であるイタリアと、BMENA側議長国であるモロッコの共催で行われる予定。
4.評価
(1)「拡大中東・北アフリカ構想」は、2004年のシーアイランド・サミットにおいて米国の提唱で開始され、中東諸国の改革努力を支援するための対話・協力の場として、これまで3回にわたり閣僚級会合が行われてきた。我が国は、G8議長国としてUAEとともに共同議長を務め、2年ぶりの閣僚級会合(注:昨年の第4回会合は中止)の運営にあたった。
(2)UAEは、主催国として本件会合に熱心に取り組み、共同議長国である我が国に対する期待も大きかった。中曽根大臣は、20日(月曜日)の新テロ特措法の国会審議のため、初日のみの参加で帰国の途に着いたが、滞在1日弱の強行日程でUAEを訪問したことを先方は高く評価した。また、アブドッラーUAE外相は、新特措法に関連して、「テロとの闘い」における我が国の役割を高く評価するとのスピーチを行った。今回、UAEと協力してこれだけの規模の会議を運営し、成功したことは、日UAE二国間関係の観点からも大変有意義であった。
(3)本件構想がブッシュ政権の中東民主化政策の流れの中で始まった経緯もあり、当初、来年以降の継続を疑問視する向きもあったが、多くの国が本件フォーラムの重要性を指摘し、明年のG8議長国イタリアがモロッコを共同議長国として本件閣僚級会合を開催することを発表したことにより、本件プロセスの定着が確認された。
(4)会合には、多くの市民団体が参加し、政府の側からも、政府と市民社会との対話や協力、改革における市民団体の役割の重要性が強調された。これは、中東においても、市民社会との対話の流れは不可逆になってきていることを示すものである。