外務大臣

前原外務大臣のロシア訪問(結果概要)

平成23年2月12日

 2月11日及び12日,前原大臣はモスクワを訪問し,ラヴロフ外務大臣と日露外相会談を行うとともに,フリステンコ産業貿易大臣と貿易経済に関する日露政府間委員会第9回会合を実施し,さらに,ナルィシュキン大統領府長官とも会談した。これら一連の会談の結果概要は以下のとおり。

I 日露外相会談(11日,午前11時から午後3時)

1 全体

 両国間にある問題を乗り越え,アジア太平洋地域におけるパートナーとしてふさわしい関係を構築するため,政治(領土問題)・経済・文化・国際舞台での協力等のあらゆる分野において日露関係を発展させていくことで一致した。

2 領土問題

  1. (1) 前原大臣から,北方四島は日本の固有の領土であり,その返還を求めるという日本の基本的立場を改めて明確に伝達した。また,前原大臣から,昨年11月のメドヴェージェフ大統領による国後島訪問以降もロシア政府要人の北方四島訪問が相次いでいることについて,遺憾の意を伝達した。これに対し,ラヴロフ外相は,従来のロシア側の立場を主張しつつ,2月7日(北方領土の日)の日本側の様々な発言が両国関係の雰囲気を悪化させたと指摘し,平和条約問題について前提条件や一方的な歴史のリンケージなしに作業を行うべきであると述べた。
  2. (2) 領土問題をめぐり,日露間の立場に大きな開きがあることが確認されたが,これまでの両国間の諸合意に基づいて双方にとって受入れ可能な解決策を模索する必要があり,静かな環境下で協議を継続していくことで一致した。
  3. (3) ラヴロフ外相から,平和条約問題に関し,日露双方の歴史専門家による委員会を設置して議論を行うことが提案されたが,前原大臣からは,北方領土問題をめぐる歴史的議論が過去にも十分に行われてきている中で,現時点でそのような委員会で議論することに疑問を呈した。
  4. (4) 北方四島における共同経済活動について,日本の法的立場を害しない前提で何ができるかを日露双方のハイレベルで議論していくこととなった。

3 国際舞台における協力

  1. (1) 国際社会の主要課題の解決に向けた責任を共同で果たすべく,日露双方が国際舞台における協力の実績を積み重ねていくことが重要であることを確認した。具体的には,1)マルチ外交の分野,2)北朝鮮,アジア太平洋を始めとする主要な地域問題において日露間で戦略的な対話を緊密に行っていくこととなった。
  2. (2) 特に,アフガニスタンの麻薬対策に関する協力が具体化していることに関し,本件が日露間の国際舞台での協力の実質的第一歩として成功を収めていることを歓迎した。
  3. (3) この他,北朝鮮問題及びアジア太平洋地域における日露両国の安全保障政策及び同地域の安全保障環境の状況について意見交換を行った。

4 経済面での協力

  1. (1)日露双方の企業の利益となり,日露両国にとってメリットのある互恵的な成功案件を一つでも多く積み重ねていくことを確認した。
  2. (2)日露原子力協定の締結に向け,ロシア側の国内手続が完了し,我が国でも国会提出作業が進められるなど,着実に前進していることを歓迎した。

5 今後の政治対話

 首脳間,外相間を始めとするあらゆるレベルでの対話を行うとともに,日露戦略対話や次官級協議を行っていくことを確認した。

II フリステンコ産業貿易大臣との貿易経済に関する日露政府間委員会第9回会合(11日,午後3時15分~午後6時30分)

  1. 1.日露間の互恵的な経済関係の進捗につき議論。資源確保や日本企業の海外展開といった日本経済の活性化という観点からも有意義な会談となった。
  2. 2.主な成果は以下の3点。
    1. (1) 本年中にロシアにおいて,前原大臣及びフリステンコ産業貿易大臣をはじめとする日露政府ハイレベル及び日露企業関係者が参加する官民会合(円卓会議)を開催することで原則的に一致した。
    2. (2) 両国企業が,案件進捗に際して直面する問題(コンプライアンス,行政手続等)について相談するための窓口を日露政府内に次官級(日本側:西宮伸一外務審議官,ロシア側:スレプニョフ経済発展省次官)で設けることに一致。
    3. (3) 前原大臣から,エリガ炭田開発,サハリン3など,日本企業が関心を有している案件についてロシア側に働きかけた。また,貿易投資環境整備の重要性で一致した。

III ナルィシュキン大統領府長官との会談(12日,正午~午後0時45分)

  1. 1.平和条約問題を含む今後の日露関係のあり方について議論が行われた。
  2. 2.その中で,ナルイシュキン長官からは,1)大統領も,その他のロシアの高官も,過去に訪問してきたように,今後も「クリル」諸島を含むロシアの地方を訪問していく,2)日本側の高官による反露声明は,領土問題に関する議論の継続の意義を失わせるのみであった,3)その上で,前提条件なしに領土問題について議論を続ける用意があるとの発言があった。これに対し,前原大臣からは,1)ロシア政府要人の北方四島訪問や北方領土はずっとロシアのものであるとの発言等は,日露の戦略的関係を進めるのにふさわしくない環境を作り出す,日露関係の戦略的重要性について合意するのであれば敏感な問題について大局的観点から配慮すべきである,2)お互いが直接話し合い,双方が疑心暗鬼にならないように意思疎通することが重要である旨述べた。
  3. 3.双方は,首脳,外相その他の高官レベルでの意思疎通を緊密にして信頼関係を保ちながら関係を発展させていくことで一致した。
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