経済

WTO新ラウンド交渉
(7月一般理事会等の概要と評価)

平成17年7月29日

 7月27日から29日にかけてジュネーブにおいて、WTO一般理事会及び貿易交渉委員会が開催されたところ、概要と評価は以下のとおり。我が国からは、島村農林水産大臣、中川経済産業大臣、福島外務大臣政務官が出席。

1.概要

(1)全般

(イ)WTO新ラウンド交渉においては、12月の香港閣僚会議に向けて、7月末までに香港での合意事項の「たたき台」を作成するべく交渉が進められてきた。

(ロ)今回の一般理事会等は、たたき台の要素となる農業や非農産品市場アクセス(NAMA)分野などでの進捗状況を報告し、加盟国間で議論するために開催されたもの。

(ハ)大連非公式閣僚会合以降、加盟国間で集中的な交渉が続けられ、解決するべき論点が明確になったが、主要分野である農業やNAMAにおいては、何れも政治的決断を必要とするものであり、加盟国間の立場の収斂に至ることはなく(詳細各論参照)、今後の交渉に委ねられることになった。

(ニ)交渉のとりまとめ役であるスパチャイ事務局長からは、1)交渉の現状は当初想定していたよりも進展しておらず残念なものであるが、失敗したわけではない、2)秋以降に交渉を再開し、主要論点を早期に解決するべき、3)今後の交渉の中心はジュネーブであるべきで、10月中旬をめどに交渉の現状を閣僚レベルで中間評価する機会を設けるべき、等の報告があった。

(2)農業

(イ)大連での非公式閣僚会合で、関税削減方式に関して「中間点」を探ることで合意したことも受けて、グローサー議長の下で我が国も含む少数国会合が続けられた。しかし、政治的決断を伴う主要論点(例:市場アクセス分野の関税削減フォーミュラの構成要素や国内支持の新「青」の政策の基準)についての合意の方向が見いだされるには至っていない。

(ロ)この状況を踏まえて、グローサー議長からは、主要3本柱(輸出競争、国内支持、市場アクセス)における今後の課題について報告があった。
―輸出競争:「全ての輸出補助金」の定義
―国内支持:AMSの削減に関するEU、我が国、米国の位置づけ、新青の政策の規律等
―市場アクセス:以前に議長が提起した4要素(階層の数、その敷居値、階層内フォーミュラ、センシティブ品目)

(3)NAMA

(イ)農業での膠着状態もあって、関税削減方式については、以前と比べて各国の立場の収れんが見られるものの、先進国および途上国に一定の支持の広がりが見られるスイス方式とインド、ブラジル等が主張するジラール方式との対立は解消に至らず。

(ロ)しかしながら、非譲許品目の扱いについては、「3つの原則」( 1)100%譲許、2)フォーミュラ適用、3)低関税非譲許品目への配慮)については、インド等一部の国以外の国は受け入れており、概ね収斂ができつつある。

(ハ)ヨハンソン議長からは、概ね上記の状況をそのまま確認する内容の報告があり、今後は野心と柔軟性のバランスを具体的に議論していくことの重要性に言及があった。

(4)開発

(イ)特別かつ異なる措置(S&D)については、後発開発途上国(LDC)からの提案について集中的な交渉が行われてきたが、合意に至ることはなかった。

(ロ)上記の状況を踏まえて、イスマイル議長から合意に至らなかったことは残念であるが、加盟国間の立場はかなり縮まっており、合意を目指して交渉を続けるとの報告があった。

(5)サービス

 交渉会合議長から、今後の課題として、リクエスト・オファー方式を補完するアプローチの検討や技術支援などの課題が挙げられた。

(6)ルール、貿易円滑化

 各交渉会合議長から、交渉の現状について報告があり、今後とも着実に交渉を進めていく必要性が強調された。

2.我が国閣僚の動き

 島村、中川両大臣及び福島政務官から、一般理事会、貿易交渉委員会及び二国間会談等を通じて、各交渉分野における我が国としての考え方を主張するとともに、9月以降香港閣僚会議に向けて再び真剣な交渉を行うべきこと、ラウンド全体でバランスのとれた結果を実現するべきこと、我が国としても建設的に関与していくこと等を発言した。

3.評価

(1)農業や非農産品市場アクセス(NAMA)の主要論点について収斂に至らず、香港閣僚会議に向けて秋以降の作業の多くの課題を残すことになったことは残念。

(2)他方で、農業などでは集中的な交渉が行われ、論点はかなり明確になった。また、非農産品市場アクセス交渉(NAMA)分野での非譲許品目の扱いなど、メンバー間で大まかな形でコンセンサスができつつある事項もあり、進展が見られていることも事実。

(3)各加盟国は、8月に交渉の現状及び自国の立場の評価を行った上で、秋以降の交渉に臨むこととなる。香港閣僚会議までに残された時間は短く、主要論点について早期に解決を見出すことが香港閣僚会議の成功のためには必要。

(4)我が国としても、香港閣僚会議における農業とNAMAのモダリティ作成、サービスのクリティカル・マス、開発、ルールや貿易円滑化における実質的進展という当初の目的に向かって引き続き建設的に交渉に参画していく。

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