経済

貿易のための援助(AFT)グローバル・レビュー会合
(概要と評価)

平成19年11月27日

 11月19日(月曜日)~11月21日(水曜日)、スイス・ジュネーブにおいて貿易のための援助(AFT)グローバル・レビュー会合が開催されたところ、概要と評価は以下のとおりです。

1.背景

(1)貿易のための援助(Aid for Trade:AFT)は、開発途上国が貿易から十分な利益を得るためには貿易自由化だけでは不十分であり、貿易関連の技術支援、生産能力の向上や流通インフラ整備等を含めた供給面での支援、貿易自由化に伴う構造調整面での支援が必要であるとの観点から、WTO、OECD、世銀等で行われている議論。

(2)WTOにおいては、2005年12月の香港閣僚宣言によりAFTに関する取組が謳われる等、議論が活発に行われている。本年には、WTOと地域開発銀行等の共催で、地域毎にAFTを議論する地域レビュー会合が実施された。今回のグローバル・レビュー会合はこれらの議論の締め括りとして開催された。

(参考)

9月13日~14日 ラ米・カリブ海地域レビュー会合(於:ペルー)
9月19日~20日 アジア・太平洋地域レビュー会合(於:フィリピン)
10月1日~ 2日 アフリカ地域レビュー会合(於:タンザニア)

2.AFTグローバル・レビュー会合の概要

(1)日時:11月19日(月曜日)~21日(水曜日)

(2)開催地:スイス・ジュネーブのWTO本部

(3)会合の目的

(イ)AFTについての現状の把握

 AFTの統計データ、ドナー及び援助国の自己評価、地域レビュー会合の結論につき検討し議論する。

(ロ)今後取り組むべき課題の特定

 AFTについての意識向上から実施へ焦点を移し、今後の作業のためのロードマップについて合意する。このために来年以降のWTOのモニタリング計画に技術レベルの対話、分析作業、情報共有を含める。

(ハ)モニタリングと評価の改善

 AFTの質的評価についての概念整理を行うことで、AFTのモニタリングや評価の方法を改善する。世銀やOECDの役割が期待される。

(4)議事日程

19日(月曜日) 専門家レベルのプログラム

◎モニタリングと評価に関するワークショップ
9時00分-10時30分 パネル1:AFTの量的計測の改善
11時00分-13時00分 パネル2:AFTの質的計測の改善
◎同時並行分科会
STDF(Standards and Trade Development Facility)、貿易円滑化、インフラ、調整、貿易金融、民間部門の参加等のイシューをクロス・カッティング的観点から検討
14時30分-16時30分 分科会
(主流化、地域別アプローチ、官民協力3つの分科会を並行開催)
17時00分-18時00分 全体会合

20日(火曜日) AFTグローバル・レビュー・ハイレベル・セグメント

◎1年目の結果の検証
10時00分-11時00分 概要説明及び報告(ラミーWTO事務局長)
WTO/OECDモニタリング(グリアOECD事務総長)
◎AFTと開発アジェンダ
11時00分-12時00分 多国間援助機関
12時00分-13時00分 二国間援助の戦略
◎今後の方向性と将来の計画
14時30分-16時00分 ラテン・アメリカ・カリブ海地域のためのロードマップ
16時30分-18時00分 アジア・太平洋地域のためのロードマップ

21日(水曜日)

9時00分-11時00分 アフリカ地域のためのロードマップ
11時30分-18時00分 WTO一般理事会(AFT)のモードでの議論

(5)主な出席者

 ラミーWTO事務局長、グリアOECD事務総長、ゼーリック世銀総裁、ストロスカーンIMF専務理事、デービスUNDP総裁(国連事務総長代理として)、各地域開発銀行総裁(ADBはナグ事務総長)、ミシェル欧州委員他6閣僚、各国代表団、その他NGO、民間企業・団体等が出席。

3.我が国の対応

(1)横田淳特命全権大使を団長とする代表団が出席。なお、横田大使は、上記1.の9月19日~20日のアジア・太平洋地域レビュー会合(於:フィリピン)にも出席、また、6月末から7月初めの「開発イニシアティブ・ハイレベル・ミッション」にてアフリカに派遣された経緯がある。

(2)横田大使より、二国間援助のセッション(20日午前)において、AFTについては包括的な取り組みが必要であり、また途上国のオーナシップと援助国と途上国の対話が必要であることを指摘しつつ、我が国の開発イニシアティブや一村一品運動等の取り組みを紹介した。また、アジア地域のセッション (20日午後)においては、ベトナム等、成長センターであるアジアの経験の重要性に触れつつ、多様性のあるアジアの中で、LDC、内陸国、小島嶼国への支援が引き続き必要である旨述べた。

(3)その他、19日の専門家レベルの会合においては、地域アプローチの分科会において、宇山智哉国際貿易課長がパネリストとして参加し、我が国の地域アプローチに基づくAFTにおける取り組みにつき説明した。また官民協力のセッションでは、平野克己アジア経済研究所専任調査役がパネリストとして参加し、一村一品運動等の我が国のAFTに関する取り組みにつき説明した。

4.主な結論

(1)一般理議長等より概要以下の通り総括がなされた。

(イ)AFTはドーハ・ラウンド交渉を代替するものではなく、あくまでも、補完するものであること。

(ロ)香港閣僚会議の際に各国が表明した支援の実施、拡大IF(統合フレームワーク)を含め、AFTへの資金手当が必要であること。

(ハ)明年(2008年)は技術的会合を開催し、AFTの進展を確認する。このため関係国・機関の広範な協力が必要であること。

(ニ)AFTに合わせ、国内改革も必要であること。

(ホ)地域的取組や地域的機関の役割が重要であること。

(ヘ)インフラだけではなく人材育成も重要であること。

(ト)市場に関する情報の提供等、中小企業を含めた民間セクターへの支援が必要であること。

(チ)優先順位付けや、これによる貿易の国家開発政策における主流化の必要性が必要であること。

(2)また、具体的な施策として、地域レビュー会合を通じて行われた以下の提言を実施することとされた。

(イ)各国・地域の課題、優先分野を特定

(ロ)受益国、地域としての行動計画を策定

(ハ)地域におけるAFTのネットワークを形成

(ニ)実施に向けたロードマップを設定

(3)この他、次回のグローバル・レビュー会合に向け、明年前半にAFTのモニタリング・評価に関するシンポジウムを開催、AFTの実施に向けての専門家レベルでの会合を開催、更に官民協力の推進、データベースの整備、関係者のネットワークの構築、南南協力等を進めていくこととされた。

5.評価

(1)今回のグローバル・レビューは、9月~10月に開催された地域レビュー会合における議論を踏まえて行われたものであり、このような議論の積み重ねの成果もあり、先進国と途上国の間でも協力的な雰囲気の中で建設的な議論が出来、その上で今後のAFTの方向性が示された点は評価できる。

(2)また、グローバル・レビューを含め一連のAFT会合において貿易関係者と開発関係者が一同に会し、貿易の開発政策への主流化を促すことが出来た点も評価出来る。

(3)明年以降の課題として挙げられた諸点(上記4.)はこれらの議論を踏まえて、方向性として示されたものであり、我が国としても具体的な施策の策定や実施に積極的に貢献していく考えである。

(4)我が国は、「開発イニシアティブ」ハイレベル・ミッション(6月28日~7月4日;マダガスカル、ケニア、ザンビア、団長:横田大使)の派遣を含め、今回の一連のAFTプロセスに積極的に参画し、途上国側からも高い評価を得た。我が国は本件会合も踏まえ、引き続き「開発イニシアティブ」を着実に実施し、関連する国際会議への積極的参加を通じ、途上国に対するAFTの実施に貢献していく考えである。

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