
第4回「ソマリア沖海賊対策に関するコンタクト・グループ会合」
(概要と評価)
平成21年9月10日
1.概要
- (1)9月10日(木曜日)、ニューヨークにおいて、第4回「ソマリア沖海賊対策に関するコンタクト・グループ(CG)会合」が、我が国議長(議長:石井正文外務省総合外交政策局参事官)の下、ソマリア暫定政府(TFG)や海運業界団体の代表を含む45ヶ国、9機関(注)の参加を得て開催された。新たに今次会合では、マレーシア、インドネシア、シンガポール、カナダ、ベルギーほかを含む17か国が参加した(参加国は、別添1.(PDF)
のリストのとおり。)。
それぞれの作業部会における報告を基に議論が行われ、別添2.の声明(英文)につき、合意したところ、ポイントは下記2.のとおり。
- (2)本件会合は、本年1月に設置され、過去3回の議論を経て、着実な進展を見ているが、今次会合では、参加国の大幅な拡大、海賊の処罰・裁判等を支援するための国際信託基金の設立、我が国が提案した周辺国の取締能力向上のためのIMOマルチドナー基金等の更なる具体的進展があった。特に、参加国の拡大については、新規参加国のほとんどの国より、議長国の我が国に対して、謝意が表明されるとともに、コンタクト・グループの従来の参加国よりも今回の措置は極めて効果的である旨の意見が表明された。なお、国際信託基金の設立には、ドイツ、イギリス、ノルウェー、デンマークほかが拠出の意図を表明した(規模は、6桁の額を想定。)。
- (3)我が方よりは、対処方針に基づき、ソマリア沖海賊対策として海自艦船2隻とP-3C哨戒機2機を派遣し、海賊対処法を成立させ、周辺国やソマリアへの支援も行っている我が国の積極的取組を説明した。なお、今般我が国において総選挙が実施され、政権が交代することとなったところ、我が国による海賊対策の取組についても新政権の了承を得た上で継続していきたいと考えている旨併せ説明した。
2.声明のポイント
- (1)海賊事件は、昨年の111件より今年は156件と増加。第1回会合より具体的な進展があることを歓迎。第1回会合の28か国から45か国に拡大したことは、海賊対策の国際協調がより強化されることを意味している。
- (2)ソマリア暫定政府は、国際社会の海賊対策への努力に感謝。コンタクト・グループは、海賊問題解決のためには、ソマリアへの安定・向上のための更なる努力が重要であることを確認。国連の説明及び陸上におけるイニシアティブを歓迎。ソマリア暫定政府とソマリア国際コンタクト・グループの議長に対し、来たる会合でこの問題を具体的に議論することを要請。
- (3)WG1の作業に関連し、軍事協調のメカニズムがうまく機能し、海賊の成功率が低下していることを歓迎。ジブチ行動指針の実施と関連した、取締能力向上のためのニーズアセスメントの調査を歓迎。今後作成されるレポートを待ち、早期にソマリアも含めた周辺国の海賊対処能力の強化のための行動が必要である点につき認識が一致。
- (4)コンタクト・グループは、日本提案によるIMOジブチ行動指針マルチドナー基金の設置を歓迎し、ケニア、タンザニア、イエメンにおける海賊情報共有センターとジブチにおける海賊訓練センターが任務を開始するときには、周辺国の海賊取締能力が強化されることに対する期待を表明。他の参加国・機関に対しても、財政支援を慫慂。
- (5)国際法廷については、議長によるとりまとめを歓迎し、引き続き議長による議論のペーパーをもとに、議論を継続することについて一致。
- (6)「コンタクト・グループのイニシアティブ支援のための国際信託基金」の具体的条件(TOR)を承認。事務総長に対して、早期に基金の実施プロセスを開始することを要請。他の関心ある関係者(国及びその他の私的団体)に対し、資金提供を慫慂。
- (7)作業部会3の報告をうけ、ベスト・マネジメント・プラクティスの改訂を歓迎。
- (8)キプロス、日本、シンガポール、英国、米国、韓国が、「ニューヨーク宣言」に署名した。IMOの努力と併せ、この宣言を歓迎し、他の国に対しても、宣言の勧告の実施を慫慂。
- (9)作業部会4の報告をうけ、議長に対し、次の執るべき措置を国連と連携し、コンタクト・グループに報告する旨要請。
- (10)海賊の資金の流れについての仕組みを理解することが重要である点で合意。(米国の)専門家による非公式会合の開催についての提案を議論。
- (11)米国のコンタクト・グループのロゴを採用。(別添3.参照)
- (12)海賊対処のための関係するすべての国による対応が重要であることにつき合意。すべての国に対して、可能な貢献をどのような形であれ行うことを慫慂。
- (13)次回会合は、来年1月、ニューヨークにて、ノルウェーが議長の下で開催。
3.とりあえずの評価
- (1)ソマリア沖・アデン湾の海賊問題は、今年も昨年に比べて大幅に増加し、モンスーンが終わり、海賊事案の増加が見込まれるこのタイミングで、新規参加国の約20か国の参加を得て、開催し、上述のような具体的な進展を見たことは極めて有意義。
- (2)我が国は、今次会合の議長国を務め、海賊対策についての我が国の取組につき積極的にアピールするとともに、信託基金の設置についての合意に向けての働きかけ等を行い、今次議長声明の調整とりまとめに尽力したことが参加国よりも高く評価された。特に、参加国の大幅拡大の効果は大きく、新規参加国だけでなく、すべての国より日本側のリーダーシップに対する謝意が表明されたことは注目に値する。
- (3)最後に、ソマリア沖の海賊対策に関し、成果は見られているものの、引き続き油断は許されず、国際社会が協調して海賊対策を継続することが大切であり、ソマリアの安定のための国際社会による努力が併せて不可欠であることや、ソマリア国際コンタクト・グループとの連携の必要性についても、認識が一致した点が注目される。