平成24年5月25日
5月23日(水曜日)から24日(木曜日)にかけ,パリのOECD本部でOECD閣僚理事会が開催され,我が国からは,古川経済財政政策担当大臣,山根外務副大臣及び牧野経済産業副大臣他が出席した。今次閣僚理事会には,OECD加盟国34か国に加え,ロシア(加盟候補国),キー・パートナー(中国,インド,インドネシア,ブラジル及び南アフリカの5か国)等が参加した。
24日午後,閣僚理事会の最後に「閣僚声明」(英文(PDF)および仮訳(PDF)
)がコンセンサスで採択された。
今次閣僚理事会は,「全員参加-あまねく広がる成長と雇用のための政策」(All on Board – Policies for Inclusive Growth and Jobs)をメインテーマとし,「経済的課題に対する新たなアプローチ」,成長・雇用・格差,ジェンダー平等の促進,OECD技能(スキル)戦略,開発戦略,OECD非加盟国との関係,貿易等について議論された。これらの議論を通じて,特に,各国が必要な構造改革を進め,信頼できる財政・社会政策等の適切な施策を通じて,あまねく広がる成長・雇用を達成することの重要性が確認された。
グリア事務総長より,1年間の活動報告と今後のOECDの戦略的な方向性について報告を行った。冒頭グリア事務総長より,各国への最近の調査結果によれば,ここ数年間でOECDの有用性が高まったと評価している国が増えている旨紹介があり,OECD非加盟国(東南アジア,アフリカ,ラテンアメリカ等)との関係も近年進展しているとの報告がなされた。また,2008年の経済金融危機後に顕在化している様々な課題に対処するためのツールとして「経済的課題に対する新たなアプローチ」(NAEC)に言及した。
多くの参加国からは,NAECに対する支持表明があり,成長政策の社会的側面や世代間公平に関する分析,実体経済と金融セクターとの関係,教育や研究に対する長期的視点からの投資といった課題をNAECとして扱っていくべしといった意見が聞かれた。
本セッションでは,各国が様々な課題を抱える中で,いかにして雇用を創出しつつ成長を実現すべきかについて,各国から様々な意見が述べられた。特に,ジェンダー格差の是正や技能(スキル)向上のために取り組みが,新たな成長の源泉として重要であるとの観点からも議論がなされた。
セッション冒頭部分で,古川経済財政政策担当大臣より,「経済的課題に対する新たなアプローチ」に向けたOECDの取り組みを支持する旨述べ,世界金融危機後の経済・雇用情勢について,OECD各国は難しい経済運営を迫られているが,日本では,経済が長期に低迷し成長力が低下する一方,財政状況の悪化も深刻度を増している中,少子高齢化,団塊世代の退職等,労働力人口が急速に減少しており,女性及び高齢者の力を十二分に活かしていくことが必要不可欠である旨,そのため,国民全体で社会の幅広い人々が成長の果実を享受できるような成長(あまねく広がる成長)を実現していく必要がある旨述べ,我が国の取り組みの具体例(若者・女性・高齢者の雇用分野についての施策等)を述べた。牧野経済産業副大臣より,多様な人材の能力を活用するための具体的取り組みとして,(1)就労環境の整備,特に女性の社会進出を促進する環境作り,(2)社会人の「学び直し」等による円滑な労働移動の促進,について述べた。
他の出席者からも,経済的・社会的課題に対する種々の取り組みとして,若年者の雇用創出,ジェンダー平等の促進のための諸施策(育児や雇用面での待遇,企業における女性の割合向上措置等),イノベーション等を進めるべきことや,また本議題に関連して,いわゆる競争上の中立性の問題に対処する必要性などについて,自由で広範な議論がなされた。
セッション前半では,OECD開発戦略について議論され,各国からは,「OECD開発戦略」(概要(PDF))の承認を歓迎する旨の発言があるとともに,開発の主流化,開発のための政策一貫性(PCD)の重要性,G20,ポストMDGs,ポスト釜山ハイレベル・フォーラム(昨年11月に釜山で開催された「第4回援助効果向上に関するハイレベル・フォーラム」)プロセスへの貢献の重要性について指摘がなされた。また,一部の国からは,開発戦略の実施に当たっての予算を明示的に確保する必要性について指摘があった。
山根外務副大臣より,開発戦略を支持する旨発言するとともに,民間セクターの活力,インフラ整備を通じて発展したアジアの経験を紹介し,アフリカ支援にもこれらの経験が参考になる旨述べ,TICAD(東京アフリカ開発会議)プロセスや日ブラジル間での三角協力について紹介した。
セッション後半では,OECD加盟国は,キー・パートナー(OECDが近年関係強化を図ってきている国々で,中国,インド,インドネシア,ブラジル,南アフリカの5か国)との関係をどのようにして強化していくか等,について議論がなされた。
山根外務副大臣より,今次閣僚理事会でキー・パートナーについて議論がなされることは時宜を得たものであり,キー・パートナーと対話を強化し相互に学習することは,これら諸国の経済成長の促進のみならずグローバルな経済成長に資する旨,そのため,具体的な協力を進展させることが重要であり,我が国は,東南アジア,中国や中東・アフリカなどに対するOECDの活動を引き続き支援していく旨述べた。また,MENA(中東・北アフリカ)-OECD投資プログラムを通じた我が国の貢献についても紹介した。
同様に,他の多くの参加国からもキー・パートナーや,MENA,東南アジア,ラテンアメリカといった地域との協力深化の実例や重要性の指摘が様々に表明された。
保護主義増大へのリスクを軽減し,更なる市場開放に向け,取り得る政策について議論がなされ,保護主義を抑止し,あまねく広がる成長と雇用を推進する貿易政策を追求するために,OECDはいかなる支援ができるか,サービス貿易における規制障壁の測定,付加価値貿易測定のOECDの活動が国別やマルチの貿易政策にとって,どのように役立つかなどが議論された。
特に,多くの国から,サービス貿易分野での取り組みやITA(情報技術協定),貿易円滑化,LDC(後発開発途上国)加盟等についての議論を進める重要性につき指摘がなされた。
牧野経済産業副大臣より,貿易自由化を成長戦略の中核とするために,保護主義の抑止(新たな保護主義的措置をとらない「スタンドスティル」と,導入した保護主義的措置を是正する「ロールバック」)の重要性について述べ,OECDなどによるグローバル・バリュー・チェーン分析,保護主義影響分析を支持する旨,構造政策やマクロ政策など必要な国内改革を一体的に行いつつ自由貿易・競争の果実を広く国民に均てんすることの重要性につき述べた。
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