評価年月日:平成27年2月27日
評価責任者:国別開発協力第一課長 宮下 匡之
ベトナム社会主義共和国
南北高速道路建設計画(ベンルック-ロンタイン間)(第二期)
ベトナム南北高速道路網の一部であるベンルック-ロンタイン間の高速道路(全長約60キロメートル)を建設することにより,増加する交通需要への対応,物流の効率化及び交通渋滞の緩和を図り,もってホーチミン市内を含むベトナム南部地域の経済成長促進・国際競争力強化に寄与するもの。(本案件は,アジア開発銀行との協調融資案件であり,円借款工区はビンカイン~フッカイン間約11キロメートル)
ア 主要事業内容
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
313.28億円 | 年0.1% | 40(10)年 | 日本タイド |
(注)コンサルタント部分は金利0.01%を適用。
ア 本計画に係る環境影響評価(EIA)報告書は2010年9月にベトナム天然資源環境省により承認済み。
イ 約49ヘクタールの用地取得及び41世帯の住民移転を伴い,同国国内法に沿った用地取得及び住民移転計画に沿った住民移転が実施されている。
ウ 外部要因リスクは特になし。
ア 開発ニーズ
ホーチミン市,ロンアン省及びドンナイ省には55箇所の工業団地が整備され,ベトナム全体のGDPの56%を占める経済中心地であるが,工業団地から港湾や空港への大型トラック等による交通渋滞が激しく,円滑な物流を阻害している。また,近隣で新たな国際空港(ロンタイン国際空港)の建設が計画されるなど,将来的にも交通需要の増加が予測されている。
このような状況から,渋滞を緩和させ,工業団地と港湾・空港等を結ぶことによって物流の効率化を図るという観点から,本計画の対象区間における高速道路建設の必要性は高い。
イ 我が国の基本政策との関係
2012年12月に策定された対ベトナム国別援助方針においては,「成長と競争力強化」を重点開発課題に掲げており,「経済成長に伴い増大している経済インフラ需要に対応するため,幹線交通及び都市交通網の整備」に係る支援に重点的に取り組むとしている。幹線交通の整備を目的とする本事業は本方針に整合している。
既往の高速道路事業のJICAによる事後評価から,事業効果発現のためには,個別の高速道路の断片的な建設ではなく,国家高速道路計画に基づく支援が重要であり,事業完成後の持続性確保の観点からも,計画初期段階から維持管理費等を含む維持管理体制の策定・構築,及び料金徴収計画の慎重な検討が必要であるとの教訓を得ている。これらを踏まえ本計画については,高速道路マスタープランの優先区間を採り上げている他,維持管理体制の構築及び料金徴収計画策定について,技術協力との連携を通じて強化を図ることにより,案件の効率性を確保する。
本計画の実施により,アジア開発銀行による工区を含む当該区間の所要時間の短縮(132分から35分(完成2年後・2021年))が見込まれており,これにより旅客・貨物輸送の効率化,及びホーチミン市内を含むベトナム南部地域の経済及び社会開発の促進が期待される。
要請書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/index.html),ベトナム都市交通セクターへの支援の評価,その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。