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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成26年10月22日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓

1. 案件概要

(1)供与国名

ウズベキスタン共和国

(2)案件名

電力セクター・プロジェクト・ローン

(3)目的・事業内容

ア 目的
ウズベキスタンの電源構成の9割を占める火力発電所の老朽化による電力供給不足及びエネルギー効率悪化に対処するため,火力発電設備の更新及び関連人材の育成を行うことにより,電力の安定供給及びエネルギー効率の向上を図り,持続的な経済発展並びに天然ガス消費量及びCO2排出量の削減を通じた気候変動の緩和に寄与するもの。

イ 主要事業内容
本件は,複数の円借款案件を対象に包括的な供与枠を設定して供与する「セクター・プロジェクト・ローン」であり,(1)トゥラクルガン火力発電所建設計画,(2)タシケント熱電併給所建設計画,(3)電力セクター能力強化計画の3つの案件(サブ・プロジェクト)から成る。


(1)トゥラクルガン火力発電所建設計画

i 事業内容

ウズベキスタン東部のナマンガン州において高効率のガス火力発電所及び関連する送電線・変電所を建設・改修するもの。

  • 土木工事
  • 機器調達
  • コンサルティング・サービス

ii 供与条件

供与限度額 金利 償還期間 調達条件
718.39億円 年0.3%(優先条件) 40年(うち据置期間10年) 一般アンタイド

iii 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

a EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構 環境社会配慮ガイドライン(2010年4月公布)」に掲げる火力発電セクターに該当するため,同ガイドラインに掲げるカテゴリAに該当する。EIA報告書は、発電所分については2013年7月に,送電線・変電所分については2014年3月に,国家自然保護委員会により承認を受けている。

b 用地取得及び住民移転
本計画は、非自発的住民移転を伴わないものの,約43ha,82世帯からの用地取得を伴い,国内手続き及び住民移転計画に沿って取得が進められる。用地取得に関する住民協議では,被影響住民から補償方針につき質問があったが,本計画に対する特段の反対意見は確認されていない。

c 外部要因リスク:特になし。


(2)タシケント熱電併給所建設計画

i 事業内容

ウズベキスタンの首都タシケント市において,高効率ガスタービン・コジェネレーション設備を導入するもの。

  • 土木工事
  • 機器調達
  • コンサルティング・サービス

ii 供与条件

供与限度額 金利 償還期間 調達条件
120.00億円 変動金利
円LIBOR-133bp(優先条件)
40年(うち据置期間10年) 一般アンタイド

iii 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

a 環境社会配慮
今後,別途実施する調査にて確認。

b 外部要因リスク
特段なし。


(3)電力セクター能力強化計画

i 事業内容

ウウズベキスタン電力公社が設立を計画しているコンバインドサイクル・ガスタービン運用維持管理トレーニングセンター用機材調達,既設火力発電所保守点検用機材・サービスの調達,シルダリア火力発電所近代化計画のエンジニアリング・サービス調達を行うもの。

  • 機器調達
  • コンサルティング・サービス

ii 供与条件

供与限度額 金利 償還期間 調達条件
30.00億円 変動金利
円LIBOR-133bp(優先条件)
40年(うち据置期間10年) 一般アンタイド

iii 環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

a 環境社会配慮
今後,別途実施する調査にて確認。

b 外部要因リスク
特段なし。

2. 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ

ウズベキスタンの最大電力需要は,2014年に8,400MWに達している。これに対し総発電定格容量は13,324MW(2013年末)であるが,全般に国内施設の老朽化が進んでおり,ピーク対応能力が約7,800MWに留まり,電力供給の信頼性は著しく低下している。特に,電源構成の約9割を占める火力発電所の多くは40~50年以上前に運転を開始した古い設備であり,平均熱効率は約3割と低水準であり,高環境負荷の一因となっている。ウズベキスタンの単位GDP当たりのCO2排出量は世界で最も高い水準であり(2009年は1位,2010年は5位。出典:世銀World Development Indicators),経済・社会システム全体でエネルギー効率改善に取り組むことが急務となっている。

イ 我が国の基本政策との関係

2012年4月に策定した「対ウズベキスタン国別援助方針」においては,経済成長の促進と格差の是正に向けた支援を実施すべく,(1)経済インフラの更新・整備(運輸・エネルギー),(2)市場経済化の促進と経済・産業振興のための人材育成・制度構築支援,(3)社会セクターの再構築支援(農業改革・地域開発,保健医療)を重点分野としている。本案件は,エネルギー関連の経済インフラ更新(上記(1))に対応した支援であり,我が国の基本政策に合致する。

(2)効率性

複数案件を並行的・連続的に取り扱うことによる事業実施の迅速化・効率化が図られる。また,中期的に複数案件に対して円借款を供与する方針を明確化することにより,予見可能性を高め,相手国による事業の安定的な実施を図る。

(3)有効性

拡大を続けるウズベキスタンの電力需要に対して,高効率のガス・コンバインド・サイクル発電設備及びガスタービン・コジェネレーション設備を建設,並びに送電線及び変電所を改修することにより,同国の安定的な電力供給の実現及びエネルギー効率の向上が図られることを通じて,同国の電力不足の緩和及び経済の成長が期待される。また,本件の実施により、天然ガス消費量削減と温室効果ガス排出削減(トゥラクルガン火力発電所については約107万トンのCO2削減見込み)による気候変動緩和効果とともに,電力公社職員の能力向上及びそれによる発電所のより円滑な維持管理の効果が期待される。さらに,ウズベキスタンの経済・社会の発展を通じた我が国との二国間関係の強化が期待される。

3. 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

要請書,これまでの国際協力機構環境社会配慮ガイドライン,その他国際協力機構より提出された資料。

案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要,借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース及び事業事前評価表を参照。

なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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