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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成26年6月16日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西永 知史

1 案件概要

(1)供与国名

チュニジア共和国

(2)案件名

ラデス・コンバインド・サイクル発電施設建設計画

(3)目的・事業内容

チュニジアの首都近郊ラデスに高効率ガス・コンバインド・サイクル発電施設を建設し,発電能力の強化及び電力の安定的な供給を図る。

ア 主要事業内容

  • 発電施設建設

イ 供与条件

供与限度額 金利 償還(うち据置)期間 調達条件
380.75億円 0.6% 40(10)年 一般アンタイド

(注)金利は,優先条件(環境)を適用

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

ア 本計画に係る環境影響評価報告書は,2014年2月にチュニジア環境保護庁により承認済み。

イ 工事中に生じる大気・水質への影響及び騒音については,散水の実施,沈砂池の設置,低騒音型機械の使用,日中作業への限定等の対策により緩和を図る。供与後は,NOx燃焼法の採用,破水処理設備の設置,低騒音型設備の導入等により,チュニジア国内の排出基準を満たす見込み。近隣に文化遺産及び水鳥保護地等が存在するが,当該地区への大気汚染物質の拡散は限定的であり,当該地区周辺への望ましくない影響は最小限であると想定される。

ウ 本計画は,チュニジア電力・ガス公社(STEG)の既存施設敷地内での発電所建設であり,用地取得及び住民移転は伴わない。

エ 本計画では工事中の水質・騒音等については施工業者が,供与後はSTEGが大気への影響も含めてモニタリングを実施する。

オ 外部要因リスクは特になし。

2 資金協力案件の評価

(1)必要性

ア 開発ニーズ

チュニジアは,いわゆる「アラブの春」の発端ともなった2011年の政変後,同年はマイナス成長となったが,2012年には3.6%と持ち直し,IMFは今後も年3%程度の成長を見込んでいる。経済成長に伴い,国内での電力需要も増加しており,チュニジア政府は新規電源開発に積極的に取り組み,再生可能エネルギーの導入も実施しているが,現時点では総発電量のうち火力発電が大部分を占めている(火力発電97%,水力発電2%,風力発電1%)。

そのような中,チュニジア電力・ガス公社(STEG)による予測では,2012年から2016年にかけて年平均7.1%の電力需要増が見込まれており,2016年には需要が供給を上回るとの試算もされている。チュニジア政府は,2015年の稼働を目指してチュニジア中部のスースにおいて新規発電所の建設を進めているが,今後の電力不足に対応するため,既存発電所の近代化や新規電源開発を更に進めていくことが不可欠となっている。

現在チュニジア政府は暫定政権であり,中長期的計画に関する権限を有していないとされるものの,「第11次5ヵ年社会経済開発計画(2007年~2011年)」及び後継とされる「第12次5ヵ年社会経済開発計画(2012年~2016年)」(未実施)においても「資源の効率的な活用と環境保全」を重点分野として掲げている。また,2012年5月の「新しいチュニジアの開発プロジェクトに対するファイナンスに関する国際会議」においても本計画が提示されており,チュニジアにおいて優先度が高い事業となっている。

イ 我が国の基本政策との関係

本計画は,チュニジアの首都近郊のラデスに高効率ガス・コンバインド・サイクル発電施設を建設し,発電能力の強化及び電力の安定的な供給を図り,同国の持続的な経済発展を後押しするものであり,我が国が対チュニジア経済協力で重点分野としている「持続可能な産業育成」に合致する。また,中進国に対する円借款は,「環境」等の分野に限定して供与しているが,本事業はCO2等温室効果ガスの排出を抑えるコンバインド・サイクル発電技術を活用するため,「環境」分野に入る。なお,我が国は,本計画と同じ敷地内に,過去に円借款による「ラデス火力発電所建設計画」(1982年,供与限度額約68億円)を実施している。

(2)効率性

実施機関であるチュニジア電力・ガス公社(STEG)は,上記(1)の「ラデス火力発電所建設計画」(1982年度円借款案件,1985年操業開始)を含め,チュニジアの電力施設整備及び運営に関する経験と実績を有している。事業実施中は,本案件を統括して管理するProject Implementation Unit (PIU)をSTEG内部に設置し,事業の円滑かつ効率的な実施に努めることとしている。我が国としても,本案件のモニタリングを行いながら,必要に応じて技術協力(研修)による支援を検討する。

(3)有効性

本計画の実施により,増大する電力需要に対応することができる。また,コンバインド・サイクルによる効率的な発電で資源消費量の削減が図られ,更に,単発の火力発電よりも年間約63万トンのCO2排出量の削減が見込まれており,チュニジアにおける環境に配慮した持続的経済発展が期待される。

3 事前評価に用いた資料,有識者等の知見の活用

要請書,チュニジア国別評価報告書,国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/他のサイトへ),その他国際協力機構より提出された資料。

案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/region/africa/tunisia/exchange.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html他のサイトへ)及び事業事前評価表 (http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html他のサイトへ)を参照。

なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。

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