評価年月日:平成27年3月23日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓
インド
プネ市ムラ・ムタ川汚染緩和計画
インド中部のマハラシュトラ州プネ市において,下水道施設(下水処理場,下水管,共同トイレ等)の整備等を実施することにより,河川の水質改善を図り,もって住民の衛生環境の改善に寄与するもの。
(ア) 主要事業内容
(イ) 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
190.64億円 | 0.30% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
(注)金利は,優先条件(環境)(固定・基準)を適用。コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
(ア) EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構 環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)」に掲げる影響を及ぼしやすいセクター・特性や影響を受けやすい地域に該当せず,環境への望ましくない影響は重大でないと判断されるため,同ガイドラインに掲げるカテゴリBに該当する。本計画における入札開始前に,下水道施設からの排水基準及び処理場の設計に関して,マハラシュトラ州公害管理局からクリアランスを取得する予定である。
(イ) 用地取得
本計画に伴い,下水処理場建設のため3.64ヘクタールの公有地及び5.27ヘクタールの民有地の用地取得が見込まれており,JICAガイドライン,インド国内法及び実施機関である環境森林省国家河川保全局が定める補償方針に従い手続が進められる。なお,本計画は,住民移転を伴わない。
(ウ) 外部要因リスク:特になし。
(ア) 開発ニーズ
インドでは,人口増加や経済発展に伴う上水利用量の増加により,下水処理能力を超過した汚水が排出され,河川や土壌,地下水の水質汚濁等の問題が生じており,地域住民の衛生・生活環境が脅かされている。本計画の対象地であるマハラシュトラ州プネ市でも,既存施設の処理応力を上回る下水が未処理のまま,市街地を流れるムラ川,ムタ川及びムラ・ムタ川に流れ込んでおり,環境汚染が進行,ムラ・ムタ川はインドの中央公害規制委員会が指定する,同国内の最も汚染された35河川の一つとなっている。その結果,この地域の住民のみならず,下流域の住民の衛生・生活環境に悪影響を与えている。以上の現況から,プネ市の住民に下水道・衛生施設を提供することで,上記河川の水質改善を図り,同地域や下流域の住民の衛生環境の改善に資する本計画のニーズは大きい。
(イ) 我が国の基本政策との関係
2006年6月に策定された「国別援助計画」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(a)経済成長の促進,(b)貧困・環境問題の改善及び(c)人材育成・交流拡大を掲げている。本計画は,対象地域住民の衛生環境の改善という観点から,同国の貧困・環境問題の改善に資する案件として上記(b)に合致するものである。
有償資金協力専門家の派遣により我が国がインド政府と協力して作成した「下水道施設設計・維持管理マニュアル」の活用を事業実施機関に提案するとともに,コンサルティング・サービスの支援を通じて,事業実施機関の組織強化を図る。また,下水処理施設の重要性に対する理解を更に高めるための市民に対する広報・啓発活動等を実施する。これらにより,事業の効率性向上を図る。
本計画の実施により,ムラ川,ムタ川及びムラ・ムタ川の水質改善が図られ,もって事業実施地域や下流域の住民の衛生環境の改善に寄与することが期待される。運用・効果指標として,汚水処理人口(完成2年後(2023年)見込み:479万4千人(基準値(2014年):219万2千人)),汚水処理量(同:79万4,400立方メートル/日(基準値(2014年):46万5,600立方メートル/日)),平均放流BOD濃度(同:10ミリグラム/リットル以下(基準値(2014年):10ミリグラム/リットル))等を設定している。
要請書,インド国別評価(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/kunibetu/indo.html),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/index.html),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表
(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。