評価年月日:平成27年3月23日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓
インド
レンガリ灌漑計画(フェーズ2)
インド東部のオディシャ州ブラマニ川流域において,灌漑施設の新設及び水利組合の組織化や営農指導支援等を実施することにより,同州における農業生産の増加・多角化を図り,もって農業所得の向上を通じた貧困問題の改善に寄与するもの。
(ア) 主要事業内容
(イ) 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
339.59億円 | 0.70% | 15(5)年 | 一般アンタイド |
(注)金利は,一般条件(固定・オプション2)を適用。コンサルティング・サービス部分は金利0.01%を適用。
(ア)EIA(環境影響評価)
本計画は,「国際協力機構 環境社会配慮ガイドライン(2010年4月制定)」に掲げる農業セクター並びに影響を及ぼしやすい特性及び影響を受けやすい地域に該当するため,同ガイドラインに掲げるカテゴリAに該当する。環境影響評価報告書は作成済みであり,中央政府から環境クリアランス(1996年12月)及び森林クリアランス(812ヘクタール,2003年)を取得済み,残る森林クリアランス(1,295ヘクタール)については,事業開始までに取得される見込みである。
円借款事業対象外地域を含むレンガリ灌漑計画(フェーズ2)全体では,773ヘクタールの森林地を必要とし,うち約9割が円借款事業の対象地域である。伐採面積が小さくなるようルート選定がなされるとともに,プロジェクトレベルの環境管理委員会が組織され,生態系・野生動物保護のための具体的行動計画が策定・実施されることとなっており,本計画において環境面での重大な悪影響は想定されていない。今後,工事中や供与時に環境モニタリングを行い,実施状況を確認する。
(イ)用地取得
円借款事業対象外地域を含むレンガリ灌漑計画(フェーズ2)全体では,138世帯の非自発的住民移転を伴い,うち,約9割が円借款事業対象地域内に居住し,実施機関であるオディシャ州水資源局が,国内法制及びJICAガイドラインに基づき作成された住民移転計画に従い手続を進めている。影響を受ける世帯については,オディシャ州の移転補償実施方針に基づき補償がなされる。なお,住民移転計画作成過程で実施された住民協議では,参加者からは事業に対する大きな反対意見は確認されていない。また,被影響住民には指定部族が含まれるため,同州の方針に沿って,実施機関により支援策が提供される。
用地取得については,2014年11月末時点で約6ヘクタール分が旧土地取得法に基づき取得済みであり,残る約1,885ヘクタールについては,2014年1月に施行された新土地取得法の州内の細則が承認され次第,順次取得を行う予定である。
(ウ)外部要因リスク:特になし。
(ア) 開発ニーズ
インドでは,全労働人口の半分以上が農業部門に従事し,国土面積の約46%が農地であるなど,依然として農業は人々の雇用確保や生計向上を支える重要部門である(本計画の対象地であるオディシャ州では就業人口の70%以上が農業に従事)。しかし,農業生産が国内総生産に占める割合は約14%(2011年)にすぎず,農村部の貧困は依然として深刻である。さらに,インドにおける急激な人口増加に対応するため,農業生産の拡大とそのための水資源開発が必要とされている。オディシャ州においては,貧困率がインド全国平均を上回っているほか,穀物の単位当たり収量がインド全国平均の2.1トン/ヘクタールより低い1.5トン/ヘクタール(2008年)にとどまっており,上記課題への対応は急務である。以上の現況から,オディシャ州ブラマニ川流域において,灌漑施設の新設等を実施することにより,同州における農業生産の増大・多角化を図り,もって農業所得の向上を通じた貧困問題の改善に資する本計画のニーズは大きい。
(イ) 我が国の基本政策との関係
2006年6月に策定された「国別援助計画」においては,今後の対インドODAの重点目標として,(a)経済成長の促進,(b)貧困・環境問題の改善及び(c)人材育成・交流拡大を掲げている。本計画は,対象地域の農民所得の向上という観点から,同国の貧困・環境問題の改善に資する案件として上記(b)に合致するものである。
事業監理・会計・用地取得等の複数の機能を同一の事業対象地区内で行うことにより,迅速な意思決定を図るとともに,事業の早期の段階で,水利組合設立や営農指導の活動を行い,受益者の知識や水利組合の活動が速やかに定着するよう図ることで,事業の効率性向上を図る。
本計画の実施により,対象地域であるオディシャ州における農業生産の増加・多角化が図られ,農業所得の向上を通じた貧困問題の改善に寄与することが期待される。運用・効果指標として,作物作付面積(完成3年後(2026年)見込み:74,890ヘクタール(基準値(2014年):33,759ヘクタール)),水利組合組織率(同:100%(基準値(2014年):-)),コメ生産高(同:145,839トン/年(基準値(2014年):55,562トン/年))等を設定している。
要請書,インド国別評価(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/kunibetu/indo.html),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/index.html),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表
(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。