評価年月日:平成26年5月22日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓
バングラデシュ人民共和国
天然ガス効率化計画
天然ガス供給及びガス利用の効率化に資する機材・施設を整備することにより,天然ガス需要増への対応及び安定的かつ効率的なガス供給を図り,同国の経済発展に寄与するもの。
ア 主要事業内容
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
235.98億円 | 0.01% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
ア EIA(環境影響評価): バングラデシュの環境法令に基づき作成が求められているガスパイプライン整備に係る環境影響評価(EIA)報告書は,土木工事開始までに環境森林省環境局(Department of Environment)より承認を取得する予定。
イ 用地取得及び住民移転:送ガス管敷設のための120ヘクタールの用地取得,140人の非自発的住民移転を伴い,同国国内手続き及び簡易住民移転計画に沿って取得が進められる。
ウ 外部要因リスク:特になし。
ア 開発ニーズ
バングラデシュにおける主要なエネルギー資源は国産の天然ガスであり,国民が利用するエネルギーの約5割を占め,特に電力セクターでは,発電の約7 割を天然ガスに依存している。しかし,2000年代に入り,急速に進む経済成長に伴い,電力・工業のガス需要が急増した一方で,ガス田開発の遅延,ガスパイプライン不足等により供給が伸び悩み,慢性的な需給ギャップが生じている。2013年には,2,543百万立方フィート/日(MMCFD)の需要に対し,供給が2,197MMCFDになっており,深刻なエネルギー不足を引きおこしている
バングラデシュの国家開発戦略「第6次五か年計画」(2011/12-2015/16年度)において,電力・エネルギー分野については,需給ギャップの改善,探鉱・開発・生産の強化による天然ガス生産量の増加,効率的なガスの利用等が目標に挙げられている。
イ 我が国の基本政策との関係
バングラデシュの人口の約3割が依然として貧困状態にあり,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足していること等の開発ニーズを踏まえ,2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(a)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化,(b)社会脆弱性の克服を掲げている。本計画は,経済インフラの整備支援による電力・エネルギーの安定供給という観点から上記(a)に合致した支援となっている。
ガス供給に支障をきたさないよう,コンプレッサーやガスメーター等の機器を適切に維持管理することが重要であるとの過去の類似案件の事後評価結果を踏まえ,コンサルタントの支援を受け,実施機関の維持管理能力を強化することにより効率性を高める。なお,バングラデシュで初の本格導入となるガスメーター整備については,実施機関の能力向上に加え,顧客の理解促進が重要であるため,コンサルタントによる支援を行う。また,円滑な事業実施の観点から,段階的にメーターを導入し,各段階で導入結果を見直すことにより,導入計画を必要に応じ改善する。
急速に進む経済成長に伴い,天然ガスの慢性的な需給ギャップが生じている中,天然ガス需要増への対応及び安定的かつ効率的なガス供給を図り(送ガス管の流入量が約4割増加する見込み),バングラデシュの経済全体の活性化に貢献することが期待される。
バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/index.html),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表
(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。