評価年月日:平成26年5月22日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓
バングラデシュ人民共和国
ハオール地域洪水対策・生計向上計画
バングラデシュの北東部のハオールと呼ばれる低湿地帯が広がる地域において,洪水対策施設および農村インフラの修復・建設並びに農漁業振興活動等を行うことを通じて,洪水被害の軽減,基礎インフラへのアクセス向上及び農漁業生産性の向上を図り,当該地域の生活水準の向上と地域経済の活性化に寄与するもの。
ア 主要事業内容
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
152.70億円 | 0.01% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
ア EIA(環境影響評価): バングラデシュの環境法令に基づき,洪水対策のサブプロジェクトについては環境影響評価(EIA)報告書を,農村インフラについては簡易環境影響調査(IEE)報告書をサブプロジェクトごとに作成する必要があり,各サブプロジェクトの土木工事開始時までにバングラデシュ環境森林省環境局(Department of Environment)により承認予定。
イ 用地取得及び住民移転:サブプロジェクト合計で463ヘクタールの用地取得,240人の非自発的住民移転を伴い,バングラデシュ国内手続き及び簡易住民移転計画に沿って取得が進められる。
ウ 外部要因リスク:特になし。
ア 開発ニーズ
バングラデシュは,3つの国際河川が流れ込むデルタ地帯に位置しており,雨季には毎年河川の許容量を超えて洪水が発生し,国土の20%以上が浸水する。特に,北東部メグナ川の上流域に位置するハオール地域では,雨季には約8,600平方キロメートルの盆地全体が水没し,洪水による被害が深刻である。このため,ハオール地域では住民の生計は不安定で,各種インフラの整備も遅れ,保健医療や教育等の社会指標も低いことから,洪水被害の軽減及び生活環境の改善は急務である。
バングラデシュの国家開発戦略「第6次五か年計画」(2011/12-2015/16 年度)において,ハオール地域は,保健医療や教育等の公共サービス提供の観点から,アクセスが特に困難な上に洪水等の自然災害に脆弱でアクセス改善のために特別な配慮が必要な地域であるとされている一方,農漁業振興の観点では生産力向上の可能性のある有望な地域としても位置づけられ,農漁業の振興を図るとされている。
イ 我が国の基本政策との関係
バングラデシュの人口の約3割が依然として貧困状態にあり,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足していること等の開発ニーズを踏まえ,2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(a)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化,(b)社会脆弱性の克服を掲げている。本計画は,防災・気候変動対策という観点から上記(b)に合致した支援となっている。
過去の類似案件において,洪水管理施設等の維持管理体制及び財源の不足が事業の持続性に影響を及ぼしていることから,維持管理の役割分担の明確化と適切な維持管理予算の確保,受益者のオーナーシップ意識の醸成が重要であるとの事後評価がなされている。本件ではこれを踏まえ,コンサルティング・サービス等を通じ,優先度に基づく維持管理予算配分の実現を支援するとともに,実施機関の能力強化を目的として実施中の技術協力と連携しつつ,維持管理計画・マニュアルの策定支援,受益者や実施機関の維持管理体制・能力の強化を図る。
各種インフラの整備が遅れ,保健医療や教育等の社会指標も低いハオール地域において,洪水対策施設および農村インフラの修復・建設並びに農漁業振興活動等を支援することにより,同地域の洪水被害の軽減,基礎インフラへのアクセス向上及び農漁業生産性の向上を図り,ハオール地域の生活水準の向上と地域経済の活性化に貢献することが期待される。
バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),防災協力イニシアティブ評価報告書(2013年度),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/index.html),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表
(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。