評価年月日:平成26年5月22日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓
バングラデシュ人民共和国
マタバリ超々臨界圧石炭火力発電計画(I)
バングラデシュ南東部チッタゴン管区マタバリ地区に定格出力1,200メガワット(600メガワット×2基)の高効率の超々臨界圧石炭火力発電所を建設することにより,同国における電力需要の急増に対処するとともに,温室効果ガスの排出を抑制し,同国における経済全体の活性化及び気候変動の緩和に寄与するもの。
ア 主要事業内容
イ 供与条件
供与限度額 | 金利 | 償還(うち据置)期間 | 調達条件 |
---|---|---|---|
414.98億円 | 0.01% | 40(10)年 | 一般アンタイド |
ア EIA(環境影響評価): 2013年11月にバングラデシュ環境森林省環境局(Department of Environment)により承認済み。
イ 用地取得及び住民移転:発電所・港湾に係る地域は,乾季は塩田,雨季はエビの養殖場として利用されており,移転が必要な20世帯(内16世帯は不法居住)に加え,約1,000人が生計等に影響を受ける事が確認されている。送電線およびアクセス道路建設では,用地取得(約0.13ヘクタールおよび約3.1ヘクタール)が必要となるが,住民移転は発生しない。用地取得・住民移転・損失資産および生計への補償は住民移転計画(RAP)に従い実施される予定。
ウ 外部要因リスク:特になし。
ア 開発ニーズ
バングラデシュでは,近年の高い経済成長の達成による電化率の向上・工業化の進展のため,電力供給が電力需要の増加に追いついておらず,2013年において,潜在需要8,349メガワットに対し最大供給実績は6,675メガワットと,需要の約8割の供給能力に留まっている。更に今後10年間は年率約10%の電力需要の増加が見込まれている。
バングラデシュ政府の国家開発戦略「第6次五か年計画」(2011/12-2015/16年度)において,電力セクターは貧困削減につながる経済成長のための重要なインフラであると位置づけられている。また,バングラデシュ政府は,電力系統マスタープラン(Power System Master Plan 2010)の中で,石炭が今後のバングラデシュにおいて最も重要な一次エネルギーであるとし,増加する電力需要に応える方策として,輸入炭を活用し,発電効率の高い超々臨界圧石炭火力発電所の建設を優先事業としている。
イ 我が国の基本政策との関係
バングラデシュの人口の約3割が依然として貧困状態にあり,運輸等の基礎的な経済インフラが絶対的に不足していること等の開発ニーズを踏まえ,2012年6月に策定された「国別援助方針」においては,今後の対バングラデシュODAの重点目標として,(a)中所得国化に向けた,全国民が受益可能な経済成長の加速化,(b)社会脆弱性の克服を掲げている。本計画は,経済インフラの整備支援による電力・エネルギーの安定供給という観点から上記(a)に合致した支援となっている。また,本計画は高効率な石炭火力技術により温室効果ガス排出を抑制し,気候変動の緩和に資する案件であり,(b)に含まれる防災・気候変動対策に貢献する支援となっている。
発電事業の自立発展性を高めるためにはメーカー側からの適切なサポートが必要との過去の類似案件の事後評価結果を踏まえ,コンサルタントの技術移転及びメーカーによる長期保守契約(Long Term Service Agreement)の実施により,維持管理体制の構築・定着を図ることを通じて効率性を高める。更に,組織強化コンサルタントの雇用により実施機関の内部管理体制強化を行う。
急増する電力需要に対応し,安定的な電力供給を行うための輸入炭を活用した高効率石炭火力発電所建設を通じた電力の安定供給により,バングラデシュ経済全体の活性化に貢献するもの。また,高効率の石炭火力技術により温室効果ガス排出を抑制し(温室効果ガス排出を約40万トン/年(CO2換算)抑制する見込み),気候変動の緩和に貢献することが期待される。
バングラデシュ政府の要請書,バングラデシュ国別評価報告書(2009年度),国際協力機構環境社会配慮ガイドライン(http://www.jica.go.jp/environment/guideline/index.html),その他国際協力機構より提出された資料。
案件に関する情報は,交換公文締結後公表される外務省の約束状況に関する資料及び案件概要(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou.html),借款契約締結後公表される国際協力機構のプレスリリース(http://www.jica.go.jp/press/index.html)及び事業事前評価表
(http://www.jica.go.jp/activities/evaluation/before.html
)を参照。
なお,本案件に関する事後評価は実施機関である国際協力機構が行う予定。