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政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成26年4月1日
評価責任者:国別開発協力第一課長 宮下 匡之

1.案件名

1-1.供与国名

ソロモン

1-2.案件名

ホニアラ港施設改善計画

1-3.目的・事業内容

本計画は,ソロモン国ホニアラ港において,港湾施設を改修・増強することにより,効果的且つ効率的な港湾運営及び荷役作業の実現を図り,貨物の円滑な輸出入を促進しソロモン国の経済発展を図ることを目的とするものである。供与限度額は,26億8,100万円であり,国際埠頭(岸壁150メートル,護岸125メートル,浚渫・埋立17,000立方メートル,係留ドルフィン2基,既存係留ドルフィンの撤去),コンテナヤード(10,500平方メートル),付帯施設(給水・消防施設,埠頭照明施設,保安境界フェンス・保安ゲート,移動式クレーン1台)の整備を行う。

1-4.環境社会配慮、外部要因リスクなど留意すべき点

以下の事項がソロモン政府により実施される必要がある。

(1)維持管理・運行のための予算及び人員の確保
(2)諸事務手続,免税措置の実施及び各種手数料の負担
(3)電気・水道等の引き込み
(4)環境影響評価の実施

2.無償資金協力の必要性

2-1.必要性

(1)ソロモンは,東西1,666.8万平方キロメートルの海域に6の大きな島及び900を超える小島から構成され,国際貨物や国内物流の大半は,海運に頼らざるを得ない。国際貨物に関しては首都に位置するホニアラ港が中心的な役割を果たしている。同港への輸入貨物は,食料・産業資機材・衣料・燃料など,国民の生活にとって欠かせない物資であり,輸出されるのはパーム油・カカオ・材木・水産物等,同国の経済を支える重要物資である。

(2)2003年の部族紛争終結以降,経済の回復により同港の貨物取扱量は急激に増加し,その結果,現有施設では既に貨物取扱能力を超えている状況である。また,近年,コンテナ船が急速に増加し,今後も鉱物資源などを中心に輸出産品の増加が見込まれるが,同港の低い荷役効率が原因で大型船と近辺に係留している小型船の双方の危険性が高まっており,同港の能力向上と安全・保全性の確保のために第二国際埠頭の早急な整備が必要となっている。なお,債務持続性等の観点から,円借款での実施は難しい。

2-2.効率性

(1)新国際埠頭:

  • ホニアラ港に寄港する定期コンテナ船舶のうち,代表的な船舶を抽出し,これらの船舶諸元から,岸壁の計画に必要な全長及び喫水を設定した。ただし,岸壁延長は,こうした船舶の全長をもとに設定した場合には,地形条件や整備費用の面から,実現性に乏しいことから,要請書にもあるように係留ドルフィンを配置して,短縮を図った。岸壁延長の妥当性は,計画対象コンテナ船のクレーンが岸壁をカバーすることによって判断した。なお,係留ドルフィンの位置は寄港するコンテナ船の船長の聞き取りの結果,設定した。
  • 岸壁の水深は,上記の代表的船舶の満載喫水と寄港するコンテナ船の入港時の喫水を考慮して設定。岸壁の構造形式は,環境面,施工面,経済面などを比較した結果,鋼管矢板式岸壁を選定した。この構造形式は,計画サイトに外洋の波浪が直接作用することから,波浪安定性に優れた構造物である。また,岸壁の法線位置については,海底地形から浚渫量が少なく,構造物の安定性の面から有利な海域を選定。なお,岸壁の稼働率は,波浪の出現状況を推算して,ほぼ許容可能な値となった。
  • 岸壁の天端高は,外洋の波浪が直接作用することから,波の越波に配慮して標準的な高さのうち最も高いものとしたところ,越波量は,推算の結果,許容可能なものとなった。また,護岸の天端高は,岸壁と同様とした場合には越波量が大きくなることから,パラペットを配置して,嵩上げを行った。
  • 円滑なコンテナ移送を行うため,新国際埠頭の北側及び南側にアクセス道路を配置し,それぞれ2車線の道路幅を確保するとともに,荷役機械によるコンテナの直接移送を考慮して,道路の両端に余裕部分を考慮した。

(2)コンテナヤード

  • コンテナヤードの能力は,2020年に想定されるコンテナ取扱量をもとに,新国際埠頭のコンテナヤード及び既存のコンテナヤードを効率的に運用することとし,処理可能な配置計画とした。

(3)付帯事項

  • 給水施設は,新埠頭内について実施することとし,照明施設については,夜間のコンテナ荷役作業を想定して,岸壁エプロン及びヤード,通路においては基準照度が得られるように設定した。ビーコン(無線標識)は,夜間及び悪天候による視界不良時に岸壁の位置がわかるように岸壁の両端に配備し,ランタンは要所の光達距離となるように設定した。

2-3.有効性

(1)本件の実施により,以下のような成果が期待される。

(ア)第二国際埠頭の整備により,国際港湾としての機能強化が図られ,物流が促進される。
(イ)我が国船舶を含め,コンテナ荷役の安全性の向上と効率化(基準値(2013年):15TEU(20フィートコンテナ換算)/時から目標値(2019年)20TEU/時)が図られ,輸送コストの低減が期待される。
(ウ)コンテナ船の係留時間が短縮されることで,ソロモン諸島国内に流通する輸入物資の価格に占める輸送コストの低減が図られ,物価抑制への波及効果が期待される。

(2)ソロモンは国際的な場において,我が国の立場や国際機関の選挙での立候補を一貫して支持するなど,我が国にとって重要なパートナーである。また,我が国は,2012年5月の第6回太平洋・島サミットにおいて,「自然災害への対応」,「環境・気候変動」,「持続可能な開発と人間の安全保障」,「人的交流」,「海洋問題」を中心に支援を実施していくことを表明するとともに,我が国の対ソロモン国別援助方針で「社会・経済基盤の強化を通じた持続的経済成長の達成と国民の生活水準の向上のため,生活基盤・経済活動に必須な運輸・交通・電力・エネルギー,水供給などの,基幹経済・社会インフラの整備・維持管理への支援」を重点分野の一つとしていることから,本件は我が国の方針に合致した支援として,同国との二国間関係の維持・発展に寄与することが期待される。

3.事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)ソロモン政府からの要請書

(2)JICAの事業化調査報告書(JICAを通じて入手可能)

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