評価年月日:平成26年12月3日
評価責任者:国別開発協力第一課長 宮下 匡之
パプアニューギニア
ニューブリテン国道橋梁架け替え計画
本計画は,パプアニューギニア国ニューブリテン島の幹線道路であるニューブリテン国道において,アウム橋とカピウラ橋の掛け替えを行い,橋梁の性能及び交通の安全性の向上を図り,ひいては地方住民の市場へのアクセス確保と物流の促進と円滑化を目的とするものである。供与限度額は,31億6,000万円であり,既存橋2橋の撤去(アウム橋及びカピウラ橋),新橋2橋の建設(アウム橋:2車線,橋長76m,カピウラ橋:2車線,橋長137m)及び取付道路工(530m及び580m)の整備を行う。
以下の事項がパプアニューギニア政府により実施される必要がある。
(1)維持管理・運行のための予算及び人員の確保
(2)諸事務手続,免税措置の実施及び各種手数料の負担
(3)本計画に必要な土地のリース契約の解除,施工ヤードとして必要な用地の借り上げ
(4)環境影響評価の実施
(1)パプアニューギニアは,日本の約1.25倍の国土面積を有し,人口732万人を擁する大洋州の大国。一方,国内の道路整備状況(総延長:約30,000km)は,未開通区間が多く,主要都市間を結ぶ道路が分断状態にあり,迂回路や代替路も少ないなど未発達な状態。そのため,雨季の豪雨等に起因する地滑りや斜面崩壊,河川の氾濫等に深刻な影響を与えている。
(2)ニューブリテン島の幹線道路であるニューブリテン国道は,西ニューブリテン州の主要都市キンベと東ニューブリテン州の主要都市のラバウルをつなぐ予定であり,現在,西ニューブリテン州ではキンベからウラモナまでの区間が舗装整備されている。一方,その国道上にあるアウム橋とカピラウ橋は,車両衝突などによる部材の破損や,設計耐荷重が現状では十分でなくなってきていること等により,アウム橋は通行止め(現在,丸太で組まれた脆弱な仮設橋を利用),カピラウ橋は通行車両の重量を制限している状況である。そのため,幹線道路であるニューブリテン国道の物流を妨げているほか,交通安全の観点から大きな懸案となっている。
(3)かかる状況から,ニューブリテン島の幹線道路であるニューブリテン国道において,既存橋梁の主要部材破損,老朽化や疲労損傷のため落橋の危険性があるアウム橋及びカピウラ橋の架け替え整備が早急に必要となっている。
(4)我が国は,2012年5月の第6回太平洋・島サミットにおいて,「自然災害への対応」,「環境・気候変動」,「持続可能な開発と人間の安全保障」,「人的交流」,「海洋問題」を中心に支援を行うことを表明。我が国の対パプアニューギニア国別援助方針では,基幹社会・経済インフラ整備・維持管理への支援である「経済成長期版の強化」を重点分野の一つとしていることから,本件は我が国の方針に合致した支援となっている。
(1)安全走行の確保:
車両衝突の危険性を考慮し,急勾配,急カーブとならない安全走行が可能な道路線形の確保を目指すとともに,橋梁本体に車両が衝突しないよう下路形式の橋梁(通路部分が橋桁の下部にある橋梁)を避け,上路橋(通路部分が橋桁の上部にある橋梁)の採用を優先する(なお,対象既存橋梁は橋梁規模や地形条件から河川内に橋脚がない下路橋形式で建設されているが,現在の技術的水準では,河川内に橋脚を構築する経済的な上路橋の採用が可能。
(2)他ドナー事業との整合性の確保:
アジア開発銀行(ADB)資金で実施されている,「地方アクセス改善のための橋梁架替プロジェクト」では,ニューブリテン国道上の12橋の架け替えを実施する計画(施工業者選定中)。また,ADB資金で実施された「主要橋梁調査」では,ニューブリテン国道に係る8橋の掛け替えを計画。これらのプロジェクトでは,(1)交互通行を強いられる1車線橋梁の撤廃,(2)現状耐荷力の向上(T33→T44)が主要な課題。本計画においてもこれら事業との整合性を確保する。
(1)2014年(基準年)から2020年(目標年:事業完成後3年後)の間で,本件実施により,以下のような成果が期待される。
(ア)橋梁耐荷力(t)がアウム橋及びカピウラ橋で44tから88tに改善。
(イ)平均走行速度(km/h)がアウム橋では11km/hから60km/h,カピウラ橋では18.4km/hから60km/hに向上。
(ウ)アウム橋及びカピウラ橋を通過する年平均日交通量(台/日)は493台/日から772台/日に増加。
(2)橋梁での安全で円滑な通行が可能となり,物流の促進,地域住民の市場アクセスの向上,災害に対する交通手段の強じん性の向上が確保される。
(3)パプアニューギニアは国際的な場において,我が国の立場や国際機関の選挙での立候補を一貫して支持するなど,我が国にとって重要なパートナーであり,本件は同国との二国間関係の維持・発展に寄与することが期待される。
(1)プアニューギニア政府からの要請書
(2)JICAの事業化調査報告書(JICAを通じて入手可能)