評価年月日:平成27年1月6日
評価責任者:国別開発協力第1課長 宮下 匡之
フィリピン共和国
ミンダナオの紛争影響地域におけるコミュニティ開発計画
ミンダナオ紛争影響地域において農村から市場等へのアクセス道路及び橋梁の整備を行うことにより, 農業開発の促進を通じた対象地域住民の生活改善や雇用・生計向上を図り,もって開発による平和の定着及び貧困からの脱却の実現に寄与することを目的とする。供与限度額は11.17億円。
以下の事項がフィリピン政府により実施される必要がある。
(1)対象地域住民のオーナーシップを醸成し,適切な維持管理体制を確保する。
(2)道路の改修に必要な用地取得や建設許可への対応が入札手続き前に遅滞なくなされること。
(3)対象サイトの治安状況が極端に悪化しないこと。
(4)2015年の暫定統治機構の設立に向けて協力機関であるバンサモロ開発庁(BDA)の組織改編が見込まれることから,組織機能が一時低下する可能性もあり,実施体制については柔軟に対応する必要がある。
(1)フィリピンは,東南アジア諸国の中で地理的に日本に最も近く,公用語は英語(及びフィリピノ語)であり,若年層に豊富な労働人口を有していることから,従来より日本と緊密な経済関係を有している。
(2)その中にあって,開発ポテンシャルがありながら長年手が付けられなかったのがミンダナオ島であり,その原因は長年にわたるミンダナオ和平の問題である。紛争影響地域と呼ばれるミンダナオ島の南西部では,40年以上に及ぶ紛争の影響もあり,基礎的社会サービスやインフラの不足などの課題を抱え,フィリピン国内でも貧困率が最も高い地域の一つとなっている。
(3)かかる観点から,我が国は,和平プロセスそのものへの関与のほか,開発支援により,和平プロセスの進展を支援してきたものであり,本件は,2014年3月のバンサモロ包括和平合意の署名を受けての,平和の定着に向けた取組の一環である。
(1)対象地域の選定:
対象地域の選定にあたっては,アクセス道路及び橋梁の整備・改修により想定される経済効果,地域的バランス,貧困度等を基準に選定した。
(2)他ドナー事業との整合性の確保:
世銀は我が国との協調融資案件である「ムスリム・ミンダナオ自治地域平和・開発社会基金事業」(円借款・2003年度)を通じて,同地域政府を実施機関として学校,保健所,給水施設等の小規模なコミュニティ・インフラの整備や,高等学校や市庁舎等の地域の拠点整備に取り組んでいる。また,世銀は,「ミンダナオ信託基金」を通じ,BDAをカウンターパートとし,紛争影響地域に特化する形で同様の小規模インフラ整備に取り組んでいる。本計画においてもこれら事業との整合性を確保する。
基準年(2014年)から目標年(事業完成3年後)の間で,本件実施により,以下のような成果が期待される。
(1)農村から市場等へのアクセス道路・橋梁の整備を行うことにより,市場までの農産物の平均運搬時間が半減する(ブンバラン:60→20分,アラマダ:30→18分,ダトゥ・パグラス:60→30分)。
(2)その結果,市場への出荷を指向する農業地域の開発が促進され,地域住民の生計が向上する。
(3)学校,病院へのアクセスが改善することにより,地域住民の生活が改善する。
(1)フィリピン政府からの要請書
(2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)