広報・資料 報告書・資料

政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成26年10月9日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓

1. 案件名

(1)供与国名

パキスタン・イスラム共和国

(2)案件名

グジュランワラ下水・排水能力改善計画

(3)目的・事業内容

本計画は,パンジャブ州グジュランワラ市において,下水・排水管維持管理用の機材を更新することにより,グジュランワラ市内の下水・排水機能の強化を図り,もって市内の冠水被害の軽減に寄与するものである。想定される事業規模は10億3,100万円である。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

考慮すべき留意点としては,ポンプを設置する排水ポンプ場の建屋の建設・補修,土木工事及び電気工事等のパキスタン側負担事項が適切に実施されることが挙げられる。

2. 無償資金協力の必要性

(1)必要性

ア パンジャブ州は,パキスタンの国土の約4分の1を占め,人口の55%に当たる約9,700万人(2011年推計)が暮らす同国最大の州であり,経済活動の要でもある。近年,州内の主要5都市(ラホール,ファイサラバード,ムルタン,ラワルピンディ及びグジュランワラ)では急速な人口増加に伴い,下水・排水システムを含めた社会経済インフラの強化が課題となっている。

イ グジュランワラ市は,同州第4の都市(約170万人:2010年推計)であり,ラホール,ファイサラバードに次ぐ産業都市として,また,州内の農作物の流通拠点として重要な位置付けにある。一方で,人口増加を背景に,下水排水システムにおける設備の経年劣化や汚泥等の堆積による能力低下が問題となっている。下水排水能力の低下により,冠水被害が頻発するほか,大雨の際には窪地や低平地において長時間の湛水が発生しており,市民の住生活・衛生環境にも悪影響を与えている。

ウ このような状況から,パキスタン政府は,清掃・運搬機材及びポンプ場機材の更新並びに清掃管理体制の向上のため,我が国に対して無償資金協力を通じた支援を要請してきたものである。

(2)効率性

ア 機材の仕様を決定するにあたって,実施機関であるグジュランワラ上下水道公社(WASA)の能力,労働力,管理体制等に配慮し,WASA自身が独力で維持管理できる機材を選定した。また,供与機材の仕様は,既存のWASA所有機材と操作方法および維持管理の上で大差がなく,現地関係者が受け入れ易いものであることを条件とする。

イ 運営方法や清掃技術に関して経験のあるラホールの技術者からグジュランワラの技術者に対する技術移転を図った。また,アフターサービスが可能な代理店を確保することで,スペアパーツの調達の容易性に配慮するとともに,工事に伴う一時的な排水能力低下が雨季に影響されないよう工事期間を設定する。

(3)有効性

本件の実施により,以下のような成果が期待される。

ア 清掃機材等の供与により,下水・排水管の閉塞改善,堆積物浚渫が促進され(排水路の汚泥除去量:基準値 0m3/年(2014年実績値)→目標値 12,000m3/年(2021年:事業完成から3年後)),グジュランワラ市内の下水排水能力が改善する。

イ ポンプ場の排水能力を向上させることにより,慢性的な冠水・湛水被害が軽減される(雨季の市街地冠水時間:基準値 8~48時間(2014年実績値)→目標値 24時間以内(2021年:事業完成から3年後))とともに,近年多発する局地的かつ大規模な豪雨に見られるような気候変動への対応能力向上が期待できる。

ウ 併せて,同市上下水道公社職員約400名の運営面での能力向上を図ることで,支援効果を持続させる。

エ 以上により,同市民約170万人の衛生状況の改善や同国の安定と持続的な発展の促進が期待される。

3. 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)パキスタン政府からの要請書

(2)JICAの協力準備調査報告書(JICAを通じて入手可能)

このページのトップへ戻る
目次へ戻る