評価年月日:平成25年12月4日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓
キルギス共和国
オシュ州,ジャララバード州及びタラス州道路維持管理機材整備計画
オシュ州,ジャララバード州,タラス州及び重要幹線道路であるビシュケク-オシュ道路における道路維持管理のための機材供与。供与限度額は24.91億円。
以下の事項がキルギス政府により実施される必要がある。
本計画により供与される機材やこれにより手当される道路の維持管理に必要な予算措置を行うこと。
(1)内陸国であるキルギスの運輸セクターは,人や物資の動きの約95%を道路交通に依存しており,国内の道路網が国民生活において重要な機能を有している。しかし,キルギスの道路網約34,000キロメートルの大部分は旧ソ連時代に完成したもので,1991年の独立以降の同国の経済低迷により,道路の維持管理が適切に行われてこなかったため老朽化が進行しており,現在も年間約200キロメートルの道路が機能を失いつつあると試算されている。道路状況の悪化は,キルギス国民の生活に必要な物資の輸送や周辺国との交易に支障をきたし,同国の経済成長,経済活性化の阻害要因となっている。このような状況下でキルギス政府は,同国の国家開発戦略の重点分野の1つである「経済成長の質の改善」の中に運輸・道路セクターを掲げ,中でも国際輸送回廊と国内道路網のリハビリを優先項目としている。
(2)同国では所管の運輸通信省が自ら道路補修を行っているが,必要機材が老朽化・不足している地域においては,道路維持管理が困難な状況にある。特に本案件の対象地域であるオシュ州及びジャララバード州は2010年の民族衝突の発生地であること,またタラス州は他の地域に比べてドナー支援が少なく開発が遅れた地域であることから,道路整備による開発の促進が喫緊の課題である。
(3)本案件の対象地域を管轄する4か所の道路維持管理局が保有する既存機材の総数は318台であるが,全体の64.5%は製造後13年以上が経過した機材で,老朽化による不具合や故障等のため稼働率が60%程度に落ち込んでいる。また,同4か所の道路維持管理局の傘下にある27か所の道路維持管理事務所に配置されている道路維持管理機材は,平均4.2台,建機のみでは平均2.3台であり,需要に対して保有台数が圧倒的に不足している。
国土交通省土木工事積算基準の舗装工・土工に示される標準的な機材の種類と仕様(規格)を基に,既存機材の仕様と現地での普及度及び過去の我が国無償資金協力2案件(「ナリン州道路維持管理用機材整備計画」及び「イシククリ州・チュイ州道路維持管理機材整備計画」)で整備された機材が良好な使用状況にあることも考慮し,現地の実態に適した計画内容とする。なお,要請内容に含まれていた橋梁点検車及びトンネル点検車各1台は,点検用足場等での代用が可能であることから本プロジェクトの対象外とすることをキルギス国側と合意した。
本計画の実施により,以下のような成果が期待される。
(1)道路の陥没や亀裂の補修機材の供与により,施工品質が高く適切な補修作業を毎年156,800平方メートル(2012年実績値と比較して約1.3倍),舗装の打換え等を毎年40キロメートル(2012年実績値と比較して約4倍)実施できる。
(2)対象区間の道路状況の改善により,地域間の交通が改善され,住民の生活環境が向上する。
(1)キルギス政府からの要請書
(2)JICAの準備調査報告書(JICAホームページより入手可能),JICAの概略設計概要資料