評価年月日:平成26年10月17日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西永 知史
ヨルダン・ハシェミット王国
バルカ県送配水網改修・拡張計画
バルカ県アインアルバシャ地区及びディルアラ地区において,送配水網を改善することによる水圧の適正化,給水時間の延長,水質の向上,無収水率の低減,消費電力の効率化等を通じて水道サービスの改善を図ることに加え,シリア難民が流入しているバルカ県の増加した上水需要の負荷を緩和する目的。供与限度額は,22.38億円。
ア 本計画は,「国際協力機構環境社会配慮ガイドライン」(2010年4月公布)上,環境への望ましくない影響は最小限であると判断される。
イ 本計画の達成のための外部条件として,ヨルダン国内の政治・治安情勢が大きく悪化しないこと,バルカ県に追加で送水される水量が確保されることが挙げられる(全国の水運用を担当する水灌漑省の計画では4百万m3/年が約束されている)。
ア ヨルダンは,国土が乾燥地・半乾燥地に位置しているのに加え,国民1人当たりの水資源賦存量が約145立方メートル/年という水資源が世界で最も少ない国の1つである。限られた水資源に対して,人口増加等により水需要量が増加しているのに加え,隣国シリアからの大量の難民が流入し,水需給の不均衡の増大や衛生環境の悪化等の水問題が更に深刻化している。
イ 対象2地区は,ヨルダン国内でも貧困度が高く人口が急増しているにもかかわらず,基幹送配水網が過去25年にわたって再整備されていない状況で,老朽化した配水管が原因の高い無収水率,送配水管の摩耗・腐食によって引き起こされる水質悪化,過大なポンプ能力による電力の浪費などの問題があり,本事業の必要性及び妥当性が高い。
ア 過去に実施した技術協力プロジェクトにおいて,ヨルダン水道庁の無収水対策に係わる組織体制整備および能力向上(漏水探査,水道メータ設置,送配水網の管理等)を支援してきており,本計画においても,対象2地区の管轄事務所及びヨルダン水道庁バルカ支所職員に対し,過去の実績を踏まえた技術移転および能力強化を行うことで効率的かつ効果的な送配水管理技術移転を行う。
イ 限られた事業予算の枠内で最も裨益効果の高い事業内容を実施するため,対象2地区における優先度が高い事業を選択するだけでなく,可能な限り裨益人口が大きくなり費用対効果も最大になるようにする等,事業内容の絞り込みに努める。また,過去の無償資金協力の事業評価等で,送配水設備の電力消費量を低減し,運営管理費に占める電力費の減少に寄与したと評価された自然流下方式による効率的な送配水システムを採用する予定。
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
ア 本計画の実施により,ポンプ場の再配置が行われ,電力消費量の低下が期待でき,電力消費量の低下に伴う電力費用の削減やヨルダン水道庁(バルカ支所)の財務状況の改善も期待される(2012年の電力消費量(アインアルバシャ地区が0.458,ディルアラ地区0.688)と比較し,2020年ではそれぞれ0.239,0.611に削減(単位:kWh/m3))。
イ 対象2地区の管轄事務所及びヨルダン水道庁バルカ支所職員の送配水管理に係わる能力が向上し,適切な範囲内での給水圧の管理や流量データの収集・分析等が可能になり,水道サービスが改善される。