評価年月日:平成27年2月4日
評価責任者:国別開発協力第三課長 西永 知史
エチオピア連邦民主共和国
南部諸民族州リフトバレー地域給水計画
本計画は,エチオピア連邦共和国(以下,エチオピア)の首都から約300キロ離れた南部諸民族州10地方小都市((1)Koshe,(2)Kela,(3)Tiya,(4)Adilo,(5)Teferi Kela,(6)Mito,(7)Alem Gebeya,(8)Kibet,(9)Tebela,(10)Dalocha)における給水施設(取水施設,導水施設,配水施設)の新設・改修を行うことで,当該地域における安全な水の供給を図り,地域住民の安全な水へのアクセス向上に寄与することを目的としている。取水施設14か所,発電機室14か所,導水管28,210メートル,ポンプ井1か所,配水池10か所,配水管74,217メートル,公共水栓156か所を含む給水施設を建設する。
加えて,コンサルティングサービス/技術協力(ソフトコンポーネント)を通じて,裨益住民により設立される水管理組織やWoreda(郡)水事務所への給水施設の運営・維持管理に関する能力向上支援を行う。供与限度額は13億2,400万円。
ア 本計画は給水施設建設を主たる内容としており,「JICA環境社会配慮ガイドライン」においてカテゴリーBに分類されている。社会条件調査及び自然状況調査の結果,計画を実施する上で撤去が必要な既存施設は存在しない。
イ 配水池や配水管,公共水栓等の給水施設の建設は,道路沿いや空き地等の公用地に計画されるため,住民移転・用地取得について現地調査を行った。管路の布設においては,一部の農地下に敷設する必要があるが,農業への影響を最小限に抑えるため,農閑期に工事実施を計画している。 一部の農地については,用地取得が必要となる可能性もあるが,州の財源による補償金または代替地の保証が確認されているため,用地取得による住民移転が生じた場合でも負の環境影響はきわめて低いといえる。
ア エチオピアにおける村落給水状況は,サブサハラアフリカの中でも依然として厳しい状況に置かれている。人口の80%が居住する村落部では,住民は生活用水の確保に多大な時間と労力を費やしており,これが村落部における貧困を悪化させる一因となっている。
イ また,本計画対象地域を含む南部諸民族州では,地下水資源の存在は確認されているが有効活用されていないことから,給水率は58.7%(Universal Access Program 2:UAP2,2010年)と全国平均68.5%(同,2010年)と比べても低く,干ばつの影響を受けやすい状況に置かれている。
ウ 特に同州の中でも人口増加が目立つ地方小都市では施設の老朽化に加えて施設建設のための資金が不足しているため,給水施設整備への支援が必要となっている。
本計画では,先方政府の要請及び現地調査に基づき,現地のニーズに合った計画対象都市の選定,施設構造とした。同時に,技術協力(ソフト・コンポーネント)にて裨益住民により設立される水管理組織やWoreda(郡)水事務所への給水施設の運営・維持管理に関する能力向上支援を行うため,案件の効率的な実施が図られている。
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
ア 10地方小都市において給水施設を新設及び改修することで,当該地域の給水量が約3.8倍に増加し,給水人口の66,035人(2013年)から91,688人(2020年計画完成3年後)への増加が見込める。
イ 給水量の増加により,水汲み労働の軽減が見込める。エチオピアでは水汲み労働が女性及び子どもの主な労働とされているため,水汲み労働の減少は女性の社会進出及び児童の就学機会の増加を促進できる。
ウ 給水施設の新設及び改修により安全な水へのアクセスが向上することにより,水因性疾患の減少が見込める。
(1)エチオピア連邦民主共和国政府からの要請書
(2)南部諸民族州リフトバレー地域給水計画準備調査
現地調査結果概要報告書(JICAより入手)