評価年月日:平成26年7月18日
評価責任者:国別開発協力第二課長 花尻 卓
ガイアナ共和国,グレナダ,ジャマイカ,スリナム共和国,セントビンセント及びグレナディーン諸島,セントルシア,ドミニカ国,ベリーズ
気候変動に対応するための日・カリブ・パートナーシップ計画(UNDP連携)
本計画は,気候変動や多発する自然災害の影響を強く受け,「小島嶼国特有の脆弱性」を有するカリブ諸国に対して,気候変動政策の策定支援,緩和・適応技術移転のためのパイロット・プロジェクトの実施,情報共有ネットワークの構築を通じて,カリブ地域における気候変動対策・自然災害対応能力の強化を図るもの。供与額は15億2,600万円。
インフラ整備等の一部コンポーネントの実施にあたっては,ハリケーン等による事業遅延の可能性にも留意する必要がある。
ア. 小島嶼国であるカリブ諸国は,規模の経済が働かず,観光等特定の産業への依存度が高く,生活必需品の多くを輸入せざるを得ないため,コスト高や慢性的な財政赤字の問題を抱えている。また,気候変動の影響を強く受け,ハリケーンや洪水等の自然災害発生率も極めて高い。更に,エネルギーの多くを化石燃料の輸入により賄っているため,外部経済の影響を受けやすい他,エネルギー効率の悪さから,国民一人当たりの温室効果ガスの排出量も高水準である。加えて,地球温暖化による海面上昇がもたらす沿岸浸食,国土の減少,洪水リスクの上昇,塩害による水不足等の問題への対応は,人口の約9割が沿岸部に暮らすカリコム諸国において急務である。このため,カリコム諸国政府は,2015年以降の長期開発戦略において,気候変動分野のリスク管理と対応能力強化を優先課題に据えている。
イ. カリコム諸国の大半は,2010年のCOP16で策定の必要性が合意された「途上国における適切な緩和行動(NAMA)」を未策定である。また,各国が気候変動に適応するための施策である「国別適応計画(NAPs)」の策定も進んでいない。プロセス遅延の要因としては,専門的な情報不足,技術面・政策面での能力不足,政策立案・情報共有のための資金不足に加え,プロジェクト規模が小さく民間投資が期待できないことが挙げられる。
ウ. こうした状況を受け,国連開発計画(UNDP)は,小島嶼国であるカリコム諸国のうち,特に支援ニーズが高い8カ国を緩和・適応の両面から支援し,地域レベルの情報共有と連携を推進することで,カリコム諸国の気候変動・自然災害対応能力強化を推進しようと,我が国に支援を要請するに至った。
エ. 2014年は「日・カリブ交流年」であり,この機会に,カリコム諸国共通の優先課題である気候変動対策分野の支援を表明することは,外交的に高いインパクトを与えると期待される。また,本件は,我が国の対カリコム支援の重点分野である「環境・防災」に合致する他,我が国が2013年に打ち出した,攻めの地球温暖化外交戦略「ACE (Actions for Cool Earth)」にも合致する。
UNDPは,世界各地で気候変動対策のための支援を実施してきており,本案件の対象国の大半でも多くの支援実績がある。現場のニーズを理解し,広範囲にわたる事業実施のための広いネットワークを有しているUNDPと連携して案件を実施することで,円滑かつ効率的な広域案件の実施が可能となる。なお,本案件の実施に際しては,対象国のニーズに応える活動が各国で展開されるよう,UNDP関係者との意見交換や現地視察を我が方大使館等を通じて実施し,適切にモニタリングすると共に,対象国で活動するJICA専門家,ボランティア,及び本邦研修を受講した経験のある帰国研修生等とも緊密な連携を図り,より効果的な支援実施につなげる。
本件の実施により,以下のような成果が期待される。
ア. 対象国において,NAMA,NAPs策定に必要な人材が育成され,気候変動適応施策が各国の予算・経済政策に適切に反映される。また,NAMAの策定・実施状況が適切にモニタリング・評価される。
イ. 策定されたNAMA,NAPsに基づき実施されるパイロット・プロジェクトを通じて,緩和面・適応面での各対象国の能力が向上する。
ウ. 気候変動分野の経験・知見がカリコム諸国間及び日・カリコム間で広く共有され,地域全体における気候変動対応能力の向上と啓発につながる。また,気候変動分野における我が国の取組が国際的に広く認知される。
UNDPからの要請書