評価年月日:平成26年12月1日
評価責任者:国別開発協力第二課アフガニスタン支援室長 大久保 武
アフガニスタン・イスラム共和国
小児感染症予防計画(UNICEF連携)
本計画は、アフガニスタンにおける小児感染症の予防と乳幼児死亡率の抑制に貢献することを目的とし,全土に於いて予防接種に必要なワクチン及び機材等を供与し,予防接種の必要性を国民に広く知らしめるとともに,関係者の能力強化を実施するもの。供与限度額は14億4,800万円。
以下の事項がアフガニスタン政府により実施される必要がある。
ア 円滑な事業実施のため,今後アフガニスタンの治安状況が著しく悪化しないこと。
イ 案件実施に際し,アフガニスタン保健省等の積極的な関与を促すとともに,案件完了後もアフガニスタン側で適切な維持管理がなされること。
ア アフガニスタンの乳幼児死亡率は,開発途上国の中でもとりわけ劣悪であり,2012年のUNICEFの調査では,基本指標である5歳未満児の死亡率が99/1,000人,1歳未満児死亡率が71/1,000人となっており,近年,多少の改善は見られるものの,依然として世界で最も子供の死亡率の高い国の1つである。
イ 子供の死亡率が高い原因として,予防接種により罹患を防げる感染症が主に挙げられており,予防接種率を高めることにより,感染症への罹病率を抑え,乳幼児死亡率の低減を図ることが可能となる。これまでも,我が国を始めとする国際社会は,UNICEFやWHO等と協力し,アフガニスタンにおける感染症対策を実施してきているが,2歳児未満の定期予防接種率は51%,1歳児未満では36%にとどまっており,引き続き,国民の意識改革を含めた感染症予防対策が必要な状況にある。
ウ アフガニスタンは,パキスタン,ナイジェリアと共にポリオ常在国3か国のうちの1か国であり,同国ではポリオ感染遮断に向けて最終的かつ重要な局面を迎えている。国際社会からも早期のポリオ撲滅が求められており,同国政府は,UNICEF及びWHOの協力の下,1994年より全土においてポリオワクチンの一斉投与等の対策を実施している。また,2012年5月には,世界ポリオ撲滅イニシアティブ(GPEI)が,緊急行動計画を開始することを発表し,2012年末までにポリオの感染を防ぐために必要な水準まで,ワクチン投与の支援を進めることを目指して支援を実施してきたが,いまだにポリオの撲滅には至っていない。
エ かかる状況を踏まえ,UNICEF及びアフガニスタン政府は,ポリオの早期撲滅及び予防可能な感染症への罹患を防ぐことにより,乳幼児死亡率の低減を実現するため,アフガニスタン全土における定期予防接種(ポリオ,BCG,麻疹等)及びポリオ感染リスクが高い地域における重点的なポリオワクチン投与を実施することとした。また,効果的な接種活動を実施するために,定期的なモニタリング・評価の実施及び適切な接種計画の策定を行うとともに,国民の感染症対策に対する意識改革のための啓発活動を実施することとし,我が国に対し支援を要請してきたものである。
治安リスクが高く,広範囲にわたる支援が困難なアフガニスタンでの効果的な支援を行うためには,現地のネットワーク及び保健分野における十分な実績と知見を有するUNICEFとの連携が効率的である。
本件の実施により、以下のような成果が期待される。
ア ポリオ感染の危険性が高い地域における重点的なポリオワクチンの投与を通じて,アフガニスタンにおけるポリオ発生の抑制に貢献する。
イ 定期予防接種率の向上(麻疹予防接種率の10%向上,BCG予防接種率の5%向上,B型肝炎予防接種率の5%向上,破傷風予防接種率の5%向上)をめざし,予防可能な感染症に対する子供の罹病率を下げ,乳幼児死亡率の抑制に貢献する。
ウ 感染症予防の重要性にかかる啓発活動を実施し,アフガニスタン国民の感染症予防に対する知識を向上させ,予防接種率の向上に寄与する。
エ 保健省職員及び予防接種従事者等の能力向上を通じ,より効率的な予防接種及び恒常的な予防接種体制の構築に貢献する。
(1)アフガニスタン政府からの要請書
(2)UNICEFからの要請書