広報・資料 報告書・資料

政策評価法に基づく事前評価書

評価年月日:平成26年10月8日
評価責任者:国別開発協力第二課アフガニスタン支援室長 大久保 武

1. 案件名

(1)供与国名

アフガニスタン・イスラム共和国

(2)案件名

口蹄疫等対策支援計画(FAO連携)

(3)目的・事業内容

本計画は,越境性動物疾病(TADs)の監視,予防及び制御を強化することにより,クチ(遊牧民)及び畜産農家の食料安全保障の向上,動物疫病の脅威に対する自立性の回復と向上を目指す。また,口蹄疫(FMD)及び小反芻獣疫(PPR)対策を効率良く実施する枠組みを構築することにより,疫病による損失を削減し,家畜の生産性を向上させる。これら取組の結果として,国際獣疫事務局(OIE)及びFAOが定める,口蹄疫制御のための段階的制御行程(PCP-FMD)が段階2(現状は段階1)に引き上げられることを目的とする。供与額は19億9,800万円である。

(4)環境社会配慮,外部要因リスクなど留意すべき点

考慮すべき留意点としては以下の事項が挙げられる。

ア 円滑な事業実施のため,今後アフガニスタンの治安状況が著しく悪化しないこと。
イ 案件実施に際し,アフガニスタン側負担事項が適切に実施され,案件完了後もアフガニスタン側で適切な維持管理がなされること。

2. 無償資金協力の必要性

(1)必要性

ア アフガニスタンの基幹産業は畜産業を含む農業であり,GDPにおける農業分野の割合は27%を占め,人口の約8割が農業に従事している。同国には,羊1,800万頭,ヤギ1,000万頭及びラクダ48万頭がおり,多くの世帯にとって収入源であるだけでなく,耕作や交通の重要な手段となっている。また,同国には100~150万人のクチが存在し,同国の畜産業及び農業における重要な構成要素となっている。

イ 畜産業において,越境性動物疫病(TADs)は,経済,貿易及び食料安全保障面で影響を及ぼすとともに,容易に他国に拡散し得ることから,その管理体制が重要である。TADsの内,最も深刻なものが口蹄疫(FMD)及び小反芻獣疫(PPR)であり,これらは家畜の死亡率増加及び授乳率低下を招くものである。アフガニスタンにおいては,約50%及び80%の家畜がFMD及びPPR感染の脅威にさらされている一方で,疾病の実態把握及び監視対応能力は不十分であり,右現状は,畜産業及び農家の生計のみならず,同国経済にも影響を与え得る大きな脅威となっている。

ウ また,アフガニスタンやパキスタンからイランを通じトルコに至る国境を越えた家畜市場の流れや流通の加速化等を背景に,TADsは近隣国にも負の影響を与えていることから,FMD及びPPR対策は同地域全体の問題となっている。

エ かかる背景から,これまでアフガニスタンにおける農業・農村開発に対し,継続的に支援を行ってきた我が国に対し,FAO及びアフガニスタン農業灌漑牧畜省(MAIL)から,我が国に対し本件計画に対する支援要請がなされた。

(2)効率性

ア クチや農業高校に対する広報活動及び研修等に関しては,先行実施する地域の結果を踏まえ,その後の対象地域や実施内容について修正・改善を行うこととしており,計画のより効率的な実施が期待できる。

イ 本計画では,TADs対策にかかる国内支援のみならず,国境を越えた地域レベルでのTADs対策を強化するため,周辺国(パキスタン,タジキスタン)関係機関との会合,ワークショップを開催する。

(3)有効性

本件の実施により,以下のような成果が期待される。

ア 畜産分野に携わるクチがTADsに関する知識,初期対応を学ぶことで,最大84万人のクチが将来的に畜産業による持続可能な営みを行えるようになる。

イ ラジオによる啓蒙放送を通じ,クチや畜産農家など50万人以上のリスナーがTADsに関する知識を学び,自己警戒能力を高められる。

ウ 専門知識を有する民間獣医(VFU)の採用,コミュニティ連絡員との連携及び動物保健畜産情報センターの設置により, TADsの認知とともに国内の家畜市場や感染実態の把握が進む。

エ 予防ワクチン接種により,畜産農家375,000世帯及びクチ50,000世帯がそれぞれFMDとPPRの感染リスクから解放される。

オ MAILや中央獣医診断研究所(CVDRL)への,機材供与等による体制強化及び近隣国との関係強化により,国内及び地域レベルでのTADsに対する監視,診断,発見及び対応能力が向上する。

カ 以上の結果,アフガニスタンの食料安全保障の改善,クチ及び畜産農家の生計向上に寄与する。また,近隣国とも連携したTADs対策の枠組みが構築されることで,地域全体におけるTADsの脅威が軽減される。

3. 事前評価に用いた資料及び有識者等の知見の活用等

(1)アフガニスタン政府からの要請書

このページのトップへ戻る
目次へ戻る